きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

  kumogakure  
 
 
「クモガクレ」
Calumia godeffroyi
カワアナゴ科

2003.9.11(木)

 関連会社との定例会で江東区に出張してきました。懸案事項が多かったのですが、過去1年でだいぶ片付いて、特に私に直接関連する部分はほとんど解決しました。他は同行した弊社メンバーの責任範疇ですが、これも大きく進んでいます。で、珍しく17時には会議が終了。東京駅地下でちょっと呑んで、ゆっくりと帰ることができました。いつもこういう出張だといいんですがね…。なかなかそうはいかないのが現実です。



  隔月刊詩誌サロン・デ・ポエート245号
    salon des poetes 245    
 
 
 
 
2003.8.30
名古屋市名東区
中部詩人サロン・滝澤和枝氏 発行
300円
 

    街・断章   阿部堅磐

   この歩道橋から街を眺めると
   若き日の思い出が
   ある懐かしさをもって甦る

   あの駅の石柱に凭れて
   改札口からそよ風のように抜けてくる
   ガール・フレンドを待ったこと

   大学回りのバス停でバスに乗り
   まだ眠そうな頗をした学友達と
   バスに揺られて通学したこと

   すでに今は無くなり
   私の心の中にのみ存在する
   喫茶店で仲間とコーヒーを飲んだこと

   二度と再び会えなくなる運命とも知らず
   あの街角の花屋で薔薇を買い
   それを恋人に手渡し何気なく別れたこと

   あの陸橋の階段を友と上ってそして下って
   安いレストランで食事をして
   パブヘジンフィーズを飲みに行ったこと

   昼下がりの都会の広場
   昔が恋しくなったらまた足を向けよう
   そう思いながら 明るい街の外へ出る

 まさに「街」の「断章」、青春の「断章」だと思います。「そよ風のように抜けてくる/ガール・フレンド」なんて懐かしいですね。「私の心の中にのみ存在する/喫茶店」というのも確かにあります。そして最終連は、ある年齢を超えたら判ってくるものなのでしょうか、もちろん私も判るつもりです。「明るい街の外へ」が良く効いている作品だと思いました。



  詩誌『倭寇』33号
    wako 33    
 
 
 
 
2003.8.31
埼玉県和光市
わこう出版社・鈴木敏幸氏 発行
1000円
 

    歯無しの話
      ―戸田組歯の巻―    鈴木敏幸

   僕には歯が三本しかないのだが
   何を勘違いしたのか
   確か東岡とかなんとかいう友人がいて
   「びんこうの歯は一本しかないぞ」と吹聴して回っていたとのこと
   その弟すじから聞いたことがある
   (一〇〇と一〇三では大差もなかろうが
   一と三とでは三倍もの差があることを理解してほしい思いもするが
   非情無情は世の常なりとてか)
   一か三か事の正否はともかくと
   ちりちりと痛い虫歯があることから
   たしかに最低一本はあることだけは確信して主張できるのだが
   この痛さを歯医者に訴えても
   ちらりと歯のレントゲンに目をやり
   まずは歯のお掃除次は入れ歯の手入れ等と馬耳東風
   私は人には人としての人権があり
   歯にはそれ相応の痛さを主張できる権利があるものと信じるが
   東岡兄弟殿や歯医者様にもこの単純な真理がいっこうに通じそうにもない
   であるから要するにこれは話にもならない歯無しの話なのである
   ………………………………………………………………………………
   胃癌の手術を終えて退院する折
   主治医殿「よく噛んで」とご注意あそばされたのだが
   歯なしでは噛みようもあるめえ
   病はあたいをもてあそび
   次いで心臓の手術となりはしたのだが
   麻酔のほとんどきかない
   カテーテルのじんわりとした痛さには閉口(この手術は三回)
   こういう折は奥歯をぐいと噛み締めて我慢すんべえと
   一瞬思いはしたのだが
   次の瞬間あたしの歯が何本であったかを考え
   無念やる方なき思い
   ああうらめしや東岡とかなんとかのあの兄弟
   歯無し歯無し歯の無い話は詩にもならない話なのである
   ………………………………………………………………………………
   ところで戸田組の御大の歯はいかがなものでござるか
   木津川殿蕎麦を食べて歯がとれたとのご一報
   戸田組で一等がんぜないのがこの私
   ではあるが何としても一等は一等
   歯無しでもこの私が第一等
   わたしゃその道の先輩なりとして
   その歯は仮歯あくまで飾りと思えよと
   たかが椎茸とは言えど前歯の欠ける故事もありとはしたのだが
   戸田組戸田組
   今一人の戸田組西岡殿
   歯となれば俺の出番としゃしゃり出て
   歯並みもよければ毛並みもよい
   おおそれながら顔もよければ頭もよいとものたまいき
   「お−い誰かペンチと鉄鎚を持って来い」
   へし折ってやりたい
   西岡の丈夫な
   あの鬼歯と
   でっかいあの頭

 敏幸詩の世界を味わっていただきたいと思います。登場人物は架空・実在と多彩ですが、現在の詩壇の重鎮たちが出ています。知っている人にはたまらない魅力なんですね、これが。詩にはいろいろな作り方がありますけど、敏幸詩は他の追随を許さないものと納得いただけると思います。




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