きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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小田原・御幸が浜にて |
1979年 |
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2004.4.4(日)
恒例の自治会祭典が予定されていましたが、雨で中止になりました。私の役割は山車の曳き手だったので、気楽に参加して振舞い酒だけはしっかりいただこうと思っていたのですけど、残念(^^;
一日中いただいた本を読んで過しました。雨の休日を読書で過すというのは、意外に好きなんです。田舎ですからもともと静かなんですが、いつにも増して静かです。静か過ぎてうたた寝までした休日です。
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2004.3.20 |
京都市左京区 |
ステップ詩話会・河野仁昭氏
発行 |
800円 |
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花折れ 司 由衣
折りとった桜の小枝を
ガラスコップに挿してしげしげと見入る
と 花びら一輪はらりと落ちて
水面に浮かんだ
雄蘂の蘂粉の紅黄色
花心の奥の膨れた子房
薄紅さす花唇はハートの形に似て
寸分の乱れもない五弁の花びら
そのこまやかな綾模様は
桜木の雄々しい姿から窺い知ることはできない
つい先ほど 大型書店の三階から
その後寄り道した高島屋のガラス窓からも
そして通り抜けてきた歩道橋からも眺めた
境谷中通りの桜並木
その爛漫の花に見惚れて思わず手折った一枝
それでもガラスコップに浮かんだ
花の潔さは
誰をも咎めず 厭わず
時の経過を その仕打ちを受け入れている
ふと思いが過る
私もあの雄々しい桜木の
奢りの春を謳歌していた花の一輪だったんだと
誰かに手折られなくても
離別のときはかならず来ることを
最終連がよく効いている作品だと思います。「奢りの春を謳歌していた花の一輪だった」というフレーズもいいのですが「誰かに手折られなくても/離別のときはかならず来る」は達観した思いが伝わってきて、共感します。
別の視点ですが「そのこまやかな綾模様は/桜木の雄々しい姿から窺い知ることはできない」という感覚も見過ごせないと思っています。「雄々しい姿」と共生する「こまやかな綾模様」は、敏感な詩人でなければ気付かないものでしょう。作者の繊細さと大胆さの双方を感じた作品です。
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2004.3.1 |
京都府八幡市 |
現代京都詩話会・武村雄一氏
代表 |
500円 |
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うそ時計 牧田久末
私はうそ時計
一時間すすんでいるの
だから皆な私を見るとびっくりするの
朝なんかそれはもう大騒ぎ
泣き出す子供だってあるくらい
いったいなにを慌ててるんだろう
たったの一時間
空を見上げながら散歩していた人だって
おっとなんて走り出す
ある昼下がり
何を食べようかなって歩いていた人が
私を見たとたん
ワーッと駆け出して戦争にいっちゃった
てあたりしだいに食べだしたんだって
彼のオフィスでは
銀行強盗だって時間に遅れたら入れてもらえない
夜なんてすごい
おねえさんは
お風呂から飛び出すわ
おとうさんは
歯ブラシをつっこんだままあごはねけるわで
たった一時間に
つまづいて
ころんじゃう人の多いこと・
この町の地盤が
斜めにスリップしたような騒ぎで
退職者は出るは
重大なミスは方々で見つかり
悪事は発覚し
大臣は金庫から尻を出す
私はうそ時計
葬儀屋は死人を慌てさせ
ホテルでは花嫁が走る
ボーイは料理をかたづけ
客はナプキンを落とし
教室では生徒が一瞬静まり
会議は即刻中断して
いねむりの男たちは
にわかに活気づいて
町に消えていく
私はうそ時計
だれもうそに気づかない
みんなミレニアムのカウントダウンに夢中だけど
いくら大声張り上げたって
人間につかまるような私じゃないわ
「たったの一時間」でどんなに「びっくりする」か、おもしろい視点の作品ですね。「ミレニアムのカウントダウンに夢中」だった頃に発想を得たものだと思いますが、こんな作品は見たことがありません。作者の柔軟な思考に脱帽です。
「一時間すすん」だら「皆な」はどうなるか、その観察力・想像力も的を射ていて説得力があります。「いねむりの男たちは/にわかに活気づいて/町に消えていく」なんて、まるでオレのことだなと思ってしまいました(^^; 「銀行強盗だって時間に遅れたら入れてもらえない」も言い得て妙です。いかに時間に縛られた生活をしているか、笑ったあとで考え込んでしまった作品です。
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