きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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「クモガクレ」 |
Calumia
godeffroyi |
カワアナゴ科 |
2003.2.4(火)
2週間後に控えた品質検討会の準備に追われました。月に一度の会議ですが、月間の成果報告という意味合いもありまして、いわばデモンストレーションです。役員でもある部長への報告で、厳しい指摘も指示も出されます。月で一番緊張する会議ですね。やるべきことをやっておけば問題はないんですけど、それが難しい。まあ、一所懸命やるしかないのです。
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2003.2.20 |
横浜市磯子区 |
春井昌子氏 発行 |
非売品 |
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ことわざから− 天彦五男
昔 ぴょん・ぴょん跳ねていた兎が
鈍亀になった
紅顔の美少年は
厚顔のじじいになった
昔は昔 ピョン・ピョン跳ねたいが
睾丸はちぢこまつミイラ化している
青春から老春へ大事にしてきたつもりが
いつの間にか手からすりぬり霧の中----
五里霧中は若さの象徴だが
せめて栗より甘い十三里
判読不能な熟年の繰り言が舌を出して
あかんべいをしている
兎と亀の物語りの結末をどうつけようか?
玉磨かざれば光なし----
光るのは頭と遠視と乱視の眼鏡ばかり
曇っているのは脳だの神経だの老いの信号
もうすべておしまいの旗を持って
駅にぺったりと坐る若者の横に立つ
盛年重ねて来らず----
せかねば事が間に合わぬ
生臭坊主は橋の上から小便をした夢をみる
夜中に川屋への訪問は三度 四度
法門を叩かずノックするのは生の証し
それにしても寒さが身に凍みる
非常に珍しい詩誌で、出雲の和紙で出来ています。完璧な活版刷り、しかも限定80部。なかなか手に取ることができない詩誌と言えましょう。
紹介した作品は現日本詩人クラブ会長の詩です。斜に構えて、その実、押えるところはちゃんと押えているのがお分かりいただけると思います。私はこの作風を勝手に天彦節≠ニ称していますが、「紅顔」「厚顔」「睾丸」と畳みかけるところ、「それにしても寒さが身に凍みる」という最終行などタマリマセンね。こういう詩を一度で良いから書いてみたいものです。
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2003.1 |
神奈川県伊勢原市 |
丹沢大山詩の会・岡本昌司氏 発行 |
1000円 |
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愛は 古郡陽一
愛は 酔うもの
「カクメイ」と「あい」の二文字が
滲む角壜を 空にした日々
わたしと? どちらが大事なの?
行方の分からぬ出発だった
愛は 耐えるもの
貯金通帳や 思い遺りの
不足を ぶつけあう
目盛を超えそうな揺れは
一度や二度ではなかった
愛は 励ますもの
孤愁(こしゅう)の部屋の鍵は
お互いに そっとして
たまに 辛口の批評
ときに 心温(ぬく)めあって
愛は いたわるもの
老いへの旅路 支えあい
一日遊々 一日修行
そんな仕上げへの準備
始めねばならぬ
(一九九七年十月初作
二○○一年十一月一部改)
結婚前後から現在に至るまでの夫婦愛を描いたものですが、最終連が効いていると思います。特に「一日遊々 一日修行」というフレーズがいいですね。私はまだ第3連の位置だろうと思うのですが、第4連を拝見すると、少し希望が持てそうです。今は「愛は いたわるもの」という実感がないのですけど、そうなればいいなと思います。
でもやはり眼がいくのは第1連です。ずいぶん昔のはずなんですが、「滲む角壜を 空にした日々」を思い出しています。フッと一息吐いて、人生を考えさせてくれる作品でした。
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2002.5.25 |
神奈川県伊勢原市 |
丹沢大山詩の会・中平征夫氏 発行 |
非売品 |
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つぶやき 中平征夫
春も 秋も
季節の音が新畔なので
渓谷にひびくすがたになろう
蝶も 小鳥も
季節のよそおいになごむから
こずえのやわらかい色彩になろう
隆起しつづけて
真清水に磨かれたから
早春の雲の流線にふくらもう
たどたどしい追慕
無明の模索 暗愚の思惟は
新緑の山並みの風に変貌するのがふさわしい
渓谷は慰みの容姿に充ちてくる
天を凝視する 緑色凝灰岩
つぶやきの数億年
ああ、自然はこうやって「つぶやき」を繰り返して形造ってきたのか、と納得させられる作品ですね。最初は誰がつぶやいているのか判りませんでしたが、最終行の「つぶやきの数億年」ですべてが解明された思いです。それから最初の連に戻って、そういう頭で読んでみる…なかなか計算された、読ませる作品だと思います。喩も「すがたになろう」「色彩になろう」「流線にふくらもう」と、洗練されていると感じました。
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2002.9.20 |
神奈川県伊勢原市 |
丹沢大山詩の会・中平征夫氏 発行 |
非売品 |
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殻 −反抗期の息子へ− 小林教子
きのうまで君のからだを包んでいた
君を守ってくれていた安心の殻
君はもう脱いでしまいたいんだね
今よりもひと回り大きく
精巧なからだを手に入れるため
脱皮を繰り返してゆくうち
君はなりたいものになれるだろう
私は君の脱ぎ捨てた殻を拾い
引き出しの奥にしまおう
君のレプリカであるその殻を
時折取り出してはいとおしむため
二〇〇二、七、六
これは良く判ると同時に、たいしたお母さんだなと思います。冷静であることも判りますけど、なにより愛情に満ちています。「君のレプリカであるその殻を/時折取り出してはいとおしむため」というフレーズは本当の愛情がなければ出てこないと思います。うちの娘は高校生になってようやく反抗期らしくなってきましたが、こんなに冷静ではいられません。いつもむかっ腹を立てています。人間のスケールの違いも考えさせられました。
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2002.11.18 |
神奈川県伊勢原市 |
丹沢大山詩の会・中平征夫氏 発行 |
非売品 |
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殿 松本せつ
「月謝 お願いします」
正座して頭を下げて
分厚い辞書や六法全書 硯 筆 印鑑 墨汁
紙縒(こより) カーボン紙 ガラスペン 複写式書類
等に囲まれて
和服の袖から覗く青白い手
怪しげな動きの中に書類は仕上がる
一日家の中で何かを書いて
時折 矢立てを持って法務局へ 謎めいた父
高校になって知った
[司法書士]と言う職業
メガネの奥から突き刺さる眼差し
言棄一つに注意され [厳格][重圧]
とても近づき難き人
[殿] 心の底でそう呼んだ
あの日から半世紀
融通無碍の世界を求めて--- 今。
この作品は「父」の人間像がうまく描かれていると思います。もちろんお会いしたことはありませんが、「殿」というあだ名もぴったりと合っていると納得してしまいました。そして娘さんから父親への愛情も「融通無碍の世界を求めて---
今。」という最終行で感じます。コチコチの「厳格」「重圧」で「とても近づき難き人」だったけど、職業柄そうなってしまったのであって、本当は「融通無碍の世界を求めて」いた人だったんだ、という気持が読み取れます。今はそんな男らしい男もいなくなってしまったなぁ、とも考えしまいました。
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