きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

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モンガラカワハギ
新井克彦画
 

2004.3.28(日)

 終日、読書で過しました。早乙女貢著『続 会津士魂』全8巻のうち5巻まで読み終わって、現在6巻目。至福の時間です。読むのは書くより易しいですからね(^^;



  詩誌『錨地』41号
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2004.3.31
北海道苫小牧市
錨地詩会・入谷寿一氏 発行
500円
 

    縹色の夜    宮脇惇子

   風の呪縛からほどかれた雪の原
   月光は地上に投網を打っている
   丸ごと捕えられている梢の幾何模様
(アラベスク)
   散りしかれた銀の粒子
   さざなみのように野は光り
   少女はその光景に立ちつくす

   はるかに続いている足跡の陰影
   すでにこの道を行った人がいる
   どれだけの人が通りすぎたのか
   その先には裾の見えない闇がある

   歩き出すと
   後ろから影を踏む気配がする
   ひた ひた
   ひた ひた
   ふりむいても 誰もいない

   縹色の明るい夜
   遠い祖先の日に見た
   泉下の風景も
   銀をふるわせながら黙していた
   きっとこのように

   その凍えた少女の瞳に
   月はどこまでも寄り添った
   晧晧と輝いて
   王女アリアドネの糸のように一途に

   時を経たいま
   その瞳から
   銀の記憶をとりだしてみる
   心凍えた日には

 浅学にして判らない言葉が二つありました。広辞苑によると「縹色」は薄い藍色。花色≠ニあり、「アリアドネ」は〔神〕ギリシア神話で、クレタ王ミノスの娘。怪物退治のテセウスに糸を与えて、ラビュリントス(迷宮)から脱出する道を教えた。そこから、難問を解く方法を「アリアドネの糸」という≠ニあります。
 それらを念頭に置かなくても美しい詩だと思います。特に第1連が素晴らしい。私事で恐縮ですが昭和30年代の初頭に1年間だけ芦別に住んだことがあります。その小学校3年生の冬に体験した夜は、まさに「月光は地上に投網を打っている/丸ごと捕えられている梢の幾何模様/散りしかれた銀の粒子/さざなみのように野は光」っていて、この世ならぬ荘厳さを感じたものです。記憶に蘇る薄い藍色=u縹色」の世界でした。
 作品の上では最終連・最終行の「心凍えた日には」というフレーズが活きていると思います。時たま私も「銀の記憶をとりだして」いることに気付かされた作品です。




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