きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

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小田原・御幸が浜にて
1979年
 
 

2004.4.7(水)

 お得意様から求められているチェックシートの原案作成で終日過しました。私の会社でも逆の立場でやるんですが、原料や部材を納入してくれている会社に対して、品質上や安全性のデータを求めます。場合によっては監査に出向きます。それを今回は弊社が求められまして、私が窓口となりました。質問表にはい・いいえで答えるのですけど、言い切るためには裏づけが必要です。そのための書面を集めて、原理や理論を説明できるように文献にあたったりインターネットで調べたりしました。

 こんな時インターネットはつくづく便利だと思います。特に経済産業省のHPは役立ちます。大学の研究室の論文なども参考になりますね。そのお返しに拙HPが役立てばいいのですが…。理系と文系の違いはありますから一概には言えないのですが、少しは役立っているかな? 日本の現代詩の今を報じているHPはまだまだ数少ないでしょう。たまには外国からも日本文学研究者が訪れているようです。



  月刊詩誌『現代詩図鑑』第2巻4号
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2004.4.1
東京都大田区
ダニエル社 発行
300円
 

 
    うぬぼれ男    嵯峨恵子
(さが けいこ)

   電話をかける時 男は
   たいてい名のらない
   俺 俺だ
   何だ 俺の名前も知らないのか
   もぐりだな お前
   会社の宴会では女の子たちの集まりの中に
   割って入っては記念写真に納まる
   俺にはお前が要る
   と言うところ
   お前には俺でなきゃだめだ
   と言ってのける
   男の親しい男たちの手柄話を聞かせても
   あくびしながら
   明日の方角を見て
   鼻歌を歌っている
   俺は女のより好みなんかしないからな
   雨の日には
   傘を広げれば
   空から女たちが降ってくると思い
   晴れた日には
   汗ばんだ腕の中で
   女たちはとろけるものと信じている
   男が耳元でささやく
   お前が死んでも
   若い女に面倒を見てもらうから
   安心しろよ
   自信過剰の男にも弱点はある
   いつだって突然やって来る女
   女の範疇をはみ出してくる
   自分を生んだ女の前で
   男は無口だ
   子供のふりをするか
   さっさと逃げ出すか
   母親と妻に挟まれて
   男は頭の中で寝そべる女たちの数を
   ゆっくり数え始める

 私も相当「うぬぼれ」が強いので、耳が痛い作品です。「雨の日には/傘を広げれば/空から女たちが降ってくると思い/晴れた日には/汗ばんだ腕の中で/女たちはとろけるものと信じている」のは事実です(^^;
 「自分を生んだ女の前で/男は無口だ」もよく理解できますね。「母親」だけは「女の範疇をはみ出して」います。耳が痛いけど、世の男の本質をピシリと突いた作品で、爽快です。



  詩誌『木々』29号
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2004.4.25
東京都小平市
木々の会・鈴木 亨氏 発行
700円
 

    林の中で    石渡あおい

   夕暮の繁茂する林は
   水のにおいに満ちている

   軽く地面を蹴れば
   浮き上がっていけそうな
   空気の密度

   乳色の残照の中を
   蚊柱が雑木の梢にのぼっていく

   ぶつかり合い
   飛び回りながら
   たしかな円柱形をたもって――

   深く息をすいこんで
   わたしも このしめった林をぬけ
   茂みのうえに頭を出し

   かすかに尾を引く
   遠来の彗星を
   射落とそうか

 言葉の感覚が鋭く、心地よい気分で拝読した作品です。「夕暮の繁茂」「乳色の残照」などが特にいいですね。連の構成も、第2連が最終連に掛かっていて、第5連も最終連に掛かって、ちょっと複雑だと思うのですが、それが作品の効果を高めているように思います。第5連の「茂みのうえに頭を出し」の解釈はいろいろあるでしょうが、あまり深く考えない方が良いかもしれません。素直に「しめった林をぬけ」たら「茂み」に出た、と読んでみました。
 「軽く地面を蹴れば/浮き上がっていけそうな/空気の密度」という詩句がこの作品のポイントだと思います。ここから軽やかさが詩全体に波及していると云えるでしょうね。詩らしい詩、だと思いました。



  詩誌『烈風圏』第二期3号
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2004.3.20
栃木県下都賀郡藤岡町
烈風圏の会・本郷武夫氏 発行
非売品
 

    初雪    たの しずえ

   ああ
   うまい うまい
   生き返った と
   大地が言っているようだ

   働いて
   働いて
   やっと 夕餉を迎え
   一気に飲み干す 一杯のビールのように

   舞い降りた雪は
   田や畑の
   五臓六腑に浸み渡る

 拝読して、ハッとしました。「田や畑」にとって雪は嫌われ者、その兆しの「初雪」ですから、マイナスのイメージしか無かったのですが、見方を変えると確かに「生き返った と」「大地」は言うのかもしれません。一面的な見方しか出来ていなかった己を恥じた次第です。「五臓六腑に浸み渡る」「舞い降りた雪」を満喫している「田や畑」を思いやることができる作者に敬服した作品です。




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