きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

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モンガラカワハギ
新井克彦画
 

2004.2.29(日)

 宇都宮のホテルで7時に目覚め、あっ、酔ってるなと感じてもう一度寝て、気が付いたら8時を過ぎていました。ホテルで朝食を採って、東北新幹線、東海道新幹線と乗り継いで小田原に着いたのが12時。当初の予定ではローカル線で会社まで行って、13時には会社に入って仕事をしようと思っていましたけど、ダウン。ローカル線の伊豆箱根鉄道・大雄山線に乗っている途中で気持悪くなってきました。情けない、完璧な二日酔いです。会社の駐車場に止めておいて車で帰宅しました(二日酔いだったけど、たぶん酒気帯び運転にはなっていなかったと思います)。
 気持悪かったけど昼メシだけはちゃんと採って、寝てしまいました。あーぁ、情けない。喰意地が張ってるのも、あれしきの酒で二日酔いになるのも情けない。反省しきりの一日でした。



  小倉勢以氏詩集『揺れる家』
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日本未来派叢書W
2004.3.3
東京都練馬区
日本未来派刊
1700円+税
 

    揺れる家

   大通りに面した二階建てのアパートは いつも車輌の騒
   音と排気ガスに悩まされている 深夜に大型のトラック
   が通ると地震のような地響きがして 眠りの中の夢さえ
   ひどく揺れるのだった それというのも古い建物を俄か
   に改造しただけなので 粗末なことこの上もない

   二階へあがる階段下の三帖が私の住空間だった 気がつ
   くと周囲の部屋の住人は 渋谷あたりへ働きに出る女性
   ばかりで あのひとたちは強引な客引きをするバーで
   稼いでいるのよ と管理人のおばさんが教えてくれたが
   彼女たちは思いのほかに親切だった

   朝早くからお勤め大変ね などと子供扱いにされたが
   昭和二十年代の東京の住宅事情は甚だ悪く 安アパート
   の台所には各自が所有する一口ガスコンロが並んでいて
   トイレから水道光熱費に至るまですべてが共同体という
   明け暮れだった

   いってまいりますと手を振って 夜の蝶が飛び立つ日暮
   れどき あとは呑みすぎた肉体をタクシーに詰め込んで
   賑やかに帰ってくる 薄い扉を激しく叩き起こされて
   隣の部屋へ連れ出される夜もある その度に聞かされる
   のは虚実取り交ぜた夢の生い立ちと リアルな男の品定
   めだった

   ある晩 満州帰りの姐御が大声であばれだした どうや
   ら失恋したらしい 役人が女を騙してどうするのさ と
   壁を足蹴にして倒れこんだ するとそのとき地響きがし
   てトラックが突っ走ってきたのだ びりびりとガラス窓
   が振動して軒下の造作が一段と激しく身震いをしたかと
   思うと 酔いどれの女たちを抱えたまま ずるずると夜
   更けの大通りへと迫り出して行った

 著者の第3詩集で、タイトルポエムを紹介してみました。私が生れた頃の「昭和二十年代の東京の住宅事情」と「渋谷あたりへ働きに出る女性」の生態がよく描けていると思います。「管理人のおばさん」も一言の登場ながら存在感がありますね。著者の人間を見る眼の確かさが筆に現れているからと云えましょう。
 最終連はちょっと幻想めいていますが効果的だと思います。戦後の一時を見事に描いた作品だと思いました。




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