きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

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「クモガクレ」
Calumia godeffroyi
カワアナゴ科
 

2004.5.31(月)

 苦手な仕事のひとつに業務目標の作成があります。今後半年はこういう目標を樹てて、いつまでに何処まで達成するかと申告するものです。原理的にはその達成度によって給料が決まるということになりますけど、目標に向ってまっしぐら、というのは不得意なんですね。行き当たりばったり、その場任せで生きてきましたから、戸惑いがあります。まあ、そうは云っても会社の仕事の一部ですからやりますし、部下にも提出を求めますけど、私がそんな調子ですから、どうも迫力に欠けます。

 しかし半年経って振り返ると、それはそれで意義を感じます。毎期毎期、当初の目標とは違う課題に振りまわされていることもよく判ります。達成しているのは半分ぐらいですかね。本来の目標とはほど遠いけど、それでも着実に実績を上げていることも判ります。見方を変えれば自己満足に過ぎないのでしょうが、まあいいかぁ。



  詩マガジンPO113号
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2004.5.20
大阪市北区
竹林館・水口洋治氏 発行
840円
 

    動詞
      ――わが娘テモロンヘ
    
Of Verbs                ‥ ‥
      ――
To My Daughter,Temuluun

               B・ボヤンヘシグ 作
         ボルジギン・N・オルトナスト 訳

   動詞たちの喧嘩を
   名詞が不思議そうにみていた
   副詞が仲直りさせるためその中に割って入り
   溶ける
   形容詞が扇動する

   分節してみた
   句読点をいれてみた
   括弧で括ってみた
   辞書に裁判してみた
   教授に告訴してみた
   講師へ追放してみた
   ぼくを解釈しようと
   いつも主語になろうと
   母音調和に訂正をいれようと
   ぼくの身体へ
   猛烈に襲いかかってきた

   突然目覚めると
   家の中の景色がすべて
   未来形でおかれていた

 特集「東洋・アジア」の中の「内モンゴルの現代詩」として紹介されていました。おもしろい作品ですね。「動詞」「名詞」「副詞」「形容詞」と、普段何気なく遣っている言葉の関係性が見事に表現されていると思います。第2連は文や詩を創る上での格闘がおもしろくて納得できる形で書かれています。第3連はサブタイトルの「――わが娘テモロンヘ」と繋がっていて格別の味を出していると云えましょう。作者は日本への留学経験もあるようで、1962年生まれのまだ若い詩人でモンゴルの注目株だそうです。いい詩人を紹介してもらったと思います。

 サブタイトルの「
Temuluun」のうち、lの前後のuは頭に‥が付いた文字です。表現できないのでずいぶん離れた位置ですが‥を付けておきました。ご了承ください。
 また、本号では拙詩「2月26日木曜日」も載せていただきました。改めてお礼申し上げます。



  詩誌しけんきゅう142号
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2004.6.1
香川県高松市
しけんきゅう社 発行
350円
 

    雨    かわむら みどり

   雨が降る
   ただ 雨が降る
   地面のなかにすいこまれ 地中深く
   水の道へと たどりつくために

   見知らぬ国の乾燥地帯で
   一年に一週間だけ降る 雨があるという
   生きものたちは 一年分の命の火を燃やす
   大急ぎで生きて また眠りにはいる
   一年に一度の祭りの日
   雨は神のように その地に降り立つ

   雨が降る
   いつもの雨だ
   しとしとと心の中で昔をたて
   何も語らぬ 水の行列
   なじみぶかい
   眠りを誘う つぶやく歌のような一日
   塗りこまれたグレーの 墨絵のような窓の外
   樹木は色を失い 手をひろげて
   その水を受けとめる
   植物だけが いつも変らず
   歓喜と賞賛をこめて
   雨を迎える
   何億年も変らぬ そのしきたり

   火星には かつて海があったという
   人類がそこにいないのは
   雨が天使の役をおりたからだが
   その日から 神も仏も不在のままだ
   宇宙の創造主たちは 気まぐれらしい

   雨の日は静かだ
   街の騒音もずっとやさしく耳に届く
   眠ってしまう前に 考えなければならない
   エメラルドのような サファイアのような この一日のことを

   こんな時間を持てない人のことを 国のことを
   それでも からだがとけていくように
   考えることのない国へと落ちていく
   その時わたしは ただ雨を愛していた

 「眠りを誘う つぶやく歌のような一日」の「雨の日」というのは好きなんですが、そんな情緒的な浅さと違ってこの作品は奥が深いと思います。「大急ぎで生きて また眠りにはいる」「生きものたち」への視線もあたたかですし「雨は神のように その地に降り立つ」という認識も素晴らしいですね。「火星」への言及も今の時代らしい新鮮さがあります。最終連も巧くまとめていて、特に「その時わたしは ただ雨を愛していた」という最終行のフレーズはこの詩人の本質が表出したのではないかと思います。雨の日曜日に、私も少しは深いところまで考えて過してみたいものだと思った作品です。




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