きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

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「クモガクレ」
Calumia godeffroyi
カワアナゴ科
 

2004.6.6(日)

 個人詩誌『Quake』を発行している奥野祐子さんからライブの誘いがあって、四谷まで行ってみました。『四谷コタン』というライブ専門の店ですから、知る人ぞ知る、なんでしょうね。30人も入れるかな? 小さな店で、雰囲気は抜群でしたよ。バーボンも呑めたしね(^^;
 出演は4人。奥野さんは何とトリで、他の人が5曲しか歌わないのに10曲も歌って、おっ、偉いんだと思わず感激してしまいました。
 最初の「えびのから」さんは若い女性で、ピアノの弾き語り。以前、看護師さんをやっていたそうで「今日はどうなさいましたか?」という歌が印象的でした。看護師さんが患者さんに容態を聞くという設定ですが、何と手話付き。始まる前に簡単な手話の講習?があって、歌い始めると観客も手話で同調している風景は、今の若者だなと感心しました。私も職場に聾唖者がいますので多少の手話は知っていましたから、合せましたけどリズムに付いていけなない(^^; 九州から東京まで(だったかな?)自転車旅行をするほどのガンバリ屋さんです。

 二人目の本多正春さんはハーモニカとギターの弾き語り。若い男性で、好感の持てる人でした。曲名は判りませんがシューマイを食べる歌がユニークで、頭の柔らかさを感じましたね。3人目の男性「たなかまさひと」さんはピアノの弾き語りで、4曲目が良かった。あとでご本人に聞いたら「神の国 本当のこと」というんだそうですが、現代詩としても通用しそうに思いました。

 いよいよトリは奥野祐子さん。ピアノ弾き語り。9曲+アンコールで「ボーイフレンド」「Alcholic Woman」「ふるさと」「Smile」なんて曲が良かったです。特に「Smile」は写真を巡る歌ですから、仕事柄ジーンと来ましたね。弊社のTV−CMで写真を見直そうという趣旨のものがありますが、それに使えそうです。

 久しぶりに若い人たちの歌に接して、気持のいい夜でした。残念なのは19時開演ということ。22時には店を出ないと午前様になっちゃうので終ってすぐに帰ってしまい、ライブ後の奥野さんとは話ができませんでした。写真を撮らなかったのも残念。撮っても良かったのかもしれないけど、誰も撮っていなかったし初めての店でしたからね、遠慮しちゃいました。でも、また行きたいと思っています。



  詩と批評誌POETICA39号
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2004.5.30
東京都豊島区
中島 登氏 発行
500円
 

    遅れてきた詩人    中島 登

   何も食べないで細がれたひとりの詩人がいた
   彼の川には橋が架かっていないので
   遠回りをしてきたという
   平地を辿らずに坂道ばかりを選んで歩いた

   通学するのに靴がないのでいつも草履か下駄をはいていた
   ポケットには小銭もなかった
   かわりに雲雀の雛が一羽ピーピー啼いていた
   電車はいつも一番前か一番後の車輌に乗った

   鼻緒が切れると片足は裸足のまま歩いた
   肉屋の裏の倉庫から動物の骨の匂いがしていた
   鳥屋のかみさんは店番をしながら嘴で喋っていた

   そんな裏通りを野良犬姿のひとりの詩人が歩いていた
   神社の横の古本屋で買ったボードレールが鞄の中にあった
   今日も遅れて電車の一番尻尾のところに座った

 詩人は芸術の最先端であるべき、という見方もありますが、ここでは「遅れてきた詩人」をうたっていて新鮮味がありますね。まるで山之口獏を見ているような気になってきます。「平地を辿らずに坂道ばかりを選んで歩いた」「今日も遅れて電車の一番尻尾のところに座った」などのフレーズに詩人のひとつの理想を見る思いがしますね。
 今号では拙詩「川」も載せていただきました。破格の扱いで恐縮です。お礼申し上げます。



  隔月刊詩誌ONL73号
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2004.5.30
高知県中村市
山本 衞氏 発行
350円
 

    ハルウララ    西森 茂

   ハルウララは
   今日も敗れた

   それでも観衆は
   惜しみない歓声を贈ってくれたが
   悲しんでいいのか
   喜んで いいのか
   わからない

   サラブレッドの端くれとしては
   語るに落ちる話だが
   そのうちに
   奇跡的な恩返しの勝ちを得たいと思っている

   それまではなんとしても生きのびて
   走り続けるつもりだ
   サラブレッドの
   誇りにかけて・・・

 作者の西森茂氏は、このHPでも紹介した詩集『母の形見』を4月に出版しています。特老ホームにお住まいの障害者です。「ハルウララ」は有名になったからご存知でしょうが高知競馬の「サラブレッド」ですね。「今日も敗れた」「サラブレッドの端くれ」を見ている作者の眼のあたたかさが感じられる作品です。「それまではなんとしても生きのびて/走り続けるつもり」なのは「ハルウララ」であり作者であり、そして私たち自身なのではないかと思います。「サラブレッドの/誇りにかけて・・・」、そして詩人としての「誇りにかけて・・・」。考えさせられる作品です。



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