きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

  kumogakure  
 
 
「クモガクレ」
Calumia godeffroyi
カワアナゴ科

2003.4.4()

 最後の日本詩人クラブ理事会に出席してきました。職場異動をした昨年8月からは、一度会社に出るといつ帰れるか判らない状態が続きました。従って、それまでのように15時頃から仕事をサボったり、午後休暇を取って出席するということが難しくなっていました。そこで丸一日の休暇を取って18時からの理事会に備えるということを繰返してきましたけど、そうそう休暇が取れるわけもなく、何度か欠席して悔しい思いをしていました。理事会が終った今だから告白しておきます。仕事を与えてくれた会員の皆さん、申し訳ありませんでした。

 でも、今日はしっかりと休暇を取りましたよ。実は異動者の歓迎会があったんですけど、それは断りました。最後ですからね。
 理事会では今までの総括と新理事会への引継ぎ事項を話合いました。日本詩人クラブの理事は全員が退任ではなく、半数が残る仕組になっています。ですから新理事会への引継ぎとは云っても、残任の理事に任せられますからその点は楽ですね。大きな問題点もなく終了しました。

 さあ、これで4年に渡った理事生活とも5月10日の総会をもって解任されます。あとは日本ペンクラブの電子メディア委員会副委員長という仕事が残りますが、こちらはおそらく続投を要求されると予想しています。ペンだけなら何とかやっていけると思います。HPの充実も図れると考えています。



  隔月刊詩誌『叢生』125号
  sosei 125    
 
 
 
 
2003.4.1
大阪府豊中市
叢生詩社・島田陽子氏 発行
400円
 

    父親    佐山 啓

   自慢の子供らは
   頭がよくて
   かっこよくて
   ひとに好かれて
   いいところがいつぱいあるのに
   異性に惚れやすかったり
   ちょっとエッチだったりすると
   親がそうだから似たのではないかと
   申し訳なく思っている

   職場の同僚と
   居酒屋やカラオケや
   旅行にいったりすると
   ほかのひとはもっとエッチで
   わたしなどとても純情そのもので
   同僚達はやはり
   子供が親に似て……と
   内心申し訳なく思っているのだろうか?

   世の親は誰でも
   子供が悪いことをすると
   責任を感じてすまなく思うに違いなくて
   凡庸な息子の極悪非道な行状が申し訳ないと
   日々涙ながらにわびているのは

   父親の方の元大統領に違いない

 佐山さんの作品はいつもおもしろくて期待してしまうのですが、今回もその期待は裏切られませんでした。1連、2連はこんなこと書いていいのかな?と思うぐらいのことをお書きになっているんですが、どこかさわやかで納得して読みました。そして3連、最終連。驚きましたね。結局「父親の方の元大統領に違いない」に総てが結びついていたんですね。思わず◎印を付けてしまいました。

 でも、これってすごい嫌味ですね。「日々涙ながらにわびている」なんてことは絶対にないと思います、あの親子に関しては。そこまで読者に考えさせている作品なのかもしれません。声高にイラク攻撃反対≠叫ぶのも非難しませんけど、この作品の方がインパクトは強いですね。詩人の反戦行動のひとつの見本だと思いました。



  詩誌『錨地』39号
  byouchi_39    
 
 
 
 
2003.3.31
北海道苫小牧市
錨地詩会・入谷寿一氏 発行
500円
 

    飛ぶのか 満天    入谷寿一

   アーウー
   十七年前 多くの観衆が見守る中 チャレンジャーは 発射直後 爆発して
   散乱した
   宇宙から生徒たちに授業するはずの女教師も乗っていた
   アーウー
   絶叫ともつかぬ声を人々の胸に打ち込んで 気圏の灰となった

   多くの夢を煽る大国
   神の名において世界を制覇する力と正義の国
   経済効率原理の資本国
   それに乗っかるマスコミ
   原子爆弾を二発見舞われた日本人も
   USA製宇宙への夢をかきたてる

