きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

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1990.5.6
長野・五竜とおみ上空

2004.1.29(木)

 TDKの対応に好感

 今日はタイトル付きです。日本詩人クラブの現代詩研究会で、東京に出てこられない会員のため、会場でEメールの交信しながら意見交換してみようということになりました。電話回線は使えそうもないので携帯電話でやってみることにしました。数年前に購入したTDKの「携帯電話アダプタカード」を引っ張り出して、さて、ソフトをCD-ROMから読み込もうとしたところ、読めない。あれ?と思ってよく見ると、鏡面が白く汚れていました。触ってみるとベトッとした感じです。水やお湯で洗ってみても変化ありませんでした。

 しょうがないからTDKのHPに入ってソフトをダウンロードしようとしましたら、何と今年1月にそういう事例が報告されていると書いてあるではありませんか! ああ、これかと思いましたね。問題があった人はEメールかFax、電話で連絡くれと書いてありましたけど、Eメールは会員登録をしないといけないので面倒ですからFaxをしました。回答を願ったのは次の3点。
(1) 汚れを取るにはどうしたらいいの?
  水やお湯では駄目だったから有機溶剤を使ってもいい?
(2) ソフトをダウンロードしたいけど、そういうサイトはある?
(3) 他に回復させる方法があったら教えて!

 電話したけど誰も出なかったのでFaxした、と回答が来ましたね。その内容は、
(1) 有機溶剤は絶対に駄目! 市販のOAクリーナーならいいよ。
(2) ソフト(アプリケーション)のダウンロードは他社のライセンス上からやってない。ドライバソフトなら可。
(3) CD-ROMの代替品を送るから、それ使って!
  ついでに、HPの汚れの記事はCD-Rブランクのことで、あんたの言ってるものじゃないよ!

 この対応は素晴らしいですね。まず、早く対応していること。昨夜22時頃にFax入れたんですけど、返信Faxは今日の13時13分の到着でした。おそらく午前中に電話を寄こして、誰も出なかったからFaxの文案を作ったのでしょう。関係部署なり上司と協議して午前中はオシマイ。昼メシが終わってすぐにFax送信したのかな、と想像しています。
 文章もしっかりしています。質問の(1)〜(3)に対して、ちゃんと(1)〜(3)で応えていて理解しやすいです。
 そして、何と言っても(3)の対応がいいですね。こちらとしては、もう保証期間がとっくに過ぎているんだから、「市販のOAクリーナー」を教えてもらっただけでも良かったと思っていたので、これは嬉しかったですね。「あんたの言ってるものじゃないよ!」と断った上での対応ですからね、感激!

 私も仕事で逆の立場に立たされることが多いんです。相手は一般の個人ではなく企業なんですが、対応のし方は同じです。素早く回答すること、データ取りなどで時間が掛かる時はその旨をまず伝えること。相手が困っているんだから、その立場で考えること。クレームは製品の品質向上の上で役立つと捉えること。今回の(2)のように出来ないことは出来ないとはっきり言うこと。間違えてもあんたの使い方が悪いなんて言わないこと(^^;
 そんな原則を自分なりに持っていますけど、それにちゃんと合致してますね。代替品が来たら参考のためトラブった製品を送ろうと思っています。このHPで書いたことも知らせるつもりです。



  詩・小説・エッセー誌『青い花』44号
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2003.3.20
東京都東村山市
丸地 守氏 発行
500円
 

    銀の箱    布川 鴇

   不可視の宇宙の一角に
   神技のように
   一瞬のうちに設計された未来都市
   その屹立した街区は
   どんな幻想を巻き込むことだろう

   メタリックに輝きわたる高層建築群
   破壊と喪失に無縁を装う夢空間
   知という知が集められた堅固な外郭が
   新しい破壊を待ち続けている

   廃墟は
   築き上げた魂たちの呪詛を地の底に鎮ませ
   幾万年もの歴史を物語る
   未来都市よ
   おまえはまだ明けぬ空を仰ぎ
   昂然と何を謳おうとするのか

   明日になったら
   幸運と手を組んだ人々が銀の箱に乗って
   夢見がちにその国に運ばれていくだろう
   運ばれないものが不運だとは
   誰が言い切れよう

   (世界の夜は寒さが増すばかり……)
      
