きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

  kumogakure  
 
 
「クモガクレ」
Calumia godeffroyi
カワアナゴ科

2003.5.21()

 職場の後輩の父上が亡くなって、お通夜に行ってきました。享年74歳。10年ほど病気がちだったそうですが、それでもずいぶん若いな、という印象を持っています。今はみんな長生きですから、80を越えないと駄目だな、とも思います。できれば90、できれば100。本当なら設計寿命の125歳までみんな生きていてほしいものです。そのくらいになったら、本人も周りも諦めがつくでしょう。

 という自分はいつまで生きるのだろう? 化学物質で汚染された初代でしょうから、あまり長生きできないかもしれませんね。田村隆一じゃないけど、死んだら死んだで生きていくしかありません。



  吉田義昭氏詩集『ガリレオが笑った』
  galileo ga waratta    
 
 
 
 
2003.4.10
東京都豊島区
書肆山田刊
2500円+税
 

    病気の時代

    
2 男性更年期

   精神は病んでいるほど健康であるという仮説を立てた。
   脳下垂体とか視床下部とか、私という患者は、
   脳の命令だけでなんとか生きてきたのだから、
   この脱力感は男性ホルモンの不足というより、
   人間性がないというなら、人間性ホルモンの不足です。

   男性更年期が増加しているという時代の噂です。
   純粋で誠実に自分と向き合って生きてきた人だけ、
   そんな正常な男性だけがかかる病気だそうです。
   ですから、私とは無縁な病気だと医者に言われました。

 20年ぶりの3冊目の詩集だそうです。紹介した作品は「病気の時代」という総タイトルのもとに「1 正常と異常と」「2 男性更年期」「3 病気の時代」という3編があり、その中の「2」です。
 「
精神は病んでいるほど健康であるという仮説」は、逆説とばかり言い切れないものを含んでいるように思います。確かに私もそういう意識で生きてきたなと思います。何かモヤーとしていたものをはっきりと示された感じです。

 おもしろい詩集で、理系の人のようです。「郷愁の酸素」「水を愛した男」「表面張力」「密度」「液体」などは私も試みてきた系統で、非常に共感を持ちました。どうも同世代の詩人のようです。仲間を得た、と言ったら失礼になるでしょうか、心強い思いをしています。



  詩誌『伊那文学』64号
  ina_bungaku_64    
 
 
 
 
2003.5.20
長野県伊那市
伊那文学同人会・中原忍冬氏 発行
500円
 

    生命    中山さつき

   一つの体に
   異なる二つのハートビート
   一つの体に
   異なる二つの意志

   受精卵が人間に
   生命は系統発生を繰り返す
   太古から繰返された子宮の貸与

   羊水という海の中で
   母の心音をバックミュージックに
   胎児は陽光を見る
   何を思って蹴る
   何を思ってでんぐり返る
   そこはどんな世界なのか

   胎児にも意思はあって
   産まれたいから産まれてくる
   産まれたい時に産まれてくる
   産まれたい所に産まれてくる
   母のもとに

   二つの意志は
   へその緒で結ばれている

 これは男には書けませんね。女性は「二つの意志は/へその緒で結ばれている」と感じることができるのかと思うと、男の無力を改めて思い知らされてしまいます。不思議だったのは、なぜ「産まれたいから産まれてくる/産まれたい時に産まれてくる/産まれたい所に産まれてくる」ことができるのかとということだったのですが、それはすべて「母のもとに」制御されている(不適切な言葉ですが)からなのかと理解しました。「太古から繰返された子宮の貸与」だけではない、「生命」の神秘を感じた作品です。




   back(5月の部屋へ戻る)

   
home