   満天 NASAの飛行士となって
   青い美しい地球を見るのだ

   満天 君は愛する夫や父母の犠牲の上に
   宇宙飛行士の夢をひたすら追うか
   巨大国の宇宙戦略に乗っかって

   作られた映像にすぐ乗る軽薄な人種よ
   今に自分の生存すら危うくなる

   七千年の年輪を刻む縄文杉鎮座する島の娘よ
   あなたの脚は 神の大地から浮遊し
   宇宙サクセス物語に乗っていく

   アーオー
   憧れのスペースシャトル コロンビアは
   本年二月一日午前九時 着陸十五分前 六万メートル上空で爆発炎上
   インド初の女性宇宙飛行士も乗っていた
   アーオー
   悲鳴も残さず 火の雪となって舞い散る

 あまりTVを観ないので詳しくはないのですが、作品の背景はNHK-TVの連続ドラマだろうと思います。ですから「愛する夫や父母の犠牲の上に」が何を意味するのかはよく判りません。でも「巨大国の宇宙戦略に乗っかって」いることや「作られた映像にすぐ乗る軽薄な人種よ/今に自分の生存すら危うくなる」ことは一般論としてよく理解できます。特に「作られた映像にすぐ乗る軽薄な人種」というのは辛辣ですね。ついついTVを批判的に観ないという癖がついているようで、この言葉にはハッとさせられました。「スペースシャトル」も結局は「宇宙戦略」の一環に過ぎないのですから、そういう観点も忘れるわけにはいきません。TVの観方を改めて考えた作品です。



  隔月刊詩誌ONL66号
  onl 66    
 
 
 
 
2003.3.30
高知県中村市
山本 衞氏 発行
350円
 

    夜雨上がる    山本 衞

   今日が明けて
   雨で澗んだ瞼の太陽が
   死ななかった夜を捨てる と

   台湾坊主のわんぱくどもが
   濡れた緑のパラソルを
   遠く 近く
   尾根に森に
   ひろげる
   かさねる

   
ひわだぶ
   檜皮葺きだった木々の家々は
   大慌てで初春の改築に忙しい

   おれも出掛けてみよう
   うち捨てたままにいた胸の奥に
   芽吹いた青い麦を踏みに

 「雨で澗んだ瞼の太陽が/死ななかった夜を捨てる」というのはおもしろい表現ですね。雨上りの雰囲気はよく出ていると思います。「台湾坊主」という言葉も久しぶりに見ました。南国の低気圧という記憶があったので辞書で確認したところ温帯低気圧≠ニありました。その言葉からの連想が大きいのかもしれませんが、高知県という南国を感じる作品です。「おれも出掛けてみよう」というフレーズにも大らかさを感じます。中村市・四万十川は5年ほど前に一度行っただけですが、家族で遊んだ思い出に浸りながら拝見しました。



  詩誌よこはま野火44号
  yokohama nobi 44    
 
 
 
 
2003.4.1
横浜市保土ケ谷区
よこはま野火の会・森下久枝氏 発行
500円
 

    消した手紙 ---続 学童集団疎開の記録   疋田 澄

   「シラミがたかって困っています。
    むかえに来てください」
   父母に宛てた手紙の終りに
   思いあぐねて書き加えた
   そのあと 消しゴムで軽く消した
   検閲にあって呼び出されないように
   それでも母さんには分るように

   「むかえに来てください」
   あからさまには決して書けない
   男子生徒なら
   先生がビンタを張るところだ

   書いて伝える気持を
   消して伝えようとした
   他にどんな方法があったろう

   受け止める手が見えない
   むずがゆい日が重なり
   さくらが咲き
   山の木々が芽吹いた

 副題にもありますように「学童集団疎開の記録」です。作者は引率の先生として児童と生活をともにしていたようです。その先生が「検閲にあって呼び出されないように」「書いて伝える気持を/消して伝えようとした」のですから、何ともやりきれないものを覚えます。児童も可哀想でしたが、先生もそんなご苦労をしたのかと初めて知りました。私は戦後生れで、こういう事実をまったく知りません。是非、今後も伝えてほしいものです。




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