きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

  kumogakure  
 
 
「クモガクレ」
Calumia godeffroyi
カワアナゴ科

2003.2.7()

 日本詩人クラブの理事会が18時から予定されており、16時に会社をサボれば間に合うなと思っていました。15時から会議があって、1時間ほど出席したら、こっそり帰ろうと考えていましたけど、議論が白熱してしまい、結局抜け出せませんでした。終ったのが18時。これから出掛けたのでは、ちょうど理事会の終了時間になってしまいます。泣く泣く理事長に電話を入れて、欠席とさせてもらいました。先月も欠席していますから、今日こそはと思っていたんですけどね。

 つくづく、一度会社に行ってしまうと出られないものだと感じました。これからは朝から休暇をとって会社には行かないようにしないと駄目だなと思います。まあ、休暇もなかなかとれない状態ですから、そんな名目でもつけて強制的にとるようにしましょう。休暇消化で理事会を利用するというのも悪くないかもしれません。
 そんなわけで、理事の皆様、私を理事に推してくれた会員の皆様、申し訳ありませんでした。



  水崎野里子氏編訳現代アメリカ アジア系詩集
  gendai america asia kei shisyu    
 
 
 
新・世界現代詩文庫2
2003.1.26
東京都新宿区
土曜美術社出版販売刊
1400円+税
 

    おふくろ    ジム・ウオン・チュ

   彼女はいつも沈黙を着ていた
   おやじの前で

   おかしなこと

   僕たちのうち誰も
   兄弟や姉妹たちは
   目を覚まさなかった
   おやじとおふくろが愛し合っている時
   そいつはかなり頻繁だったに違いない
   なぜなら僕達子供はたくさんいたから
   僕達知っているさ 何人かは望まずに生まれてしまったと

   そいつは
   避妊薬とコンドームが現れる前の出来事
   少なくとも 安いのが

   僕たちは貧しかった

   おかしなこと

   おやじはおふくろに金を与えたことはない
   食料を買うために
   自分で買えと言った
   でも彼女は僕たちに料理を作った
   僕にはいまだ理解出来ない

   朝
   彼女は起きた 僕たちが起きる前に
   僕たちの朝食のおかゆを火にかけ
   僕たちをみんな学校に送りだしてしまうと
   彼女は洗濯を始めた
   手で
   冷たい石鹸水
   木の洗濯板
   手で絞る
   竹の棒に吊された頭のない形
   串刺しにされたシャツの袖は旗のよう
   はりつけの列
   乾いた風の中で焼かれる

   昼は長い
   たくさんのさよならやこんにちは
   そして夜が来る
   僕たちは眠る
   一つの部屋の中

   その間 彼女は繕う 明日のシャツの最後を
   そして静かに待つ

   おやじを

 アジア系アメリカ人の詩を集めた翻訳詩集です。日系、中国系、フィリピン系、ベトナム系、インド系など30名ほどの作品が収められていました。紹介した詩人はホンコン生れで、現在カナダで郵便配達夫をしているとのこと。アジア系カナダ人作家同盟の創立メンバーでもあると「詩人紹介」にはありました。

 アジア系に共通しているのかもしれませんが「おふくろ」の存在感がありますね。私のおふくろやおばあさんの世代は同じようなものだったろうなと思います。たくさんの「おかしなこと」が詩としての魅力を与えていますし、最終の「
そして静かに待つ//おやじを」というフレーズにはアジア系女性の真髄が現れていると思いました。
 この詩人は他に「百姓たち」「四番目の叔父」「古い中国の共同墓地にて 一九七七年七月」が収録されていますが、いずれも佳作です。素朴ながら本質を見据えた作品で、お薦めです。



  詩誌『スポリア』12号
  suporia 12    
 
 
 
 
2003.1.30
愛知県知多郡武豊町
スポリアの会・坂口優子氏 発行
非売品
 

   I REMEMBER, I REMEMBER
                    by Thoma Hood

     I remember, I remember,
      The house where I was born,
     The little window where the sun
      Came peeping in at morn;
     He never came a wink too soon,
      Nor brought too long a day,
     But now I often wish the night
      Had borne my breath away,

     I remember, I remember,
      The roses red and white;
     The violet, and the lily-cups
      Those flowers made of light!
     The lilacs where the robin built,
      And where my brother set
     The laburnum on his birthday... ...
      The tree is living yet!


    
弟に     トマス・フッド作
          おおはし いさむ訳

   おもいだす おもいだす
    ぼくの生まれた家や?
   朝 お日さまがのぞきこんだ
    小さな窓を 夜の明けるのが
   瞬く間も遅すぎたことはない
    訪れる昼が長すぎたことも
   が ぼくは今 ときとして願う
    夜がぼくの息を引き取ることを

   おもいだす おもいだす
    赤いバラや 白いバラ
   スミレや スズラン
    光のおりなす花々を!
   コマドリの巣ごもるライラック
    誕生日に弟が
   キングサリを植えたところを……
    その木は まだ 生きている!

 巻頭作品です。読者にも読者なりの対訳が出来そうですので紹介してみました。おおはし氏の訳を参考に私もやってみましたが、やはり「弟に」というタイトルが見事ですね。ここまで意訳するのはちょっと無理でした。「その木は まだ 生きている!」とありますから「弟」は亡くなっているのでしょうか。そこまで読み取らないとこのタイトルは出てこないと思います。



  鬼の会会報『鬼』368号
  oni_368    
 
 
 
 
2003.3.1
奈良県奈良市
鬼仙洞盧山・中村光行氏 発行
年会費8000円
 

    かがしは神さま

    黄色く色づいた田に、かがしが立つのは懐
   かしい農村風景。このかがしがれっきとした
   神とは、知らぬ人が多い。かがしの語源は嗅
   がせ、悪臭を放つものを焼き、鳥獣を追い払
   ったに由来するが、田の神である。古事記に
   久延毘古とか、曽富謄と記され、どちらもか
   がし神。久延毘古の久延は崩ゆ(くゆ)、毘
   古は男神。曽富謄はそぼつ。雨に濡れそぼっ
   で、歩かないが天下のことを知る神である。

 連載エッセイ「鬼のしきたり
(57)」の一文です。私も「かがし」が「田の神」とは知りませんでした。また、「かがし」ではなくかかし≠ネのではないかと思いましたけど、「嗅がせ」が語源だとすると「かがし」が正しいということになりますね。そうすると案山子≠ヘどこから出てきたのだろうと疑問が深まりました。いずれにしろ語源から日本語を考えていくと、意外な発見があるものだと感心しました。




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