きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

  kumogakure  
 
 
「クモガクレ」
Calumia godeffroyi
カワアナゴ科

2003.4.19()

 近所の親戚付き合いをしている人の息子さんが結婚して、お披露目の会がありました。結婚式が終って、結婚式に出席してもらうほどではないけど、お披露目しておきたい近所の人たちを招待したという感じの会です。私の住む地域にはそんな風習が残っていて、それも地域の結束を固める一因になっているのではないかと観測しています。

 近くの料理屋で30人ほどが集って、2時間ほどの昼食会ですから気楽なものです。結婚式は堅苦しくて嫌だけど、そんな程度ならいいですね。隣近所には私の日本酒好きは広まっているようで、まったく初めて逢う(と思っている)人も次々とお酌に来てくれて、おいおい、主賓は向うだゾと思いましたけど、悪い気はしませんでした^_^; 嫁さんも美人だったなぁ。もっとも、このトシになると若い女性はみんな美人に見えますけど。

 変な酒は呑まない、ということも知れ渡っているようで、いろいろと銘柄を換えて持ってきてくれたのもうれしかったですね。お陰で帰りの送迎バスの中ではフラフラ。夕方から翌朝まで寝てしまいました。だからHPの更新も遅れています^_^;



  津田てるお氏詩集『街の灯』
  machi no hi    
 
 
 
 
2003.5.3
広島市東区
三宝社刊
1500円+税
 

    戸籍謄本をとる

   開いて まずは
   漢数字に旧宇体の格式にピリッ
   おもむろに はるかなる父母がいた
   ついで いつの日か婚姻をした
   めくって氏名欄に ×印とは ナニ?
   わが息子よ
   たしかに生誕したものはたしかに死亡していた
   あまりに正確な記載の年月日
   これより単純明快に
   事実をのべて震い上がらせる文をみたことがない
   睨んでいて
   やがて ぼんやり

 視点も語り口調もおもしろい詩が多い詩集なのですが、紹介した作品のような感性が著者本来のものなのではないかと思います。「わが息子よ/たしかに生誕したものはたしかに死亡していた」ことを再確認したときの著者の哀しみが伝わってきます。さらに「これより単純明快に/事実をのべて震い上がらせる文をみたことがない」という客観性が詩としての効果を高めていると言えるのではないでしょうか。

 人間としての感覚が最も優れていると思うのが「睨んでいて/やがて ぼんやり」という最終行です。私は視点も語り口調もおもしろい詩が多い≠ニ書きましたが、その裏にあるものをここで観ることができます。この作品があるからこそ、他の「小便小僧」「ヤモリの抗議」なども生きてきているように思います。「
戸籍謄本をとる」に近い作品としては「春一番」もあげられましょう。味わい深い詩集です。



  児童文芸誌『こだま』22号
  kodama 22    
 
 
 
 
2003.3.30
千葉県流山市
東葛文化社・保坂登志子 発行
1000円
 

    ─言葉遊びの詩─

    
かける    山本隆平 小四

   数字をかけるは ぼく得意
   野原をかけるは 弟だ
   電話をかけるは お姉ちゃん
   アイロンかけるは お母さん
   エンジンかけるは お父さん
   スイカに塩かけるは おじいちゃん
   ひざかけかけるは おばあちゃん
   漢字がかける 外国人
   命をかける 消防士
   はしごをかける 大工さん
   太陽かけるは 日食で
   月がかけるは 月食だ
   号令かけるは 日直で
   エプロンかけるは 給食当番
   ひじをかけるは ひじかけで
   こしをかけるは こしかけだ
   服をかける えもんかけ
   ごはんにかけるは ふりかけで
   おちゃわんかけると 悲しいね
   声をかけるこ やさしいね
   お金をかけるは いけないね

 「─言葉遊びの詩─」として「つく」「あげる」という詩とともに載っていた作品です。作者がいずれも「小四」だそうで、驚きです。紹介した作品はその中でも特に巧いなと思いました。最後の「お金をかけるは いけないね」では思わず笑ってしまって、よくそんなことまで知っているなと思ったほどです。
 別の見方をすると、この作品には弟姉・父母などが出てきて
(作品上の)家族関係がよく判りますし、消防士・大工さんと、日本の縮図としてとらえていることも見事だと思います。小四にしてこの才能、将来が楽しみですね。



  島根県詩人連合編『島根年刊詩集』31集
  shimane nenkan shisyu 31    
 
 
 
 
2003.4.10
島根県安来市
島根県詩人連合(洲浜昌三理事長) 発行
1500円
 

    病院へ行こう(二)    川辺 真

   各自が勝手なところに座っているのだから
   誰の次ぎに自分の名前が呼ばれるのか予想も付かない
   あとから来てすぐに入ってしまう予約人の余裕
   初回組はおちおちトイレにも行けない
   入り口に人の気配がするたびに
   クタクタの週刊誌から目を上げてしまう
   書類の束を持って呼び込みを始める女
   名節を呼ばれて返事をする人 しない人 女の目が泳ぐ
   どの人のあとだろうか 私の目も泳ぐ 女と目が合う

   部屋の中の長椅子に順番に座る 目の前にカーテン
   くぐもった会話が洩れてくる 「仕事がそんなに大事ですか」
   慌てて 質問に対する答えを準備する
   心の乱れを隠して
   イタミをどう伝えるか 誇張表現はないか
   弱みをさらけ出す勇気はあるか
   投げやりでなく 前向きな気持ちを持ち続けられるか
   これまでの出来事を思い出しながら‥‥‥
    三年前から高音部が聞こえにくくなった左耳
    同じころから新刊の小説に興昧が薄れた
    階段の上りで時々躓き始めたのが二年前
    時代小説を読み始めた時期と重なる
    遠近両用眼鏡を掛けたのが一年半前
    全国紙を止めて地方紙のみにしたのはその頃
    メモを取らないと不安になりだしたのが一年前か
    引き替えに 少しも日記を書かなくなった
    睡眠時間が短くなったのはここ半年くらい
    些細なことに腹を立て 他人の人生の哀歓に涙して
    身の回りの問題を先送りして 日を重ねた
    数日前から聞える不可解な音 幻聴?
    そして今朝の――
   突然 カーテンが引かれて呼び込みの女が私を呼んだ
   窓越しの陽差に目眩いしながら腰を浮かす
   白衣が言った 「どんな病気をお望みですか?」

 島根県詩人連合からいただきました。年刊詩集の第
31集ということですから、もう31年も続いているのでしょうね、すごい持続力です。

 紹介した作品はご覧のように病院でのことがモチーフになっていますけど、すき好んで病院に行く人はいないと思います。私も嫌いですね。特に「初回組」。そして「慌てて 質問に対する答えを準備する」とき、そんなときは本当に嫌になります。そんな心理がよく描けていると思います。
 圧巻は最終行です。どんな病気を望んでいるかと問われれば、その通りなんでしょう。胃癌は嫌だけど胃潰瘍ならいい、大腸癌は嫌だけど単なる便秘程度だったらいい、案外とそんなことを望んでいるのかもしれません。そんな心理をとらえていると読み取れますし、医は算術、を揶揄しているともとれます。その両方かもしれませんね。思わずドキッとさせられた作品です。




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