きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

  900506.JPG  
 
 
 
1990.5.6
長野・五竜とおみ上空

2004.1.16(金)

 昨夜は予定外の呑み会になってしまって、今日は予定の呑み会。2晩続けるのはキツイかなと思いましたが、結局予定通り(^^; 行き着けの居酒屋で、この辺ではその店にしかない岐阜の「三千盛」を楽しみました。二合で切り上げましたけど、うまい酒です。明日は休みだし、月曜日も休暇を採りましたから大船に乗った気分です。いただいた本への感想はちょっと遅れてしまいますけどゴメンナサイ。休日にまとめてアップします。



  愛敬浩一氏著現代詩における大橋政人
    gendaishi ni okeru ohashi masato.JPG    
 
 
 
東国叢書U(9)
2003.11.20
群馬県伊勢崎市
紙鳶社刊
非売品
 

 1996年から1999年まで、主に詩誌『東国』に書かれた大橋政人論≠集めた著作です。題名の通り大橋政人氏に焦点を合せた詩人論・作品論ですから、大橋政人研究には欠かせない1冊と言えましょう。そればかりか一般の詩論としての価値も高いと思います。特に冒頭の「詩の技術について」は、初期の大橋政人作品の中で多用された同一語の繰り返しという手法についての解説が主で、大橋詩の鑑賞には重要な視点であるばかりでなく、実作上の大きなヒントも含んでいるように思います。

 「 <ノノヒロ> とは何か」の章では、俗を乗り越える視点の転換について、「閉ざされた回路」では、作品は追い詰められると主題に逃げるという指摘や固有名詞の扱いについて、「場面の選択性」の章では連が詩≠成立させているのだという指摘などなど、今までおぼろげに判っていたつもりでいたものが見事に解明されています。大橋政人詩という具体作を通して己の書いたものを検証できるようにも思います。ベテランも新人も紐解いてみる必要があるでしょうね。ご一読を薦めます。



  個人誌詩はがき 散葉集』6号
    shi hagaki 6.JPG    
 
2004.1.10
広島市佐伯区
楽詩社・津田てるお氏 発行
非売品
 

    福の神

   不思議な人物に会った
   いや 外見は普通のスーツの老人

   外は冬の小雨 電車にのり たまたまその人の前の
   席に座って しばらくあって
   何んとなく その眼の前の人物が 気になり…

   まず 右手首にキラリ 金の輪
   ついで気がついたは 左薬指の金の指輪
   であった じつに美しく光っていたんである
   (あれはメッキの色ではない)
   ほおう…!

   年格好はぼくぐらい ながら
   人相がやわらかく 白っぽく
   (それとなく拝見した全体がちがう どこか)
   ついで発見したは その立派な大きな耳!

   なにか不可思議な思いに捕われていたが
   最期にチラリ 金の腕時計
   ムムム 指輪の小さい白い石の光といい
   男にして かくなる美装とは

   世の中は広いというが
   こんなに おっとり(福)の男姿は初めて
   他の どなたもお気にならなかったか

   尊敬の目礼 らしきものをして
   ぼくは下車したんである

 現代の「福の神」と謂うのでしょうか、「人相がやわらかく 白っぽく」という観察が見事だと思います。「その立派な大きな耳!」を「発見」しての連想かもしれませんが、「福の神」とは謂いえて妙ですね。そんな「不思議な人物」に「他の どなたもお気」づきにならなかったけど「ぼく」はちゃんと見抜いて「尊敬の目礼」をしたのですから、「ぼく」の観察力も面目躍如というものでしょう。「外見は普通のスーツの老人」は、実は「ぼく」の照り返しではないか、とも感じた作品です。



  詩誌『墓地』50号
    bochi 50.JPG    
 
2004.1.15
栃木県宇都宮市
矢口方 山本十四尾氏 発行
非売品
 

    きんぴらごぼう    矢口志津江

   味見させて

   この歯ごたえ あなたの理屈みたいで
   私好みだわ
   ピリッと辛いのも
   あなたのシャープさに似ている

   ごま油を使ったから風味がいい
   七味とうがらしの分量もちょうど適当で

   男の料理姿を後から眺めるって
   ベッドの中と同じ愉悦感がある
   生のための食と性と眠の営み

   きんぴらごぼうの次は
   何を作って下さるの?

 B2大の和紙一枚の珍しい詩誌です。50部しか発行していないようですから、一般にはほとんど目にすることができないでしょうね。貴重な詩誌をいただきました。全体を画面でも紹介したかったのですが、スキャナーがA4までしか対応していなくて止む無く4分の1のみの紹介となっております。ご了承ください。

 紹介した作品の方は、ヤラレタという感じですね。「あなたの理屈みたいで」と言われると、やはり男は女性の足元にも及ばないのではないかと感じ入ってしまいます。「次は/何を作って下さるの?」とにこやかに言われた日には、つくづく仏さんの掌の上の孫悟空を連想してしまいます。男として「男の料理姿を後から眺める」と悲哀になってしまいますけど、女性からは「愉悦感」なんですね。大きな溝を感じていまいますが、その溝が必要なんだろうなと思った作品です。




   back(1月の部屋へ戻る)

   
home