きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

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「クモガクレ」
Calumia godeffroyi
カワアナゴ科
 

2004.6.13(日)

 午後から秦野市の紙芝居喫茶「アリキアの街」に行ってきました。日本朗読文化協会会員の伊馬匣子(いまくしげこ)さんの朗読会がありました。朗読のあとは紙芝居になって、こちらもおもしろかったですね。もう私には馴染みになった「かっぱのめだま」、それから絵本作家だった父上・伊馬春部作の紙芝居「三ちゃん」と「神々の満足」が上演されました。「神々の満足」は終戦直後の作と思われ、DDTが出てきて驚きました。私と同年代の方が多かったので知っている人もいましたが、子供のときにDDTを頭から振りかけられたのです。しらみ退治ですね。現在では発癌性物資ということで製造も禁止されていると思います。

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 写真は「かっぱのめだま」を演じたときのもので、左が伊馬匣子さん、右がオーナーの小坂裕子さんです。拍子木を打って、それから紙芝居が始まります。
 話は変りますが、この喫茶店では古本も売って、貸本もやっています。その中に北條民雄の『いのちの初夜』がありました。昭和11年12月3日創元社発行の初版本で、ハンセン病文学(ライ病文学)の記念碑的小説です。しかしこれは売れない、貸本もできない、店でのみ読んでくれということでしたから、行くたびに少しずつ読んでいました。それが今日は売ってくれると言うのです! もちろん買いましたよ、驚くほど安い値段で。私の本箱の中では『荒地詩集』がそれに匹敵するでしょうか、いい本を入手しました。



  文芸誌『蠻』137号
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2004.5.31
埼玉県所沢市
秦健一郎氏 発行
非売品
 

    「白」の話    浜野茂則

   白は無にして最も饒舌なり
   白という字は「言う」とも「申す」とも言う
   白に一を足せば百にもなる
   キャンバスの白は無にして無限大
   花嫁の白無垢
   純白のウエディングドレス
   出発、始まりの時でもある
   神の降臨する神宮の見たての地も白石一色である
   その白の存在を――白の無を、無限大を万民が認めるのはなぜなのか
   それは言いにくいほど根の深い所で人は了解しているのだろう
   私たちが最終的に持っている色は白だからだ
   漢和辞典日く――「白」は頭蓋骨を真っすぐ上から見た象形の謂なりと
   そしてヨーロッパのある教会の地下墓地には頭蓋骨がびっしりと菩薩のように 並べら
   れ、その頭蓋骨にこう書いてあるという
   「いずれお前もこうなる」と
   白は無にして最も饒舌なり

 「白は無にして最も饒舌なり」というフレーズで詩の前後を挟んで、それは何故かを描いていますが、なかなか面白い点を突いていると思います。「白に一を足せば百にもなる」「花嫁の白無垢」は一般的な見方でしょうが、「白という字は『言う』とも『申す』とも言う」「『白』は頭蓋骨を真っすぐ上から見た象形の謂なり」「私たちが最終的に持っている色は白だからだ」というのは初めて眼にしました。特に「私たちが最終的に持っている色は白」というのは「それは言いにくいほど根の深い所で人は了解しているのだろう」ことに起因しているというのが新鮮に感じました。うまく説明できませんけど何となく判りますね。詩人の先見性というものでしょうか、感じるところのある作品です。



  文芸誌『らぴす』20号
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2004.5.20
岡山県岡山市
アルル書店 発行
700円
 

 第48回日本エッセイストクラブ賞受賞者の鶴ケ谷真一さんが客員分として寄稿した「木の橋の記憶」をおもしろく拝見しました。太鼓橋を渡ったことや木橋の浮き出た木目を見ていた子供のころの記憶から始まって、江戸時代の日本橋で伝わっていた「上(のぼ)る三枚目」へと論考が続きます。
 私も初めて知ったのですが、江戸から上方へ旅する者は日本橋の三枚目の板を踏んで旅立つという風習があったそうです。その由来がなかなか読ませます。橋の架け替えで出た三枚目の板を持ち帰って大黒を刻ませた者が大成功して、そこから「上る三枚目」という風習が起きたと解説されていますが、そにに至るまでは川柳を調べたり西鶴の『日本永代蔵』を読んだりと、かなり緻密な文献調査があったようです。
 エッセイというと何か現代の話ではないといけないような気がしていましたが、そう範囲を狭める必要はなさそうですね。材を採るのは古典でも構わないのだとよく判りました。もちろん作者は江戸から現代へと話を展開させて、結果的には現代を見ています。その展開の仕方も見事で、さすがは賞を受けるだけの力量と文体をお持ちだと感じたエッセイでした。




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