きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

  kumogakure  
 
 
「クモガクレ」
Calumia godeffroyi
カワアナゴ科

2003.12.10(水)

 出張初日。小田原7時半過ぎの新幹線で東京に出て、8時半過ぎの山形新幹線で新庄へ。12時ちょっと過ぎに着きました。今回の同行者は技術系の後輩ひとり。彼は煙草を吸いませんから、お互い別々の指定席を取ったので、話しかける気遣いや話しかけられる面倒もなくてのんびりと旅を楽しみました。久しぶりに雪景色も見て、ひとりで悦に入っていました。

 でも、仕事はキツかったですね。13時から始まった機械の修理は20時まで掛かってしまいました。そうは言っても私は立会いだけですから、修理するメーカーの技術者と、測定する同行の後輩の仕事振りを見ているだけ(^^; それではすまないので、持って行った帳票と現物の確認などをやっていましたけど、本当は自分で手を出したかったですね。

 夜は地元のタクシーの運転手に教わった居酒屋で呑みました。こじんまりとしたいい店でしたよ。久保田の万寿が目についたので注文したんですが切れてた! 八海山に変えたのが心残りだったぐらいですね。タクシーの運転手もおもしろい男で、以前、後輩が乗ったときの運転手だったんですね。1年も前のことをお互いに覚えていて驚きました。明日の朝、ホテルに迎えて行ってもいいかと聞くので、もちろんOKを出しました。田舎はやっぱりいいなぁ。



  佐藤吉一氏編『白鳥省吾物語』(下巻)
    shiratori syougo monogatari.JPG    
 
 
 
 
2003.11.26
宮城県栗原郡栗駒町
白鳥省吾を研究する会 発行
3900円
 

    北斗の花環    白鳥省吾

   仰げば北斗七星
   空にかかる美はしの花環
   くく揺るぎなき永劫の花
   静かにほほえむ散らぬ花。

   星屑は濱の真砂のごとく
   その周囲に果てしなく散らばる時
   ああ かの北斗七星の花環こそ
   現し世の悩みのうへ
   歓喜の聲をあげて懸りぬ。

   見よ興亡幾千年の夢
   貧しき吟遊詩人ホーマーは歌ひ
   クレオパトラも
   ナポレオンもゲーテも今は何處
   仰げば空にかかる北斗の星
   かざすは誰ぞ 実はしの花環。

 とうとう下巻が出ました。下巻500頁、上下合せると1000頁という大作です。まずは著者におめでとうと申し上げ、日本詩人クラブの創設会員である白鳥省吾の偉業をまとめあげていただいたことに、後輩会員としてお礼申し上げます。
 それにしても微に入り細に入り、大変なものだと思います。研究書として詳細な年表があるのは当然としても、全国津々浦々にある詩碑や校歌まで網羅しています。詩碑に至っては著者自ら撮影した写真も含めて50葉近くが収められており、それだけでも膨大なエネルギーを費やしただろうことが想像できます。また、この本の特徴は、著者のHPを訪れた人が情報を寄せていることも挙げられるでしょう。詩碑の写真もメールで寄せられたことを知り、新しい時代の流れを予感させられました。白鳥省吾研究に留まらず、その周辺の日本詩壇を知る一級の資料と申せましょう。

 紹介した作品は白鳥省吾晩年の詩集『北斗の花環』(1965年世界文庫刊)のタイトルポエムです。著者は「大正最後の吟遊詩人白鳥省吾は、北天に輝ける花環をめざして、旅立っていった‥‥。」と述べていますが、まさにその通りの姿勢の正しさ、視線の崇高さを感じさせる作品だと思います。白鳥省吾賞は順調に推移しているように見えます。賞とともに白鳥省吾という詩人が日本人に永遠に記憶されることを願っています。



  所 立子氏詩集『寝返りひとつ』
    negaeri hitotsu.JPG    
 
 
 
 
1995.12.15
東京都新宿区
土曜美術社出版販売
1900円
 

    寝返りひとつ

   一六〇三年一月の或る日
   イギリス女王エリザベスは
   突然 体の変調を感じてベッドに入った
   医者の診察を受けなかったのは
   もはや女王として 最後の仕事を果たす時間しか
   残されていないと悟ったからであろう
   「国家と結婚している」と豪語して
   求婚する君主達を すべて拒否した女王には
   当然の結果として 子供がなかった

   彼女は 最後の仕事として
   スコットランドのジェームズを
   後継者に指名したのち 不意に
   寝返りをひとつして没したという
   その魂は
   高く昇って 天国の門をくぐったのか
   それとも深く下降して 冥界への道を辿ったのか

   昨夜わたしは夢の中で 去年死んだ弟と会った
   病院で 意識不明のままつけられていた
   夥しいチューブ類は すべて外され
   弟は 軽やかな新調の背広姿であった
   連れ立って食事に行こうとして
   寝返りを打ち 目が覚めた

   障子には 眩しく朝日が射している
   今まで 上下感覚で捉えていたその世界は
   自分の寝ているすぐ横に
   水平に繁っていたらしい
   とすれば 寝返りひとつ生死の別れ目
   しかし 残念なことに
   自分が 左右どちらに寝返りをしたのだったか
   或はその時 弟が脇からちょっと
   手を添えてくれたのだったか
   どうしても思い出せない

   チューダー王朝 最後の女王として
   波瀾に富んだその一生を
   あざやかに寝返って締めくくった
   エリザベス一世は
   さすがに非凡の人であった
   この時の正確な記録が もし残っていたなら
   生から死へ 死から生へ 自在に寝返ることも
   或は可能になっていたかも知れない

 詩集のタイトルポエムです。「寝返りをひとつして没した」というエピソードもおもしろいし、そこから夢に引きつけて「寝返りひとつ生死の別れ目」と発想することもおもしろいと思います。本当に「左右どちらに寝返りをした」だけで生死が別れることになったら怖いことですけどね。詩人の感覚としては「上下感覚で捉えていたその世界」が実は「水平に繁っていたらしい」ことに気付いた点、「この時の正確な記録が もし残っていたなら」と発想する点も素晴らしいと思います。著者の「非凡」な感覚が表出した作品と云えましょう。




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