きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

  kumogakure  
 
 
「クモガクレ」
Calumia godeffroyi
カワアナゴ科

2003.8.25(月)

 新商品の社内承認会が開かれました。試作品を作ってみて、様々な評価をやったあとに製造化してよいかどうかを判断する会です。商品化を担当する我々には大事なセレモニーですが、大きな指摘事項もなく無事に承認されました。
 でも、これはひとつの通過点に過ぎず、これからが大変なんですね。商品として世に出たものの、パッとせず消えてしまうものもあります。開発の苦労を考えると、その努力はいったい何だったのかと思うこともありますけど、まあ、商品というのはそういうものでしょう。必要ならこれからも改良を加えて、世の中に認知される商品に育て上げたいものです。5年、10年後にその成果が出てくれれば良しとしましょう。



  木島始・石原武・新延拳編バイリンガル四行連詩集
    collection of linked quatrains    
 
 
 
<情熱>の巻 その他
2003.7.20
東京都新宿区
土曜美術社出版販売刊
3200+税
 

 「四行連詩」というのは1995年に木島始さんが始めたそうですが、ご存知の方も多いかもしれませんね。このHPでも何度か紹介しています。この本は新延拳さんからいただきましたが、連詩のルールをまず紹介しておきましょう。

   四行連詩作法
   1.先行四行詩の第三行目の語か句をとり、その同義語(同義句)か、
     あるいは反義語(反義句)を、自作四行詩の第三行に、入れること。
   2.先行四行詩の第四行目の語か句をとり、その語か句を、自作四行
     詩の一行目に、入れること。
   (この1か2の規則を守って連詩がつづけられる場合、最初にえらばれ
   た鍵となる語か句が、再び用いられた場合、連詩が一回りしたとみな
   して、終結とし、その連詩の一回りの題名とすることができる。)

 というルールだそうです。では、その実例を見てみましょう。非常に長い「一回り」もあれますが、ここでは短いものを紹介してみます。「バイリンガル」とありますので、英文も併載します。

    〈人間の心〉の巻
                        ニール・フィリップ
                           (木島 始訳)
          まだ見つかっていないどんな驚異が
              潜んでいることか
            入り込めない部屋べやに
               人間の心の

                             石原 武
      ああ 人間の心よ おまえはたかが悪魔のご馳走だ
          私は蜘珠の巣にとらわれたままだ
           列車である少女に会ってから
       彼女は透明なストローで赤い液体を吸っていた

                             新延 拳
             昼の月は透明に見える
   シジフォスの神話以降 生きることの意味は明らかになったのか
       まだ同じ苦行についているのか シジフォスよ
               われわれもまた

                             坂本宮尾
         人間の想像を超えた悲劇
         まるで怪獣映画みたいに
     昨日の摩天楼は完全に消え失せてしまった
   ゴキブリたちよ声高く嘆いてくれ 巨大な瓦礫の下で

                             角谷昌子
           曼珠沙華の花よ
        血のように赤く かたまって
          脳のなかに咲いている
      前頭葉は邪悪なことを制御できなくなる

                             木島 始
     人間の心には 許せない 受け入れようがない
           大惨劇が おこった
       驕るんじゃない おー 頭脳くんたちよ
       きみたち自身が 業火の化身じゃないか


   The Cycle of Human Heart

                              Neil Philip
             What undiscovered wonders
                 Are lurking
             In the forbidden chambers
               Of the human heart

                            Ishihara Takeshi
       Ah,Human Heart,you are only a good table for Old Nick.
           I've been chambered in a spider's web,
              Since I met a girl on a train,
         Sipping red liquid through a transparent straw.

                              Niinobe Ken
        The moon of the day looks transparent.
   Has the meaning of life been clear after the myth of Sisyphus?
         Is he still doing the same job today?
                So are we?

                            Sakamoto Miyao
       A tragedy beyond human imagination.
           Just like a monster movie
   the skyscrapers yesterday have completely disappeared.
    Moan aloud cockroaches,under a huge heap of rubble!

                            Kakutani Masako
          Clumps of spider lilies,
        bloody red and thickly clustered,
      blooming in the brain.The frontal lobe loses
         Control over wicked endeavors.

                             Kijima Hajime
         There happened Catastrophe
       human hearts can never allow never accept
         Be not so arrogant O brains
        you are already incarnating hellfires

 「人間の心」について、それぞれの詩人が考えているところや感性が見えておもしろいですね。本著に載せられている新延拳さんの「わが連詩事始」には完全に閉じていないこと、すなわち、どこかに他とつながっていく可能性をもつということが、自閉症的ともいわれる現代詩に風穴を開けることにつながらないかと考えたとしても、不自然なことではないだろう。しかし、いきなり伝統詩形に戻るというのではなしに、現代詩の特質を生かしながら、上述の可能性を求められないかというのが、連詩の試みである≠ニありましたが、まさにその具現と云えましょう。現代詩を考える上で有効な手法であると思った詩集です。



  詩とエッセイ誌『千年樹』
    sennenjyu 15    
 
 
 
 
2003.8.22
長崎県諌早市
光楓荘・岡 耕秋氏 発行
500円
 

    月見草    岡 耕秋

   その季節
   月見草は黄のたよりない花を夕闇に開く

   大学病院の外科病棟の中庭には
   確かに月見草が咲いていて
   大気を甘くさせていたが
   それは入院していた少女のせいだったのか
   それを知るものもない

   月が出ていたのか星明かりだったのか
   それすらさだかでなく
   月見草を愛でた少女のことも
   おぼろになってしまった

   永遠に続くと思われた時が
   陽炎のようなはかないものと気づくには
   そんなに長い時間はいらなかった

   やがて廃墟となった外科病棟は解体され
   中庭も新築の病棟のどこかに消えてしまった

   時は刻みつける痕跡の深さを
   短い人の暦に従って変えるようだ
   そうしてすべての記憶を消し去ることを
   風化とよび
   ときには慈悲とよぶのかも知れない

   だれもその夕ベを復元できないが
   季節だけは律義に巡ってきて
   昨日の月見草をかすかに匂わせる

 第6連が見事な作品だと思いました。「時は刻みつける痕跡の深さを/短い人の暦に従って変えるようだ」というフレーズは、従来からの時間の概念を覆すようにも読み取れ、逆にあたたかく追認しているようにも思える不思議なフレーズです。詩の持つ特徴の二重性を具現化しているとも思います。また「風化」と「慈悲」の対比もおもしろいと思いました。「風化とよび/ときには慈悲とよぶ」のは、優れた詩人だからこそ感じられるものかもしれません。いい勉強をさせてもらいました。



  会報News Letter9号
    news letter 9    
 
 
 
 
 
2003.8.20
山口県玖珂郡美和町
中四国詩人会・御庄博実氏 発行
非売品
 

 中四国9県の詩人たちが集まって出来た団体の会報です。第3回中四国詩人賞に瀬崎祐さんの詩集『風を待つ人々』が決まったこと(この詩集はこのHPでも紹介しています)、私も1、2度お逢いしたことのあるながとかずおさん(理事)が亡くなったことなどが報告されていました。
 中四国各県詩界概況として、岡山・鳥取・島根・山口の各県からの報告が載せられていますが、これが自由溌剌としていて好感を持ちました。書式や内容の統一がなく、それぞれが好きな書式で好きなように書いています。何を主体として考えているかが判って、おもしろい。そんな自由さが中四国詩人会の持ち味なんだろうなと思った次第です。




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