はびこ
    悪が蔓延ればいい都市になるのだと
    叫ぶ声が聞こえてくる
    粉雪舞えば温かくなるのだと

   緑の風 緑の樹々 緑の大地
   地上のあらゆるものを超えた薄明の彼方
   無重力の静けさの中
   どの朝も謎の文化に向かって明けていく

 人類は「銀の箱に乗って」どこへ向って行こうとしているのでしょうか。「謎の文化に向かって」いるのかもしれません。「悪が蔓延ればいい都市になる」というのが反語ではなく、そのまま受け取れそうなのが怖いですね。そういう現実感があります。「運ばれないものが不運だとは」「言い切れ」ないかもしれませんが、さりとて遺された者が運が良かったとも言えないかもしれません。「幾万年もの歴史」の果てに結局滅びるしかないのか、それが「宇宙」のため「世界」のためには良いことなのかもしれないなと考え込んでしまいました。
 スケールの大きな作品だと思います。



  詩・小説・エッセー誌『青い花』45号
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2003.7.20
東京都東村山市
丸地 守氏 発行
500円
 

    G氏邸の透視図    綾部健二

   いかにもその形態は
   剛体というばかりではなく
   柔軟体を含む構造物である

   両端単純支持の梁やシェル
   四辺単純支持の矩形板
   ヒンジあるいはジョイントによる結合部など
   バルーンフレーム工法と呼ばれているものに近い

   壁は白 屋根は黄
   地下にボイラー室を持つ二階建ての迷宮
   ぼくはゆっくりと分け登っていく

   内臓がみえるかと思われるほどの
   ひとすじの青いひかりを受けて
   ぼくもかつてのG氏のように
   ゆっくりと静かに舞いたいのだ

   八十余年という歳月に磨き込まれた
   ラジエーター付きの主寝室と浴室
   そしてAおよびB寝室

   澄み渡ってくる夜空一面の
   ほんとうの星座たち
   ぼくがひそかに通り抜けてきた
   心とからだの相互干渉の数々

   けれどもG氏邸の窓硝子には
   まださびしい灰色に映っているのだろうか
   ぼくのかたわらの女の細い眉は

 「バルーンフレーム工法と呼ばれているものに近い」「G氏邸」の話だけかと思ったら、どうやら違うようです。「ぼくのかたわらの女」をどう解釈≠キるか、それが鍵のようです。「G氏邸」が「女」の喩か、「女」が「G氏邸」の喩なのか、その双方を何かの喩と捉える必要があるかもしれません。気になるフレーズは「ぼくがひそかに通り抜けてきた/心とからだの相互干渉の数々」ですね。タイトルで「透視図」と言っているのですから、「G氏」とは実は「ぼく」なのではないかと思います。あるいは「G氏」の分身としての「ぼく」。
 別の見方をすると、「内臓がみえるかと思われるほどの/ひとすじの青いひかり」、「ラジエーター付きの主寝室と浴室」などのフレーズから原子炉、あるいは放射線そのものを考えることもできそうです。「ぼくがひそかに通り抜けてきた」というフレーズも違う捉え方になってきますね。
 その他の読み方もできます。作者の意図とはズレてしまうかもしれませんが、それはそれで良いのではないかと思います。そこが詩のおもしろいところでもあるのでしょう。



  詩・小説・エッセー誌『青い花』46号
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2003.12.10
東京都東村山市
丸地 守氏 発行
500円
 

    彩のとき    神山暁美

   白は罪な色だよ
   滴を纏ったグラスをかたむけ
   男がつぶやく
   まっ白いコートがほしいって
   女房のやつが言ったんだ
   男はつづける

   男体山のふもとで摘まれた二輪草が
   枯れてはなんねえと必死で生きてた時代だ
   彩りのないくらしの中
   白い色はつらかったなあ
   俺はこげ茶のコートを買ってやった
   この色の方が似合うよって

   いろとりどりのショーウインドー
   わたしはこの冬
   迷わず選んだ白いコートを着ている
   逃避 孤独 哀しい過去
   白い色の「いろ占い」
   男の妻と似ているのだろうか

   ひかえめな女だが
   それ以来ものを欲しがったことがない
   それが つい最近
   翡翠の指環がほしいって
   こんどは探してやろうと思うんだ
   ふるさとの山より彩やかな緑色の

   寄り添った氷塊がかるく啼いて
   琥珀の液がわたしのくちびるを咬む
   からだじゅうに熱い色が
   ゆっくりと広がってゆく
   良い歳をかさねてきている男との
   明日へとつづく薄紅のひととき

 「良い歳をかさねてきている男」の人間像が良く出ていると思います。「枯れてはなんねえと必死で生きてた時代」というフレーズも効果的ですね。「わたし」の人間像を「迷わず選んだ白いコートを着ている」程度で抑えているのも成功していると云えるでしょう。
 「白い色の「いろ占い」」が「逃避 孤独 哀しい過去」とは知りませんでしたが、無理なく納得できます。無垢や潔白の裏返しなのかもしれません。大人の「明日へとつづく薄紅のひととき」を楽しんだ作品です。




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