きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

  kumogakure  
 
 
「クモガクレ」
Calumia godeffroyi
カワアナゴ科

2003.6.28(土)

 土曜休日ですが出勤しました。ちょっと仕事がたてこんでいます。休日出勤って、いいですね。誰もいない、電話はない、メールも来ない、平日の3倍は効率が上がったんじゃないでしょうか。いかに平日がヤボ用で忙殺されているかを実感しました。やみつきになりそうです(^^;



  詩誌『象』110号
  katachi 110    
 
 
 
 
2003.6.25
横浜市港南区
「象」詩人クラブ・篠原あや氏 発行
500円
 

    飛行機雲    三上 透

   その夏
   父は
   パソコンの調子が悪く
   僕は
   実家に何度も直しに行った
   秋口になると
   ようやくおさまり
   年賀状ソフトの住所録の更新が
   出来るようになった

    「年末は
     この住所一覧で
     賀状を出すよ・・・」

   笑いながら答えていた

   飛行機雲が
   北に真っ直ぐ伸びていき
   山肌に消える

    空が好きだった父

   丹念に作られた住所一覧が
   始めて使われたのは
   喪中の案内であった

 文芸作品として読むべきですから、事実かどうかは別にして「空が好きだった父」と過去形で書いてありますから、亡くなったのは「父」と採るべきでしょう。「飛行機雲」というタイトルと第5連が効いている作品だと思いました。三上さんの作品で「父」が出て来るのは、私の記憶では初めてですが、正直なところずいぶん巧くなったなという印象が強いです。願わくば「喪中の案内」は作品上のことだけでありますように…。



  岡村直子氏詩集『をんな』
  onna    
 
 
 
 
2003.7.10
東京都東村山市
書肆青樹社刊
2400円+税
 

    オクルコトバ

   モシ
   キミニ
   ハンリョヤ
   コドモガ
   イナクトモ
   ナゲクコトナカレ
   フツウノコトダカラ

   モシ
   キミガ
   コドクシスルコトガ
   アロウトモ
   ナゲクコトナカレ
   ゴク
   フツウノコトダカラ

   モシ
   キミニ
   ハンリョヤ
   コドモガ
   アロウトモ
   アンシンスべカラズ
   カゾクノ
   キズナハ
   キレテイル

   イジョウ
   ワタクシカラ
   ワタクシヘ
   オクル
   コトバ

 著者紹介に他の詩集名が見られないことから、第一詩集ではないかと思います。そうだとすると、まだまた力のある詩人が世に知られていないのだなと、感慨を深くしました。詩集を出したから詩人というわけではないでしょうが、やはり一冊のまとまった形にならないと評価し難いですからね(もちろん私が評価するというわけではありません)。

 紹介した作品は唯一、全行がカタカナで書かれたものです。単純なことを言っているだけなのですが、カタカナにすることによって意味が深くなっていくように思います。さらに単純ゆえの真実の強さというものも感じます。ここまで書き切れる人もなかなかいないでしょうし、言語感覚も鋭いと言えるでしょうね。今後が楽しみな詩人です。



  詩と評論・隔月刊誌『漉林』114号
  rokurin 114    
 
 
 
 
2003.8.1
東京都足立区
漉林書房・田川紀久雄氏 発行
800円+税
 

    ホ ホ ホタル    遠丸 立

   芯が燃える 躰の芯が燃えさかる

   体温――ことばが世に流れる
   空疎なことば 語呂あわせのコトバ……
   バカを言うな、「温」じゃない
   「燃」と言え 「体燃」と言えよ

   燃える材質は何か
   燃えさかるそのもの
   何を触媒にして?
   燃えることがいのちの相である
   生きるエネルギーの源は
   ある物質が燃える
   焔となって燃えあがる
   エネルギー
   ホ ホ ホタル
   ホタルが燃えて呆うと飛ぶ
   燃えて燃えて光を放って飛ぶにおなじ
   八〇年一〇〇年燃えて燃えつづけて飛ぶホタルがにんげんだ
   ホ ホ ホタル
   燃える小太陽がにんげんだ
   燃える小太陽 東から
   燃えあがる小熱塊
   ぐるり半周 西へ落ちる
   東から西へ 東から西へ
   ぬっと出る

   燃えることは飛ぶこと
   飛ぶことは燃えること
   宙宇の一点
   極微熱魂が燃えはじめた飛びはじめた
   微小熱魂 ホ ホ ホタル コトリ停る
   灰が遺る 灰が散る
   それがにんげんの一部始終
   はじめとおわり

 「ホタル」が輝ることと人間の熱とをオーバーラップさせた見事な作品だと思います。「体温」ではなく「体燃」、この言葉も言いえて妙ですね。言語感覚の鋭さを感じます。確かに「燃える小太陽がにんげん」なら「体燃」の方が合っているでしょう。最終連の「それがにんげんの一部始終/はじめとおわり」というフレーズにも作者の達観したものの見方を感じました。どこがで使いたくなる言葉です。




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