きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

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1990.5.6
長野・五竜とおみ上空

2004.1.14(水)

 昼前に現場から呼出しが掛かって、行ってみました。ちょっとした製品上のトラブルが発生したが製品として使えるかどうかという判断を求められたものです。私が見た限りではかなり黒に近い灰色でしたが、一応ダメと伝えました。その判断を出すと、実は現場は大変なんです。もちろん原因を特定して是正処置をするわけなんですけど、装置産業ですから製造機を止めることは大変なロスと人的なエネルギーを消費します。止められる装置はまだいい方で、私たちの職場の装置はそう簡単には止められません。止めるだけで数時間を要し、再開には数十時間、場合によっては数日かかってしまいます。製鉄の溶鉱炉に近いと考えてもらえば良いでしょう。

 ですから、装置を止めないで是正処置をせざるを得ません。帰宅前に現場に行ったら、午前中よりトラブルの度合は大分弱くなって、製品としては問題ないレベルに達していました。後を託して帰ってきましたけど、三交替の現場は今夜は大変だろうなと思います。以前私がいた職場は、そういう場合、現場に張り付いて徹夜してでも直しましたが、今は立場上それが出来ません。多少の助言をして見守るしかないのです。悔しいけど自分ひとりで会社が回っているわけではありません。明日の朝の吉報を待ちます。



  詩誌『孔雀船』63号
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2004.1.10
東京都国分寺市
孔雀船詩社・望月苑巳氏 発行
700円
 

    こおろぎ    川上明日夫

  
まよなか
   深夜
   蟋蟀が いっぴき つめたい蒲団に はいってきた。
   朝まで一緒に 泣いた。
   もう 紅葉が きていた。
   ぽうぽうと 露草が ひろがっている。
   断崖のような ところ
   きのうまで
   空が 青青と 生きていた場所だった。

 表面的には秋になって「蟋蟀」が死んでしまう季節になった、「生きていた」「空が」死んでしまう季節になったということを言っているにすぎませんが、奥の深い作品だと思います。「朝まで一緒に 泣いた。」というフレーズが良く効いていて、この作品を支える1本目の柱になっています。もう1本は「空が 青青と 生きていた場所だった。」というフレーズですね。短い作品ですが一瞬を切り取って人生の深さを教えてくれる佳作だと思いました。



  隔月刊詩誌RIVIERE72号
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2004.1.15
大阪府堺市
横田英子氏 発行
500円
 

    文字の憂愁    後 恵子

   アマゾンジャングルの奥地で
   二人しか話されていない言語
   今六〇〇〇余りある世界の言語が
   二十一世紀の終わりには一〇〇〇以下になる危惧
   言語が密になり
   意思疎通が簡単になるだろうか
   文化も宗教も密になり
   考えにギャップがなくなるだろうか

   子どもだった二人だけが生き残った
   なぜ一族が絶滅したのかもわからない
   二人は毎日矢をつくって天井には矢がいっぱい
   でも彼らは狩りができない

   子どものときに
   周りの大人たちが狩りの矢をつくっているのを
   見ていたにちがいない
   でも狩りの仕方は教わらなかった
   彼らの民族がなぜ二人以外いなくなったのか
   知らない民族がやって来ると
   目をぎょろっと動かせ神経質な怯えた顔

   こんな奥地の状態をテレビのカメラが映し出す
   二人だけしかわからない言葉で
   二人だけしかいない民族で
   周りの人たちが消えた理由を聞き出せず
   民族も言葉も滅んでいく

   書き言葉は重要な文化伝達手段
   当時の人たちの生活や生き方も
   話言葉は消えるが書き物は残る

   むかしは高ドイツ語の南部と
   北部の低ドイツ語が話されていたが
   書き物があった高ドイツ語が標準語になった

   何千年もたつと文字の解読は難しい
   手がかりをつかむ頭脳に希望をたくして
   フランスのシャンポリオンが
   古代エジプトのヒエログリフを解読した

 「二人しか話されていない言語」というのも衝撃的な話ですが、「書き言葉」「話言葉」の違いについても考えさせられる作品です。「高ドイツ語」「低ドイツ語」という分類は知りませんでしたけど、納得させられるものがあります。
 もとは「テレビのカメラが映し出」した情報かもしれませんが、これだけ詩的に高められたなら作品としても充分満足できる仕上がりだと思います。




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