きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

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1990.5.6
長野・五竜とおみ上空

2004.1.13(火)

 結局この3連休は2日出勤して、休んだのは昨日だけでした。できれば2日は休みたかったんですが、まあ、しょうがない。市場の要求には休日出勤も徹夜も厭わない、日本人の良いところが出ているかな(^^;
 今日はそんなわけで、休み明けという感じはしませんでしたね。次々と仕事が舞い込んで、あっと言う間に18時。久しぶりに実験らしいこともやって、まあ、充実していたかな。キリがないんで、そこで終りにして帰宅しました。



  詩誌『アル』28号
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2003.10.30
横浜市港南区
西村富枝氏 発行
450円
 

    ライン川のほとり    西村富枝

   到着した空港で
   時計の針を戻す時
   こんなふうに戻ることが出来たならと
   が、すぐに
   もういいよ充分に苦しかったからと思う
   それでも
   とつくにの空の晴れて青い色に染まって
   旅をしみじみと思う
   失ったのか
   始めからなかったのか
   焦りもなく恨みもなく
   遠くラインのほとりの
   デュッセルドルフに向かう
   まぶしい自然の中では
   小さな悲しみが
   朝の露のように消えていくものらしい
   異境の不安と期待と
   未知の世界から歌は聞こえないが
   私は草原の匂いをかいでいる
   天と地とラインの流れと
   地球に暖かく血が流れ
   私の視野から消えかけた
   古里の風景さえ
   今は懐かしくよみがえってくる
   そして
   遠く去った人よ
   ここに私はいます
   海を越えたとてつもなく広い
   豊かな淋しさの中に

 紀行詩というのは意外に多いものなんですけど、どうしても個人の感動の枠内で収まってしまって、行ったことのない人には伝わり難いものだと思っています。しかし、この作品は違いますね。場所は「ラインのほとりの/デュッセルドルフに向かう」ところなんですが、そこが主体ではありません。その場所を借りて、詩の主体となるのはあくまでも「私の視野から消えかけた/古里の風景」であったり「遠く去った人」であるわけなのです。
 詩句も素晴らしい。「こんなふうに戻ることが出来たならと」思いながらも「もういいよ充分に苦しかったからと思う」。「海を越えたとてつもなく広い/豊かな淋しさの中に」というフレーズにも魅了されます。紀行詩の優れた書き方を示している作品だと思います。



  湧彩詩誌No.15『詩器処』
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2003.9.7
栃木県茂木町
湧太・紬彩氏 発行
非売品
 

 私の読解力と表現力の稚拙さから、このHPで紹介する作品は1誌に1作と決めているのですが、その禁を破って2篇の作品を紹介します。

    風    湧太

   風に吹かれている

   姿も
   形も
   触れあって
   過ぎていくときに
   風は
   固有の音をつくる

   僕は石になって
   昔から
   そうで
   あった
   ように
   高いところではなく
   地表をふく
   風の音をきいている

 「風に吹かれて」、風の「固有の音」を聞いているのですが、「僕は石になって」「高いところではな」い「風の音をきいてい」ます。視線を低いところに置く作者の姿勢に好感を持ちました。つい、風は高いところを吹くものだという先入観にとらわれますが、当然のように低いところにも吹いています。しかも風は地上5mほどから下は、地表の抵抗を受けて弱まります。そんな風の性質の、上空ではなく低いところの優しささえも表現しているように感じました。


    土    紬彩

   土はかげろうのように
   儚いものではなく
   湖のように深遠な生命力をたたえて
   人の暮らしに
   爽やかな風を運ぶ

   土の中からにじみでてくる油性分
   と
   手の中から放出する憧れの
   想いと情熱が
   融合して
   土との共有のなかで潤う

 こちらは陶芸家としての視線だと思いますが、陶芸の体験教室にさえ行ったことのない身としては「土はかげろうのように/儚いものではな」いということに、まず驚かされます。「土の中からにじみでてくる油性分」というのは、言われてみれば納得しますが、それが「手の中から放出する憧れ」と「融合して」陶器が出来るのだと知らされると、本当に驚きますね。経験豊富な陶芸家だから、あるいは詩人にして陶芸家だから出てくる言葉なのかもしれません。美術館に行っても陶芸の分野は避けて通る方だったのですが、この作品を拝見してちょっと考え方を改めました。今度はそんな意識で鑑賞してみます。




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