きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

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モンガラカワハギ
新井克彦画
 

2004.3.29(月)

 ここ2週間は毎日17時半前に帰っていたのですが、今日は久しぶりに18時過ぎまで働きました。大きな問題も一段落して、帰れるときは帰っておこうと意識していた結果ですけど、今日はさすがにちょっと忙しかったですね。会議の合間に別の会議の資料作りで、もっと遅くまで働いてもよかったんですが、あまりペースを上げてもいけないのでほどほどにしておきました。明日はそうはいかないかな。



  季刊詩とエッセイ誌『焔』67号
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2004.3.3
横浜市西区
福田正夫詩の会 発行
1000円
 

    寝床で    上林忠夫

   かぜで寝込む
   いつもより熱が二度ほど高い
   咳も出てきた
   一歳の娘は実家に預け
   私はひたすら寝こむ

   妻は仕事に出た
   聴力検査の防音室の空気が私を包む
   何も聞こえてこない
   ひたすら寝こむ

   母の見舞いを二日あけることに罪悪感のつのった小さ
   な胸もどこへやら
   イランも貧しい子どもたちもオゾン層も
   全てがどこかにすっ飛んで行った
   かぜはいいものだ
   寝返って かけ布団に身を包みなおす
   夢うつつ かぜに感謝する

   髭は死んでも伸びるらしい
   防音室の空気一点より言葉がきこえた
   撫でるとざらざらした感触
   生と死を行き来戻りつしながら
   両手で確かめる生

   髭はこっそり伸びるらしい
   私は何度も顔を撫でた
   じわじわと 髭が私の顔をのっとり
   私の人格を作り変えていくようだ
   かぜは髭の仕事を助け
   私をマヒさせていく
   それは仕方なく かえって
   いいことなのかもしれない

 「イランも貧しい子どもたちもオゾン層も/全てがどこかにすっ飛んで行った/かぜはいいものだ」というフレーズに惹かれます。風邪をひいたり病気をしたりすると、それらを考えることから解放されますからね。自他共に解放を認められる。いつも考えていなくてはいけないことなんですけど、やっぱり疲れる。どこかで息抜きしたくなる。それは病気のときだ。病気だったら大威張りで解放される。ちょっと後ろ向きかもしれませんけど、その気持は理解できます。
 「それは仕方なく かえって/いいことなのかもしれない」というフレーズにも惹かれます。達観したと言うのでしょうか、これもよく判りますね。「寝床で」の自由、そんなことを感じた作品です。



  詩誌『1/2』16号
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2004.4.1
東京都中央区
詩誌『1/2』発行所・近野十志夫氏 発行
非売品
 

    きっちょむさん    枕木一平

   きっちょむさんを知っていますか
   日本民話のなかの主人公のひとりです

   きっちょむさんは
   お百姓で 正直で お人よしで
   ひとから見れば
   馬鹿なほど
   こっけいなことばかりした

   ある日
   馬のアオをつれて
   山にたき木を取りに行く
   帰り道
   たき木を背負った馬の
   苦しそうなのを見て
   かわいそうに思ったきっちょむさん
   馬のたき木を自分で背負った

   そこまではよかった
   ところが
   たき木を背負ったきっちょむさんは
   馬にまたがってしまった
   ――アオよ たき木は重かったろう
     たき木はわたしが背負うから
     おまえはわたしを乗せて
     家まで帰っておくれ

   馬はさらに
   苦しそうにあえぎながら帰って行った
   最近
   どこかで
   それによく似た話を聞いた

   武器は運びません
   武器弾薬は運びません
   そう絶叫しながら
   武器を携帯した兵員なら運びます と
   自衛隊のイラク派遣をめぐる
   国会答弁での総理の発言である

   きっちょむさんのお話に
   実によく似ているのだが
   笑うに 笑えぬ 話である
   むしろ
   はげしいいきどおり
   ひとをバカにした話ではないか

 この譬えはよく判りました。「自衛隊のイラク派遣をめぐる/国会答弁での総理の発言」はどこかおかしいと思っていたのですが、うまく説明できませんでした。「きっちょむさんのお話に/実によく似ている」んですね。でも、やはり「笑うに 笑えぬ 話」です。もちろん「ひとをバカにした話」だと思います。
 「イラク派遣」に反対する詩はかなりの作品を拝見していますが、こういう形は初めてです。インパクトもあるので手法としても良いのではないでしょうか。ところで「きっちょむ」って焼酎の銘柄であったと思います。呑むたびに思い出すでしょうね。




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