きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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「クモガクレ」 |
Calumia
godeffroyi |
カワアナゴ科 |
2003.3.8(土)
日本詩人クラブの3月例会が神楽坂エミールで開催されました。講演は白石かずこ氏の「さまよえる詩人たち・詩の行方」。冒頭に最近亡くなった友人として矢川澄子・吉原幸子・多田智満子の3人の詩人たちの思い出を語ってくれたのが印象的でした。
講演要旨は「詩界通信」15号か『詩界』243号に載せる予定です。会員・会友の皆さんはそちらをご覧になってください。上の写真は講演中の白石かずこ氏です。非常に礼儀正しい人で、何年か前の会ったときと随分印象が変ったように思いました。
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2003.4.1 |
東京都足立区 |
漉林書房・田川紀久雄氏 発行 |
800円 |
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そらのいろ 遠丸
立
あわいろ
淡色の光
空の際から射す光は澄明
冬至明け
見あげる
足が自然まえへ出る
まえへ まえへ
薄暮まぢか
空が軽い
死がおとずれるとき
朦朧とした頭のなかに
あの空とおなじ透明
おなじ明度の光が射すだろう
あの空にひとしい淡色の光
光のなかで死が手を差し延べるだろう
そういえば近親の死者たち
ちかぢかと覗きこんだ
死者たちの表情
あの空にひとしい明るさであった
「そらのいろ」という総タイトルのもとに「冬至明け」「淡色の光」という2編の詩が収録されています。そのうちの1編を紹介してみました。第1連の「足が自然まえへ出る/まえへ まえへ」「空が軽い」という表現もおもしろいと思いましたが、第2連の「死者たちの表情/あの空にひとしい明るさであった」というフレーズはすごいと思いました。死は暗いものではない、「朦朧とした頭のなかに/あの空とおなじ透明/おなじ明度の光が射すだろう」という感覚は凡人には思いもしなかったことです。そういうふうに死をとらえると、何か安心感のようなものを感じますね。死にさえ希望が持てる作品だと思いました。
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2003.1.25 |
東京都北区 |
青焔の会・島 木綿子氏 発行 |
600円 |
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朝の秘密 山口眞理子
あれはなんだったのでしょうか?
夜明けの朝は 次からつぎへと
花がはながはなびらが開いていく
次からつぎへと
<植物の性器という滲(にじ)んだいろのなまめかしい……>
すべての緑 すべての緑色が全開する夏!
動かないはずの樹木の枝を隠す葉が葉たちが
呼応しあって呼吸をしている
あれが言葉ならなんと冗舌なしぐさ
あれが思想ならなんと無口な文体
おこなうこととしることに乖離のない
ひたすらの水を求めての光合成
だから老いた木が はなをつける木が
実のなる季節に裸木となってしまうのは
この種の成熟と死の ゆっくりたどる
時間への愛撫
耐えてしなう 風への挨拶
あっ 六時になった!
(南と北が一同に会した)
正直なところ「あれ」とは何なのか、まだよく分かりません。「言葉」「思想」とキーが与えられ、「朝の秘密」とタイトルにありますし、最終連では時計の針を思い描くことができます。今はその辺のところを感じておけば良いのかな、という思いです。詩とは、それでも良いのだとも思っています。作者の意図は意図として、読者は自由に作品を楽しむ、その典型のような作品だと思います。
「夜明けの朝」「花がはながはなびらが」「すべての緑 すべての緑色が」「葉が葉たちが」と重ねてくる、畳掛けてくる言葉もこの作品の魅力のひとつだろうと思います。「この種の成熟と死の ゆっくりたどる/時間への愛撫」という哲学的な命題とともに、この作品を深くしている効果があると思いました。
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2003.4.16 |
埼玉県さいたま市 |
燦詩文会・二瓶 徹氏 発行 |
非売品 |
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単身赴任 堀井裕子
「どうしたんだろうと思った」
ネットにつないでいる間に
鉛色の想いは
私の頭上をかすめ
ぽっかり開いた
エアポケットの闇の中
ルルルルルと
鳴り響いていたらしい
「なんだそうだったのか」
受話器の向こうで
重しがぐるんとはずれる
声のトーンが明るくなった
私はぬるま湯で
ちゃぷちゃぷしているのに
あなたは冷や水で
溺れそうだったのか
遠隔操作のすべはなく
それぞれに
同じ卵をあたためる
オス鳥は
羽をのばすゆとりもないようだ
たたんだ羽を
コブシの芽がくすぐり
とまり木の
梅が咲くころ
帰ってくる
ひび一つない卵を抱いて
私の家も未だにダイアルアップ・ネットワークですから、「ルルルルルと/鳴り響いていたらしい」状態です。外から電話をかけてくる人は話し中が続いて「どうしたんだろうと思」うそうです。それが「単身赴任」をしている「あなた」であれば、余計にそう思うでしょうね。「同じ卵をあたためる」者同士の感覚が素直に出ている作品だと思いました。
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