きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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「モンガラ カワハギ」 |
新井克彦画 |
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2004.7.6(火)
日本ペンクラブの電子文藝館委員会に出席してきました。今回は主に「反戦・反核の部屋」について議論しました。反戦・反核作品という定義が難しいという話です。ある作品が反戦・反核作品として持ち込まれましたが却下したという経緯が委員長より説明され、それについての議論でしたけど、受け止め方でまったく正反対になってしまうものが確かにあります。
私はその一例としてフォークソングの「自衛隊に入ろう」という歌を披露しました。高田渡という私と同年配のフォークソング歌手が現在でもライブを中心に活動しています。日本現代詩人会の詩祭に出演したり、TVでライブが紹介されたりしていますからご存知の方も多いかもしれませんね。彼が1970年代に歌った歌のひとつに「自衛隊に入ろう」があります。男の中の男はみんな、自衛隊に入って花と咲く≠ニいう歌詞がありまして、私たちはこれを反自衛隊の歌ととらえていました。いわば褒め殺しの歌詞と承知していたわけです。
ところがある日、自衛隊の関係者から高田渡にこの歌を売ってくれと話があったそうです。自衛官募集の宣伝に使いたい…。もちろん彼は断りましたけど、反戦・反核作品として多くの示唆を与えたと私は思っていました。どちらでも採れる作品を「反戦・反核の部屋」に載せるのはやはり間違いでしょう。本来の意図から外れて、場合によっては文藝館やペンクラブが攻撃される口実となりかねません。その意味でも今回の委員長の措置は妥当なものだったと思います。それにしても文芸作品を扱う上での難しさを考えさせられた委員会でした。
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2004.7.16 |
川崎市宮前区 |
パープルの会・高村昌憲氏
発行 |
500円 |
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生涯酒 斎藤
正月はお餅を食べてお屠蘇を飲んだ
桃の節句は柿のお相伴で白酒を覚え
端午の節句は ちまきにお神酒
ゆっくりと心を清めて大器は晩成
青春時代は花見酒 中年過ぎての暑気払い
婚礼 お通夜 月見に 忘年 送別会
節分は鬼と清めて夜っぴての悪霊を祓い
一文字 タンを食いきり 春がきた
「生涯酒」は生涯さけ≠ニ読むべきだろうと思います。子供の頃からいかに呑んできたかが判り、酒豪の面目躍如というところでしょうか。「ゆっくりと心を清めて大器は晩成」というのは、いかにも作者らしくて好感が持てます。「節分は鬼と清めて」という詩句も作者の度量の広さを感じさせます。最終行で「春がきた」と置き、最初の「正月は…」へつなげていくあたりにも構成の妙を感じました。軽く流しているようですが良く読むと深い味わいのある作品だと思いました。
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2004.7.3 |
栃木県宇都宮市 |
我妻 洋氏 発行 |
500円 |
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すれ違う神 和氣康之
向うからやって来るひとが
はじめてなのに
はじめてでないような
他人なのに
どこか親しげに
似てはいないのに
だれかに似ているような
橋の途中
神らしい方が近づいてくる
知らんふりもできない
なんと挨拶しようか
こんにちわ よいおてんきで
お噂は かねがねうかがっており
いちどお会いしたいと思っていました
橋の下の河原では
なにやらさわがしい人だかり
ふところのもの早く出せ!
ナニオ!偉そうに そんなもんあるか!
ざけんな コノヤロウ!
流れを挟んで向こうとこっち
わめき合っている
この下はいつもこうなんです
魚なんか もうどこかへ行ってしまって
赤く濁った水が溢れているのです
さわぎもぼくのコトバも
聞こえていないようす
ニコニコとどこか親しげな方は
白くながい衣をひるがえし
なにごともなく
ふわっとすれ違って行った
風の中
かすかに草の焦げる匂い
「すれ違う神」とは、何ともおもしろい発想だと思いました。「ニコニコとどこか親しげな方」で「白くながい衣をひるがえし」ているという具体化も納得できますね。「神らしい方が近づいてくる/知らんふりもできない/なんと挨拶しようか」と迷う作中人物の心理もリアルで、ここもおもしろい描写だと思います。「橋の下の河原」の情景も作品を深める効果があります。最終連の「かすかに草の焦げる匂い」は「わめき合っている」連中が発したものか、「神」が発したものか不明ですが、前者と採ると時代への警告と考えられます。後者なら、初めて神の匂いを表現した作品ということになりましょうか。いずれにしろ視覚・聴覚・嗅覚をフル動員して拝読しました。
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