きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

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「クモガクレ」
Calumia godeffroyi
カワアナゴ科
 

2004.5.21(金)

 会社での私の仕事はいろいろありますが、最も大事なものに承認≠ェあります。製品として出荷して良いかどうかの最終判断をするわけです。お客さまから証明を求められたら、私の個人名と押印で証明書を発行しています。もちろん最終責任は会社の上層部にあることになりますけど、末端といいますか最前線の責任者という位置付けですね。
 そんな承認業務に今日から新しい製品が加わりました。1ヵ月半の試行期間が過ぎて、正式に資格認定が降りました。お客さまの手元に届く品種まで考えると100は下らないものになります。この1ヵ月半でそれなりに勉強したつもりですけど、まだまだ不十分だろうなと我ながら思います。試験成績書が私の手元に届くまでに最低二人の眼を通ってきますから、ミスの確率は低いはずです。それでも人間のやることですからね、落し穴がないか、考えながら仕事を進めようと思っています。一眼レフのカメラを使う人には、不可欠ではないけど必要な製品です。セミプロを自認する人なら必ず持っているでしょう。今後ともご愛用ください。



  個人詩誌『空想カフェ』10号
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2004.5.20
東京都品川区
堀内みちこ氏 発行
非売品

    カット・キャップ    堀内みちこ

   両側がカットされている野球帽でも
   あの人の頭に乗れば威張っていられる

   昨日 風が悪戯して車道に落とした
   本物の襤褸になるところでした

   風を睨みつけてやった
   ボクを愛してくれている人の頭を
   優しく包んでいるのに

   机の端に無造作に置かれていると
   砂浜に打ち上げられた水母の干物
   野球帽でもすねるのです

 「野球帽」を擬人化した作品ですが、「ボク」の存在感がありますね。「威張っていられる」「風を睨みつけてやった」「優しく包んでいる」などの詩句にそれが現れていると思います。極めつけは最終連の「野球帽でもすねるのです」というフレーズでしょう。「野球帽」がまるで「あの人」の恋人のようです。それが狙いの作品だと思いました。



  詩誌『新・現代詩』13号
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2004.6.1
横浜市港南区
知加書房・出海渓也氏 発行
850円
 

    アーミッシュの友人    矢口以文

   あなたの家には電気がない
   ラジオもテレビも電話もない
   凝ったデザインの華奢な家具もない
   目立つのは頑丈なオークのテーブルと椅子だ

   「単調で退屈な生活だけさ」と
   出ていった人たちは決めつけがちだけれども
   あなたの顔は安らかだ
   ほとんど毎日 農場で体を動かしている

   過度の教育は毒だという
   教会の規則に従って
   あなたは8年しか学校に行かなかったけれども
   自然についての知識は該博だ

   いつ どこに 何を植えるのか
   いつ どこに どれだけの肥料を与えるのか
   いつ どのように 果樹の枝を摘むのか
   いつ どんな小鳥がやってくるのか 良く知っている

   日曜日には家族全員が馬車に乗って
   仲間の家で行なわれる教会に出席する
   300年間寸分違わぬメロディで賛美歌を歌い
   寸分違わぬ言葉の説教を聞く 私には理解不能の言葉

   兵役には決してつかない それが認められないなら
   認められる国に移住するか 又は牢に入る
   そんなあなたたちには武器で守るべき国はない
   そのようにして300年間生きてきた

   今日は一日の仕事を少し早く終え 幼い娘と一緒に
   あなたはゆったり 裏の野山を歩く
   藪からウィチティ・ウィチティの囀りが飛びだしてくる
   空からチチチチチのにわか雨が落ちてくる

   あなたはいちいち立ち止まって
   藪の中を覗き込んだり 腰を伸ばして見上げたり
   しゃがみこんでは足元にじっくり触れてみたりする
   そして最後に夕食のための山菜を摘んで勇んで帰る

 特集「アメリカ?!」の中の一作です。載せられている作品の多くはアメリカのイラク戦争に反対する詩、先住民・アメリカインディアンへの思いを綴った詩、WASPのアメリカを冷静に見つめる詩などでしたが、その中で紹介したこの作品は「アーミッシュ」を扱っており、異色だと思います。
 「アーミッシュ」は知る人ぞ知る存在のようです。私も最近知ったばかりで、その乏しい知識から見てですが作品に描かれている世界は事実だろうと思います。アメリカという超大国の中でこのような生活をするというのは並大抵ではないと思いますが、そういう「アーミッシュ」が存在できるというのもまたアメリカの大きさなのかもしれません。
 アメリカという国の政治のみならず、そこに暮す人々の国民性にまで踏み込んだ作品の多い今回の特集は、教えられるものが多くありました。



  文芸誌『海嶺』14号
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2004.4.22
千葉県銚子市
グループわれもこう・蜂須賀和子氏 発行
600円
 

    タイムマシーン    柴崎真弓

   車に揺られて窓から見えたのは
   昔住んでいた街並だった

   門をくぐり足を運んだ小学校は
   三つ並んだ校庭の鉄棒も
   横に一本ある桜の木も
   あの日のように変わらず
   優しく包み込む

   モップを片手に微笑んでいる
   セピア色した瞳の私に
   問いかけてみる

   今でもあの日の君は
   生きているかい

 最終連が生きている作品ですね。どんな場面であっても「今でもあの日の君は/生きているかい」というフレーズには普遍性があると思います。普遍性があるからこそ、いくつになってもこの言葉の重みを考えなければならないのかもしれません。短い詩ですが、そんな大きなものを含んだ作品と云えましょう。「タイムマシーン」は自分の胸の中にある、ということも考えさせられた作品です。




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