きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

  900506.JPG  
 
 
 
1990.5.6
長野・五竜とおみ上空

2004.1.31(土)

 今日で1月もオシマイ。この1ヵ月は何年かぶりでスッキリした気持でした。HPの更新がひどいときで2カ月、定常状態で2週間の遅れが当り前だったのに、この1ヵ月はそれがありませんでした。遅れても1日ですからね、送られてくる本も手ぐすね引いて待っている状態でした(^^; 思えば暮から正月にかけての1週間に渡る一日16時間労働が効いたのです。あれで挽回しました。仕事は溜めないこと。せめて今年いっぱいはそんな状態で行きたいものです。



  詩誌『驅動』41号
    kudo 41.JPG    
 
 
 
 
2004.1.31
東京都大田区
驅動社・飯島幸子氏 発行
350円
 

    病院へ    周田幹雄

   目覚時計に促されて 渋々起き上がる
   月に一度の診察日で 朝飯は抜きだ
   洗面所の鏡に 病人の顔が曝け出される
   だから 髭は剃らない

   病院が近づくと 病人の顔に近づいていく
   病院へ行くたびに 血を採られ 尿を採られ
   脳や心臓や胃や腸を撮られ
   病院へ行くたびに 検査項目が増え
   検査項目が増えるたびに 病名が増えていく
   病名が増えると 忽ち薬の種類が増えていく
   食事は抜いても 食後の服薬が抜けない習性が抜けなくて
   病人は 死ぬまで薬を飲み続けるのか
   病人だらけの 病人の間に挟まれて 延々と
   自分の名前が呼ばれるのを待ち続ける
   診察室に入ると
   医師だって 病気寸前の形相だ
   コンピューターが計算するので
   会計だけは 素早く弾き出される
   知り合いの女性が 羨ましそうに言ったことがある
    配偶者が死ぬと一年くらい病院通いをしたりするけど
    女って みんな凄く綺麗になるのよね
   私は 病院の廊下を胸を張って大股で歩き出す
   そうだよ 男だって 死ぬまで男でいたいのだが

   帰宅すると
   疲れきった父親の姿を見て
   末娘が嘆いた
    健康でないと 病院へ行けないネ

 笑いの底に物事の本質が見える、周田幹雄詩の面目躍如たる作品だと思います。「検査項目が増えるたびに 病名が増えていく」「食事は抜いても 食後の服薬が抜けない習性が抜けなくて」などのフレーズは、言いえて妙ですね。「コンピューターが計算するので/会計だけは 素早く弾き出される」というのはまさに医は算術というところでしょうか。
 圧巻はやはり最終連です。「健康でないと 病院へ行けないネ」という「末娘」の言葉は物事の本質≠フ最たるものだと思います。作品鑑賞の楽しみを堪能させてもらった作品です。



  季刊詩誌『天山牧歌』62号
    tenzan bokka 62.JPG    
 
 
 
 
2004.1.1
北九州市八幡西区
『天山牧歌』社・秋吉久紀夫氏 発行
非売品
 

    ポプラの並木    秋吉久紀夫

   タクラマカン砂漠というからには、
   見渡すかぎり、どこもここも砂礫地帯や砂丘ばかりが、
   延々とひろがっており、夏は灼熱の太陽が支配し、
   冬は空を飛ぶ一羽の鳥もかよわぬ極寒の気候で、
   よもや、人間の住める土地ではないと思っていたが。

   来てみて、自分の甘さに気がついた。
   ながい道程
(みちのり)を、出る汗もないほどに歩きとおして、
   まったく川に出会わない、だから水はないはずなのに、
   乾ききった空気、だから生き物は居ないはずなのに、
   一歩オアシスに足を踏み入れた途端、まるで別天地。

   どこから湧いて来るのか、せせらぎは音をたて、
   水鳥が泳ぎ、水稲は風にたゆたい、合歓
(ねむ)が花咲き、
   無花果
(いちじく)が葡萄が、それに桃、梨、林檎(りんご)が樹技にたわわ。
   タクシー代わりのロバは鈴を鳴らして路上を行き交い、
   茶色のチャドルで顔を覆った女性たちが闊歩する。@

   どうしてオアシスがこんな豊かな天国なのかと、
   よくよく考えてみて気がついた。ポプラのお陰だと。
   わたしたちは砂漠に点在するどのオアシスに入るにも、
   道の両側に槍のような樹幹を天高く突き出し整然と、
   護衛する儀伏兵のポプラ並木に出会わないことはない。

   この樹木はポプラ科に属しているけれど、
   本名は胡楊
(こよう)という楊柳科の落葉喬木で、その最大の特徴は、
   大量の塩分を含有する砂漠の土壌でも繁茂可能ということだ。
   ただし忘れてはならない。どのオアシスもこのポプラが、
   一本一本人間の手によってながい年月植林されて来たことを。

   @チャドル。新彊ウイグル自治区のイスラム教徒の女性は、親兄弟と夫以外の男性には顔をみせない。
   そのために顔を覆っている、その黒や茶色などのスカーフのこと。

 「護衛する儀伏兵のポプラ並木」というのは写真やTVで見たことがありますが、「オアシスがこんな豊かな天国」である理由が「ポプラのお陰だ」ったとは知りませんでした。やはり現地に行って「よくよく考えてみて」「護衛する儀伏兵のポプラ並木に出会わないことはない」ことに「気がつ」かないと出てこない言葉なのかもしれませんね。それにしても「大量の塩分を含有する砂漠の土壌でも繁茂可能ということ」はすごいことです。それにも増して「一本一本人間の手によってながい年月植林されて来た」というのもすごいことですね。人間の可能性を感じさせてくれた作品です。




   back(1月の部屋へ戻る)

   
home