きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

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小田原・御幸が浜にて
1979年
 
 

2004.4.28(水)

 今週は木曜日が休日で、世間ではそこからGWになるということもあって、ちょっと浮付いてしまいました。谷間の平日に休暇を取ると最大で11日の連休になるんですね。私にそんな予定はなく暦通りに休みますから、4日の連休があるに過ぎないし出かける予定もないんですけど、それでも何となく浮かれています。
 そんな訳でアッという間に3日間が過ぎてしまいました。毎日6時前に帰宅して、いただいた本を読んで、酒呑んで寝るだけの生活ですけど、なぜか充実した気分になっています。本を読むことが楽しいからでしょうね。そんな楽しい本を今日も紹介しましょう!



  隔月刊誌『原詩人通信』114号
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2004.4
東京都品川区
原詩人社・井之川 巨氏 発行
200円
 

    13歳は一人前    山田塊也

   新中学生のみなさん 入学おめでとう !
   13歳といえば日本では 精神年齢は一人前だよ
   戦後の飢えと欠乏の時代に
   君が代平和憲法と 大麻取締法を授けてくれた
   占領軍のマッカーサー将軍は 引退後
   記者団の質問に ズバリ答えたもんだ
   「ジャパニーズの精神年齢は サーティーン」

   これには日本中が腹を立て ついに
   エコノミック・アニマルに 大成長したのだが
   あれから半世紀を経て ジャパニーズの国は
   アメリカの言いなりに 平和憲法無視し
   アジア同胞の戦場に またしても兵を出して
   マッカーサーの見解の正しさを証明して見せた
   みなさんの成人前には 徴兵検査が待つでしょう

   さあ 13歳といえば 精神年齢は一人前
   日本では 大麻を吸ってはいけないよ !

 先日、村上龍の『13歳のハローワーク』を読んだばかりということもあって、気になった作品です。「マッカーサー将軍」の「ジャパニーズの精神年齢は サーティーン」というのは有名な言葉ですが「君が代平和憲法と」ともに「大麻取締法を授けてくれた」とは知りませんでした。それで最終連の「日本では 大麻を吸ってはいけないよ !」というフレーズが生きてくるんですね。
 「みなさんの成人前には 徴兵検査が待つでしょう」というのは私も同じ認識です。「あれから半世紀を経て」築き上げてきたものがこの2、3年で次々と壊されている思いをしています。時代を見事に切り取った作品だと思いました。



  松沢 桃氏詩集『風の航跡』
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1999.9.9
東京都新宿区
土曜美術社出版販売刊
1800円+税
 

    彼をめぐる風説

   生まれおちた瞬間
(とき)から
   約束されている 彼とのラブ・ゲーム
   彼は呼吸とともにあり
   希望や夢に沈黙の影をなげかける

   どんなにあらがおうと
   いずれ彼がたちはだかり 命運をつげ
   彼のもとにおもむく

   性の区別もなく
   貧富や幼老の差もみとめられず
   肌の色 時代 国さえもかかわりなく
   戦時平時のちがいも さらに無関係

   僥倖のようにあらわれる
   人類のあけぼのより ひとに寄り添うてきた
   生きとし生けるもの すべてに

   暗黒によこたわり
   苦しみをいやす使者ともなり
   いみきらわれ
   また もとめのぞまれる

   彼を見たものは跫音を聴いたものは いない
   が ふれれば
   組織はこわれ たちまち腐敗がおそう

   疑似体験はかなわず
   彼を知ることは
   とわのわかれを代償とする
   一様におとずれる 例外のない公平無比な終焉

   ねむりの先になにがあるのか
   こたえのない畏れ
   想像のものがたりが氾濫するばかり

   彼は日常にひそみ 不意に波風をたてる
   時間
(とき)を止め 越え
   誕生と蘇生をささえる なみだの意思
   ひとの非日常こそ 彼そのもの

 1999年に出版された著者の第1詩集です。発行者は土曜美術社出版販売の加藤幾惠さんで、なつかしい人の名を見ました。
 作品は肉親・近親の死を扱ったものが多く、著者は私と同年代ということもあって、同じような経験をしてきたのだなと思います。そんな作品の底に流れている思いを表現したのが、紹介した詩だろうと思います。「ひとの非日常こそ 彼そのもの」である「彼」は、もちろん死≠ナす。「疑似体験はかなわず/彼を知ることは/とわのわかれを代償とする」からこそ「想像のものがたりが氾濫するばかり」なのでしょう。加藤幾惠さんを始め、何人もの詩人たちが「彼のもとにおもむ」いています。いずれ私も「彼」と出会わねばなりません。そんな覚悟を改めてした作品・詩集です。



  松沢 桃氏詩集『予感』
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2001.7.7
東京都豊島区
書肆山田刊
2000円+税
 

    不眠症

   うらみつらみの眠り袋
   ひっさげて
   今夜も
   たれぞの寝所に
   悪夢となってゆこうか

   目玉ぎょろり
   肉のついた腰まわり
   いつのまにやら
   母親そっくりの声音
   からだつき

   あれこれ文句つけ
   わめいてみても
   一向にみえてこない
   近未来の図
   不自由は増すばかり

   疲れた神経をほぐす
   夜のウォーキング
   ゆったりの入浴
   寝酒にかわる読書
   有効打はみなつかった

   羊は何匹とあらわれ
   消えていった
   冥界に降る雪のごとく
   闇のつまったスクリーンを
   逆さに泳いでみる

 文字通り「不眠症」を扱った作品ですが、第1連からおもしろいですね。「たれぞの寝所に/悪夢となってゆこうか」なんて、おいおい!放っておいてくれよ!と言いたくなりますけど、ぐっすり眠っているヤツを叩き起したく気はよく判ります。私も「不眠症」気味で、「寝酒」と「読書」が「有効打」です。それもぶっ倒れるほど呑んで、失神して寝る、これが最良だと信じています。
 ですから「羊は何匹とあらわれ/消えていった」というフレーズは判ります。「冥界に降る雪のごとく/闇のつまったスクリーンを/逆さに泳いでみる」というフレーズは詩句としてもおもしろいと思います。「不眠症」の詩は意外と少なくて、その意味でも貴重な作品と云えましょう。




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