きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

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「クモガクレ」
Calumia godeffroyi
カワアナゴ科
 

2004.6.28(月)

 水島美津江さんの個人誌『波』に月末までに原稿を出すように言われていて、ギリギリ、今日仕上がりました。明朝投函して何とか間に合いそうです。
 以前からあたためていた構想があって、ようやく実を結んだかな、と思っています。私の書斎の目の前は蜜柑畑で、そこに時々雉がやってきます。それを書きたかったのです。近所の人に言わせると雉だけでなく鹿や猪も出るそうなんですが、残念ながら私はまだお眼に掛っていません。それらを見たらまた何か構想が出てくるかもしれませんけど、今は雉ですね。

 『波』はいつ出るのかなぁ? 6月末原稿締切ということは、9月末か10月始めというところでしょうか。眼を通す機会のある方は是非お読みください。そして笑い飛ばしてもらえれば幸いです(^^;



  会報栃木県詩人協会会報16号
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2004.6.25
栃木県芳賀郡茂木町
栃木県詩人協会・森羅一氏 発行
非売品
 

    光る庭園    本郷武夫

   庭が光っている
   庭の体全体が光っていて
   私はその入り口で止まってしまった
   入れなかった
   その時
   庭の言葉が私の中から聞こえてきた
   「いいのですよ」
   入ってもいいと言っていた
   庭は
   私の視線と 遠い天空からの光を見ていた
   庭の中に入ったとき
   私は色彩の溢れた木になっていた

           二〇〇四年二月二十五日記

 この作品の意味するところはかなり深いと思います。「私」は人間として「光る庭園」を見ているという構成ですが、木の種であるという見方もできます。「入ってもいいと言」われて入ると、「私は色彩の溢れた木になっていた」のですから、そういう見方も可能です。「光る庭園」の「色彩の溢れた木」は、宗教のテーゼであったり詩人の園の詩人であったり、または天国での個という認識も出来るでしょう。それらを読者が読者なりで読み解くのがこの作品の持ち味だと思います。「庭の体全体が光っていて」と書かれていますので庭を擬人法として捉えることも出来ましょう。短い詩篇の中に刺激する言葉の多い作品だと思いました。

 今号では綾部健二さんが拙HPの紹介をしてくれていました。好意的に書いていただいて感謝しています。結びでは「新しい酒は新しい皮袋に……」の諺が使われていて、まさに私の意図しているところを正確に汲み取っていただいたと思います。ありがとうございました。



  柳原省三氏詩集『海賊海域』
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2004.6.15
東京都新宿区
土曜美術社出版販売刊
2000円+税
 

    海賊海域

   むかしこの海域では
   ベトナム難民を乗せた小型船が
   海賊どもの高速ボートに襲われて
   随分たくさん犠牲になったそうじゃ
   貴金属や宝石や
   ありったけの財産を身につけて
   自らの国を逃れ出た人々は
   命ごとみんな奪われて
   海に沈められてしまったそうじゃ
   若い女は戦利品に連れて行かれたが
   いずれは殺されたり
   病気になって果てたのだろう
   おいそんなスケベたらしい顔をするな
   まったくおまえは嫌なやつだ
   おれの船も一回きりだが
   百数十人の難民を拾ってしまった
   確かにきれいな若い娘もちらほらいたよ
   女性に優しいフィリピンクルーどもが
   ひっくるめてみんなにとても親切にしていた
   しかしおれは瞬時に食べ尽くされた
   船の食糧で
   空き腹を抱えた船がどこまで走れるか
   そんなことばかりを気にしていたさ

 著者は高知の詩誌『ONL』の同人で、外航船エンジニアです。『ONL』で毎号作品を拝見していますが、この詩集はもう3冊目なんですね。私は船員の現代詩人を他に知りません。その意味でも珍しい詩人ですけど、今年55歳の定年を迎えるようです。陸に上がってますます詩活動が盛んになるのではないかと密かに期待しています。ちなみに1949年生で私と同年生まれです。

 紹介した作品は詩集のタイトルポエムですが、陸から離れられない私たちには衝撃的な内容だと思います。「おれの船も一回きりだが/百数十人の難民を拾ってしまった」ことも驚きですが、「瞬時に食べ尽くされた/船の食糧で/空き腹を抱えた船がどこまで走れるか」は確かに現実的な問題だろうと納得しました。貨物船の船員はおそらく数十人、それの十倍近い難民を収容するのですから…。私たちの知らない世界をうたい上げた稀有の詩集と思いました。




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