きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

  kumogakure  
 
 
「クモガクレ」
Calumia godeffroyi
カワアナゴ科

2003.12.21(日)

 かねての予定通り、会社の荷物が宅配便で自宅に届きました。日曜日は会社が休みですからね、受取る人がいない…。それを持って出勤して、2時間ほど仕事をしてきました。やれやれ。
 まあ、仕事ですし、ここで1日仕事を進めることが後で効いてきますからね、納得した上でのことです。これで今年の休日出勤も終りの予定です。



  木村孝夫氏詩集『眠るのはまだ早いよ』
    nemurunowa mada hayaiyo.JPG    
 
 
 
 
2003.12.24
長野県諏訪市
ゆすりか社刊
1500円+税
 

    手をつくす

   「手をつくす」
   と いうことは

   全てを
   他人にゆだねること

   涙を
   封印し
   笑顔をたやさないこと

   無の感情を
   おだやかな呼吸で
   つつみこめること

   「手をつくす」
   と いうことは

   寛容の器で
   全てを飲みこむこと

 9月に亡くなった奥様への鎮魂詩集です。11年前手術した脳腫瘍の再発、1年間の入院のあとの逝去。夫婦を襲った悲劇をうたっています。それらを詩という形で昇華せざるを得なかった著者の心境を考えると、胸の塞がる思いをしました。
 紹介した作品は再入院中のものと思います。他人は簡単に「手をつくす」と言うけど、当事者にとっては「全てを/他人にゆだねること」、「寛容の器で/全てを飲みこむこと」。言葉には置き換えられない著者の痛みが伝わってきます。
 まだ57歳という若さで亡くなった奥様のご冥福をお祈りいたします。



  山本泰生氏詩集『三本足』
    sanbonashi.JPG    
 
 
 
 
2003.12.6
東京都東村山市
書肆青樹社刊
2400円+税
 

    三本足

   三本足の犬が寝ている
   後足の片方がざっくり切れてない
   かすかに揺れているから生きている
   犬の背を涼しい日差しが撫でる
   深い静けさに埋まる
   いのち危うい出来事でも
   風車をまわす風のように流れ去る
   顔は向こうむきでまどろむ

   飼われず繋がれずいつも一匹で
   餌を漁ったり駆けたり休んだり
   何とでもなったから車も恐れなかった
   奔放に生きてきた証か 三本足は
   ふと犬がない足を舐めようとすると
   妙に痙攣する全身
   それなら喪った足にはどんな
   幸せや夢や花火が詰まっていただろうか
   それとも怒りや鳴咽や毒虫とか

   生きているというのに
   この犬 影がうすい
   痩せて浮き出た背骨のうえにトンボ
   温もりのないからだに脳天気
   ふしぎな犬
   ありえないが すこし笑ったり
   冷たい汗をたらしてのけ反ったり
   眠りながらふらふら立ち上がったり

   もしやと顔を覗くとどうも人
   毛や泥や埃まみれでもほとんど人
   こころに第三の足が生えた人
   三本足の人
   生まれた頃はなかったのに
   いつのまにか
   過剰な幸せや夢や花火
   過剰な期待や不安や自壊とかから
   いよいよこころ捩れて その重たい足になり
   これに足千切れる痛みの記憶がよみがえり

   こんな喪った足をかばいながら
   こんな余分な足を引きずりながら
   今日もぎこちなく人込みをうろつく
   駅からあふれる急ぎ足の群れ
   そのなかに
   三本足を背広で隠した犬がいれは
   それはたぶんぼくだ

 詩集のタイトルポエムです。犬の話から人へと転化するところが見事だと思います。犬にとって「三本足」は足一本の不足だが、人間にとっては「過剰な幸せや夢や花火/過剰な期待や不安や自壊」であるという寓意性も納得させられます。それが最後には「たぶんぼくだ」と狂言回しのように着地するのも素晴らしいですね。読者をグッと惹きつける部分だと思います。なかなか知的に刺激される詩集でした。



  詩誌インディゴ28号
    indigo 28.JPG    
 
 
 
 
2003.12.15
高知県高知市
文月奈津氏 発行
500円
 

    頭    文月奈津

   あたまが怒っている
   何もかも
   わたしのせいにするな
   と

   鈍いから
   ばかだから
   仕事がおそい
   いい作品が書けない
   とか
   事の進まない訳を
   わたしに被せるな
   と

   たしかに
   学術的には
   わたしが考え
   指令を出し
   手や
   足や
   からだがそれに従うのだが

   でも
   よく考えてみよ
   わたしは
   わたしである以前に
   おまえという
   一人の人間の
   単なる
   一部でしかないのだから
   と

 「あたま」と「わたし」は別物だとする、おもしろい作品ですね。「鈍いから/ばかだから/仕事がおそい」と私もいつも「頭」を馬鹿にしていたのですが、ちょっと考え方が変りそうです。で、じゃあ、どこを馬鹿にすればいい? そんなことも判んないのか! ほんとにバカだな、お前(^^;
 閑話休題。木野ふみ氏「なぜかほのぼの」、おもしろかったです。この路線はやっている人がいないと思いますので、お続けになるとひとつのジャンルが確立されるように思いました。




   back(12月の部屋へ戻る)

   
home