きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

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1990.5.6
長野・五竜とおみ上空

2004.1.8(木)

 一昨日57歳で急死した職場の先輩の通夜に行ってきました。現職ですから、すごい人混みでした。焼香場から延々と、5列の人波が100mも続いたろうと思います。現職ということもあるかもしれませんが、人柄が良かったからでしょうね。全国的にも有名な、正月の箱根駅伝に役員として参加なさっていたようです。そんな関係もあったのだろうと思います。定年退職した人たちもかなり見えて、さながら同窓会のような感じでしたが、さすがに大声で笑っているような人はいませんでした。皆さん、若い後輩の死を悼んでいるのがよく判りました。
 いい人は早く亡くなるのが世の常なのかもしれません。ご冥福をお祈りいたします。



  個人詩誌『蛙』8号
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2004.1.25
東京都中野区
菊田 守氏 発行
200円
 

    十二月の蟻    菊田 守

   北風が裸木を揺すっている
   気温九度という寒い日の昼下がり
   わが家の庭先の黒い土の上を
   黒い蟻が一匹そそくさと歩いている
   抱きしめてやりたい愛しい気持ちで
   見つめていると
   彼は固いマントの襟をしっかり押さえて
   枯れた草むらの中に入っていった
   あとは木の枝でブランコする
   風の子ばかり

 正月三が日は比較的暖かだったのですが、昨日、今日は冷えますね。そんなことを思いながらこの作品を読んでいくと、「気温九度という寒い日の昼下がり」と出てきて、やっぱり寒々とした気分になります。でも、「抱きしめてやりたい愛しい気持ちで」というフレーズに出会って、急に気持が温まるような思いをしました。「一匹」の「黒い蟻」にさえ、作者はそういう見方をしているんですね。風景は「風の子ばかり」でも、ホッとしてものを感じます。「固いマントの襟」という視点もおもしろいですね。



  詩誌『弦』28号
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2004.1.1
札幌市白石区
渡辺宗子氏 発行
非売品
 

    篭抜け鳥    渡辺宗子

   飛翔の神話を
   手乗り文鳥は知らない
   色塗られた細い金柵
   巣という甘い快ちよさに
   不要の羽をたたむ

   地上のすき間で
   わずかに覗く穹
   境界の壁の高さを翔べ 翔べ
   這うものたちよ
   ユーラシャの大陸も通過した
   篭抜けの鳥の幽魂
   蝋細工の翼の意志だ
   墜落する神の飛翔は

   迷鳥とよぶ変容の我が鳥たち
   墜ることは もうない
   帰巣を断った
   しるべのない自在の
   新しい人類だから

 第1連はいわゆる籠の鳥の状態を表現していると思います。第2連はそれに反発するイカロスの翼と見て良いでしょう。それに連なる第3連はちょっと難しいですね。「帰巣を断った/しるべのない自在の/新しい人類」をどう読むかで、まったく正反対になると思います。ひとつは、「墜ることは もうない」と単純に考えて、謂わば喜ばしい状態。もうひとつは、それをひねって考えて「人類」への批判とも受け取れます。「自在」をどちらに考えるかがキーかな、と思うのですが、全体のトーンからすると後者ではないかと考えています。「篭抜け鳥」の行く末には未来は無い、と言い切るとちょっと酷かもしれませんが…。本当はどちらだろう、と、しばらく考え込みそうです。




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