きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

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モンガラカワハギ
新井克彦画
 

2004.2.24(火)

 帰宅してメールを見たら日本ペンクラブ電子文藝館委員長から校正をせよとの指示がありました。作品は志賀葉子さんという会員の「露草」という短編小説でした。現代の農民の生活を描いています。抑えた中にもほとばしるものがあって、感銘しました。同人誌に発表した作品のようで、読めという指示がなければ恐らく一生接することのないものでしょう。役得と言いますか、校正は大変ですけどそういうメリットがあります。五ヶ所ほどミスを見つけてメーリングリストで返信しました。
 日本ペンクラブの電子文藝館はそういう埋もれた秀作も発掘しています。このHPにもリンクしていますので是非ご一読を!



  詩誌『左庭』創刊号
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2004.1.25
京都市右京区
山口賀代子氏 発行
500円
 

    海市    山口賀代子

   北の町には
   春になると蜃気楼がたつ町がある
   春霞がつつみ
   心もからだもあわあわしはじめるころ
   水平線のかなたに幻のような都市が浮かぶ

   蜃気楼がたつ町にはわかれた男がすんでいる
   その町には魚がたくさんとれ
   光るイカがとれるのだと男は言い
   抱きあうからだからかすかに魚の臭いがした

   若い時代はあわあわと過ぎる
   魚の臭いに感じた嫌悪も
   きみに会わなければ都落ちすることもなかったと
   自嘲気味に言う男の言葉に吹き出した日も
   小娘は常に残忍だということも

   テレビの画面でみる砂漠の蜃気楼は
   砂のかなたにあおあおとした湖が漣たち
   飢えたヌーの群れがよろよろと
   むかっていくさまをうつしだしている

   ひとも蜃気楼にむかってあるく
   あわあわした町の
   あわあわした水にむかって

   わかれた男とはいちどだけ会ったことがある
   東山の谷崎潤一郎の「寂」と刻まれた墓石の前で
   ひさしぶりにであった男のからだからはハイライトの甘い匂いがした
   あわあわした時代にわたしをつつんでいたものの匂いがした

            ※海市(かいし)…春の蜃気楼

 「海市
(かいし)…春の蜃気楼)」が「わたし」と「わかれた男」との関係を象徴している作品だと思います。「若い時代はあわあわと過ぎる」というフレーズから私もつい青春時代を思い出してしまいました。もちろん「小娘は常に残忍だということも」思い出しながら…。
 「ひさしぶりにであった男のからだからはハイライトの甘い匂いがした」というフレーズも効果的ですね。青春というものはどこかで「匂い」とつながっているようにも思います。また「ひとも蜃気楼にむかってあるく」というのは過去のことではなく現在、将来でもあるように思いました。一見「あわあわ」とした作品のように見えますが、奥は深いのかもしれませんね。




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