きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

  kumogakure  
 
 
「クモガクレ」
Calumia godeffroyi
カワアナゴ科

2003.9.12(金)

 新商品開発の社内会議がありました。研究部門と製造部門の基本設計に関わる会議でしたが、本来は私が出席するものではありません。しかし製造部門の担当者2名は他の用件で出張。製造部門として誰も出席しないのはマズイからお前が行け、ということになりました。確かにその2人を除くと、案件の内容を知っているのは私しかいません。じゃあ、しょうがない、出席しようということになったものです。

 関係者が全国から集まるからでしょうか、会場は小田原市にある研修施設。13時から21時までやる、というのですから驚きました。かなり気が入っています。でもね、私はそのプロジェクトに反対なんです。製造部門の負担が大きい割には儲けが少ない。医療分野の新製品で、開発されれば社会への貢献が大きいのは判りますけど、それに振り回された経験を私たちの部署ではたくさん持っています。その愚をまたやろうというのですから、ちょっとムッとしながら参加しました。私に代理を命じた上位者には反対してくるからね、と言っておきましたから、せいせいと反対論を述べました。議事録にもしっかりと載せてもらいました。

 まあ、そんな会議でしたから21時までつき合う気はなく、言うだけ言って17時に帰ってきてしまいました。後日、上位者に報告したら私の役割は終りです。開発が本決りになったら、組織ですから受入れざるを得ませんけど、現場からの反対も強いだろうなあ。そのときは現場を抑える役割をしなければなりませんが、反対したことだけはちゃんと伝えようと思っています。組織だからね、決まったらやるしかないの、と説明すれば現場も分ってくれると思うけど、甘いかなぁ。



  会報『千葉県詩人クラブ会報』183号
    chibaken shijin club kaiho 183    
 
 
 
 
2003.9.15
千葉市花見川区
中谷順子氏 発行
非売品
 

    舞い   中上綾子

   琴と笛の音は一段と高くなり夜を染める
   床に伏して居た女は静かに立ちあがる
   一本の舞い扇は開かれ
   ゆるやかに女の華奢な躰は周囲を圧迫する
   広い舞台は消えて 女ひとりの世界に入った
   十本の指に操られ生き物のように動く舞い扇
   白い小袖と手が搦み合い ゆらゆら揺れて
   柔軟な姿態は何千の瞳を吸い込む
   眩ゆい光りが女の性を香り高く描写する
   鬼女の面
(おもて)に狂えば又 憂いに沈む湖水の出現
   悲しみ 怒り やさしい目は一本の舞い扇に托されて
   己れの道を訴え舞う女の姿はこよなく美しかった

   時間は止まっている
   大きな拍手は陶酔を破った
   「素晴らしかったわ」 私の呟きが
   白い耳たぶをまさぐったのか
   扇に半分顔を隠した女の表情が
   かすかに笑った

        注 この作品は、千葉県詩人クラブ賞第一回受賞作品(一九八五年)です。

 作者は6月に亡くなったそうです。追悼頁に載っていた作品を紹介してみました。1980年代初頭に創られた作品と想像できます。「舞い」の優雅さと「扇に半分顔を隠した女」のしぐさが見事にマッチした作品と云えましょう。千葉県詩人クラブは惜しい人を亡くしたんだなと、しみじみ感じさせる作品だと思いました。



  木島始氏詩集『新々 木島始詩集』
    kijima hajime shisyu    
 
 
 
新・現代詩文庫18
2003.9.20
東京都新宿区
土曜美術社出版販売刊
1400円+税
 

    本を閉じてまた
     ――編者から読むひとへ

   もしも もう一度ひらいてくれたら
   焼け野原に残った種が
   もう一度また芽ぶくのだ
   そう あなたの目の光にあたって

   もしも もう一度ひらいてくれたら
   暴風の海に潜んでいた魚が
   もう一度また鱗をきらめかすのだ
   そう あなたの勘の良さをよろこんで

   読みすすめば ふいに 天空の涯から
   新しい謎の雷が 胸にとどろきもしよう
   ページは あなたの耕す地
   ページは あなたの潜る海

        一九九八年二月一日『列島詩人集』を記念する会にて

 1975年刊『ふしぎなともだち』、1976年刊『千の舌で』、1981年刊『回風歌・脱出』、1984年刊『双飛のうた』、1990年刊『遊星ひとつ』、1994年刊『われたまご』、1995年刊『やたらうた』、同じく1995年刊『朝の羽ばたき』、そして1999年刊の『流紋の汀で』という詩集から抜粋されていました。木島始詩研究にはうってつけの詩集と云えましょう。

 紹介した詩は詩集『流紋の汀で』の作品です。注釈の「
一九九八年二月一日『列島詩人集』を記念する会」には私も参加していました。記憶に残っていますから、会場で木島さんが朗読したかパンフレットに載っていたのかもしれません。『列島詩人集』に寄せる著者の思いとしても素晴らしい作品ですが、それだけに限定せず全ての詩集にも贈りたい詩だと思いますね。




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