きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

  kumogakure  
 
 
「クモガクレ」
Calumia godeffroyi
カワアナゴ科

2003.7.23(水)

 製品に発生した不具合について夜遅くまで検討会を持ちました。製造部門、技術部門、品質保証部門(私)の三者が集まって喧々諤々。で、フッと思いました。全て駄目と判断すると損害はいくらだろう? ザッと計算すると数十万円なんですね。そんな金額のために何人も集まって議論しているのかと思うと可笑しくなりました。製造部門としては、そんな金額でも成果が失われますから必死です。それは判りますけど、万一、市場クレームとなったら何千万、何億円の損害になるか計り知れません。不具合そのものは、実はたいしたことがなくて、厳しい基準で見るとアウト。ちょっと甘く考えるとセーフ。そんなレベルなんです。

 結論は別の観点からの試験をやって、その結果で判断しようということになりました。で、またフッと思ったんですけど、それに掛かる費用っていくらだろう? おそらく百万円を越えると思います。数十万円を救うために百万円を越える費用を掛ける、企業というのは意外とおもしろいところです(^^;



  詩誌『環』109号
    wa 109    
 
 
 
 
2003.7.23
名古屋市守山区
「輪」の会・若山紀子氏 発行
500円
 

    クジラ    松田利辛

   シロナガスクジラ ナガスクジラ
   セミクジラ ザトウクジラ
   コクジラ コイワシクジラ

   ひげクジラは一夫一婦を守ってる

   マッコウクジラ ツチクジラ
   シャチ イッカク
   バンドウイルカ ガンジスカワイルカ
   コビトイルカ スナメリ

   歯クジラはハーレムあり不倫あり
   人間に似ているのは どっちだ

   牛のステーキ大好きアメリカ人
   決して食べないインド人
   何でも食べる日本人
   給食に出たクジラの肉は
   おいしかったよ

 鯨は「一夫一婦を守ってる」だけだと思っていましたが、「ハーレムあり不倫あり」の種もいるんですね。本当に「人間に似ているのは どっち」なんでしょうかね。同じ種の中でもいろいろな奴がいるんですか、それとも種によって完全に分かれる? 興味が尽きません。
 最終連がやはり見事だと思います。人間は人種によって対応が様々、それを一律にしようという試みを批判しているように見えます。牛肉は良くて鯨肉はなぜいけないの? 私にも素朴な疑問があります。ひとつの文化≠フ押付けを感じますね。

 最近は鯨肉もだいぶ出回ってきました。改めて食べてみるとそれほど旨いわけではありませんけど、「給食に出たクジラの肉」を思い出して郷愁がありました。文化≠考えながら食べる、これも一興かもしれません。



  詩誌そんじゅり30号
    songerie 30    
 
 
 
2003.7.20
横浜市磯子区
春井昌子氏 発行
非売品
 

    北光丸    春井昌子

   半世紀以上の間
   函館商船学校の倉庫の片隅に
   放置されていたという帆船模型がある
   机上用にしては 大きすぎ
   航海用にしては 小さすぎる
   長さ六五三糎 高さ三四○糎 巾七九糎
   展帆 畳帆 索具の取扱等
   操帆訓練教材として
   商船士官育成のため 大正二年製作された

   陸運の風に吹かれ
   海運も世界水準を越えた 昭和二年
   国産初のブドウ酒造りが成功した
   試飲会用の樽と ぼんやりとした不安を乗せ
   同色の夕茜の海に進水したと聞く

   以後 士官候補生が寝静まると
   艫綱をきしませて
   冷いやりとした北の空気を帆にふくませ
   限界のない 思考の海に
   海事思想を運び出そうと OBに呼びかける
   暗闇の中の ぼんやりとした不安は
   一層 無力感に包まれ 対坑できず
   昭和十年 ついに教室の床上に座礁難破
   そのまま 倉庫に放置されることになった

   昭和五十六年 運命的に
   帆船模型同好会に発見され
   二十年の月日をかけ 艤装復元された

   平成の今
   ぼんやりとした不安を乗せたまま
   横浜の港で
   船出の機会を待っている

 3回も「ぼんやりとした不安」という言葉が出てきますけど、重要なキーワードだと思います。ご存知の方も多いと思いますが、芥川龍之介の自殺直前の言葉です。「平成の今」、作者はそれと同じことを感じているのではないでしょうか。「大正二年」「昭和二年」「昭和十年」「昭和五十六年」、それから「二十年」と、「帆船模型」の生きてきた時代も見過ごすことができません。計算するとちょうど90年になります。日本の近代化と軌を一にする「帆船模型」と言えます。そう考えるとやはり「ぼんやりとした不安」は活きてきますね。緻密に計算された作品だと改めて思いました。




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