きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

  kumogakure  
 
 
「クモガクレ」
Calumia godeffroyi
カワアナゴ科

2003.2.17()

 日本ペンクラブの2月例会が東京會舘であったのですが、行けませんでした。以前ならフレックスで仕事をサボったり休暇をとったりしたのですが、今は無理ですからハナから行けるとも思っていませんでしたがね。都内への出張とうまく重なれば、とも密かに期待していましたけど、それもなし。
 職場異動してちょうど半年。そろそろ時間の捻出も出来るようになりましたから、ペンクラブ例会出席も視野に入れたスケジュールを組みたいものです。



  詩誌『梢』31号
  kozue 31    
 
 
 
 
2003.2.20
東京都渋谷区
宮崎由紀氏 発行
300円
 

    介護保険料払込ずみ    北村愛子

   風がつめたい 木枯らしが吹いて 一層つめたい

   母89歳 埼玉県在住
   身体障害者等級表による2級第1種
   障害名 疾病、大腿骨頸部骨折による体幹機能障告(歩
   行困難)右下肢機能障害
   要介護4
   特別養護老人ホーム三年前に入所申し込み
   40人順番待ち 老人保健施設入所リハビリ中
   わずかな年金から介護保険料が強制徴収されているのに
   保険料払っても入る老人ホームの空きがない

   娘66歳 埼玉県在住
   身体障害者等級表による4級第2種
   障害名 変形性関節症による両膝関節機能障害
   要介護1
   週1回在宅訪問看護家事援助を受ける・リハビリ中

   娘の肩に介護がのしかかる
   母が老人保健施設に入所できてどんなに助かるか

   義母77歳 岡山県在住
   脳卒中による右半身麻痺、歩行困難
   要介護3
   特別養護老人ホーム○○園入所中

   義母は頭がしっかりしているだけ
   体が動かないことがどんなにくやしいことか
   入所して4年目すっかりホームに慣れた

   義父77歳 岡山県在住
   心臓病手術・体幹機能障害による歩行困難
   要介護3
   特別養護老人ホーム申し込み230人順番待ち

   義父が一番大変だ 入所できないで訪問看護のヘルパー
   さんに身体介護や家事援助をしてもらっている

   義父を介護するのは会社員の義弟夫婦
   休んでばっかりいる会社員よ
   リストラにならなければよいがとあんじている

 「三年前に入所申し込み」「40人順番待ち」「230人順番待ち」などの言葉が次々と出てくることに驚いています。私の家族や親戚には、今のところひとりも入所者がいないので実感がありませんでしたけど、まさに「わずかな年金から介護保険料が強制徴収されているのに/保険料払っても入る老人ホームの空きがない」状態なんですね。いずれ我が一族もお世話になるかもしれないというのに、現実を知らされて唖然としています。

 作品の上では、たった1行の第1連がよく効いていると思います。最初は何気なく通り過ぎましたけど、最終連まで読んで再び第1連に眼が行きました。タイトルもテーマをはっきりとさせていて、読者の眼を惹きつけていると思いました。



  詩誌『馴鹿』32号
  tonakai_32    
 
 
 
 
2003.2.15
栃木県宇都宮市
tonakai 我妻 洋氏 発行
500円
 

    蟷螂    和気康之

   契りの間
   ずっと白雲を見つめていた

   とおいとおい記億の空
   いつまでも沈まない夕日を追いかけて
   大草原を渡り
   巡礼のように
   崑崙山脈を越え
   羽はもっと逞しく
   空は果てしなく大きなものだった

   いつからだろうか
   地に降りたのは………

   草いきれに溺れる体内を
   かなしみの電流がはしり
   瞬間
   伴侶の貌を噛み砕いている

   草の穂をゆらす
   幽かな風に
   首をかしげ
   首をかしげ
   自分がなにをしているのか
   わからない
      ☆   ☆
   霜の夜を
   軒灯の仄かなぬくもりに
   身をよせる乞食僧
   片方の羽はおれたまま
   枯色が深まっている

   にぎわっていた虫の闇は
   冷たい星の雫におおわれて
   昨日はとおく
   あわあわと泛く銀河の雲

   斧をたたみ
   立ちあがり
   乾いたいのちをふりしぼり
   月に祈る
   あわれ瑞々しい眼よ
   おのれの朽ちていくのを
   終わりまで見せつけられるとは………

   いんいんと
   いんいんと
   くらがりに染み入る読経
   腹部にうごめく雄たちの
   青いたましいが
   やすやすとは死なせてくれない

 牝が牡を食べるというカマキリの生態を書いていますが、描かれている世界は大きいですね。昆虫のことはよく分からないのですけど、カマキリはもともと「
崑崙山脈を越え」るほど「羽はもっと逞し」いものだったと受取れます。それが「地に降り」、いつか「伴侶の貌を噛み砕」くようになったと採ってよいと思います。だから「あわあわと泛く銀河の雲」を見、「月に祈る」のかもしれません。そして「腹部にうごめく雄たちの/青いたましいが/やすやすとは死なせてくれない」のでしょう。

 表面をなぞっただけの読み方ですが、カマキリを通しての宇宙観を感じます。おそらく「
自分がなにをしているのか/わからない」状態も、宇宙というスケールの中では意味があることなのでしょう。そんなことを考えさせる作品だと思いました。




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