きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

       
 
 
 
「モンガラ カワハギ」
新井克彦画
 
 

2004.7.10(土)

 神奈川県二宮町の梅沢海岸で地引網をしてきました。職場(部)の懇親会主催で、親子120〜130名ほどが集まって楽しみました。
 JR東海道線の二宮駅で降りて、あとは幹事のクルマで送迎してもらったんですが、駅前で「ガラスのうさぎ」の像を見ました。高木敏子の小説『ガラスのうさぎ』をモチーフにした像で、二宮駅にあるのは知っていたんですけど、今回初めて見た次第です。こんな機会でもないと二宮駅に降りる理由がありませんからね。

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 写真がその像です。防空頭巾に溶けたガラスのうさぎ、と書けばお判りのように戦争中の空襲の話です。読んだ方も多いと思いますが、まだの方は読んでおくと良いですよ。

 地引網の方は、思った通りあまり獲れませんでしたね。2回の網引きで小さい魚が20匹程度でしょうか。私はもっぱら呑む方に集中していました。先日の山形出張で買い求めた25年貯蔵ホワイトオーク樽焼酎「秀洋」40度720ml≠ニいうのを持参して、これも持参の米軍放出コーヒーカップでロックで呑んでいました。「ガラスのうさぎ」像を見たあとに米兵カップかぁ、と一瞬思いましたけど、まあ、それはそれ。この米兵カップについてはエッセイにまとめるつもりで、現在執筆中。機会があったら読んでみてください。

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 写真は地引網の一場面。すぐ後には民家が迫っていて、都市部の地引網という風情ですね。左でハンドマイクを持っている若い男が幹事の一員で、こんな連中が10人ほどで世話をしてくれました。ご苦労さまでした、ありがとうございました。



  詩誌『鳥』6号
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2004.7.15
さいたま市大宮区
力丸瑞穂氏 発行
340円
 

    もう一つの駅    金井節子

   蒸気機関車の罐(かま)へ 燃料の石炭を補給する
   燃え付きそうな半分は 罐から出して捨てる
   そこは貨物中継駅だった
   石炭はタールがぬけ燃え殻はコークスになるが
   まだ 火力は充分に使えた

   柵を乗り越え少年等は
   スコップとバケツを手に線路際まで走っていった
   燻
(くすぶ)る石炭殻を拾うためだ
   「コークスはどんなに役に立つことか
    ありがたいのよ ほんとうに」
   機銃掃射の流れ玉が
   まだ 深くえぐられたままの
   コンクリート塀の脇に
   少年等の母たちが影のように待ち受けていた

   私は柵の向こう側から「トリ」と書かれた貨車を
   目を離さずにいた 運がよければ
   父は 生みたて玉子を買えるはずだ
   長い前掛けを二つに折った作業員が貨車を飛び降りてきた
   祈った前掛けは「玉子があるよ」という合図だった

   「無事に着けよ―― がんばれよ――」
   貨物の鶏や牛や豚に手を振る
   少年等の紅潮した額 大きな声
   「ありがとうね」といったあの母たちのなみだ声
   いつも隠れるようにその場を走り去った私の父

   もう駅には誰もいない
   あの頃の若かった父の歳を私は倍ほども重ねている

 昭和30年代初頭の頃の風景でしょうか。小学生になったかならないかぐらいの年齢だった私も「燻る石炭殻を拾う」光景をかすかに覚えています。「生みたて玉子を買える」のは知りませんでしたが「貨物の鶏や牛や豚」がいたのですから、そんなことも当然あったでしょうね。貧しかったけど、何か将来に希望があったように感じていたあの時代を思い出しました。
 作品の上では最終連がよく効いていると思います。「父の歳を」「倍ほども重ねて」語ることが私たちの使命のように感じた作品です。



  詩誌『烈風圏』第二期4号
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2004.6.27
栃木県下都賀郡藤岡町
烈風圏の会・本郷武夫氏 発行
非売品
 

    鳥葬    深津朝雄

   チベットのある村に ながく続けられてきた
   伝統の鳥葬が できなくなったという 遺体
   に残っている化学物質の毒に恐れて ハゲタ
   カが寄りつかなくなったからだ

   JR両毛線 高崎発小山行きの電車に 女が
   飛びこみ自殺をした 事件現場の五十畑の地
   は 高崎 小山間の中間から小山の方に大分
   過ぎた位置にあり 女の生涯の歩みを両毛線
   に例えれば確かに人生半ばを過ぎた五十畑あ
   たりの年齢ではあった しかし 終点小山ま
   でには 大平 栃木 思川と駅があり 未知
   との遭遇が光って その女を待っていた筈で
   はなかったか

   遺族たちは遺品を探したが 敷石の上には耳
   一枚 目玉ひとつ落ちてはいない 列車の風
   圧と車輪は 女の肉体と断末魔の叫びを 一
   瞬に捏ね散らかす 遠い森にいても 鴉本能
   の臭覚は 逸速く血の匂いを感知して 警察
   の高感度の無線伝達よりはるかに早く 現場
   に群がった 鴉は黒山をなし 歓喜の濁声を
   あげ 赤い肉を奪い合う 正に烏合の衆なる
   喪服の集団の 狂気の風景を鳥葬という
    
へ ド
   血反吐の女の肉に 環境に汚れた毒のわから
   ぬままに 鴉の鳥葬は暮色に紛れこんだ

 まさに現代の「鳥葬」を表現した作品だと思います。それにしても「遺体/に残っている化学物質の毒に恐れて ハゲタ/カが寄りつかなくなった」とは知りませんでした。「チベット」のような「化学物質の毒」とは無縁と思われる地でそうなら「JR両毛線」に「飛びこみ自殺をした」人体はもっとひどいだろうと思うのですが、これはカラスが単に「赤い肉」に日頃は接していないだけのことと思われます。だから「環境に汚れた毒のわから/ぬままに 鴉の鳥葬は暮色に紛れこんだ」のですね。

 誤字・脱字と勝手に解釈して直した箇所があります。第2連最後の「待ってい筈」は待っていた筈=A第3連中ほどの「高威度」は高感度≠セろうと思います。ご了承ください。




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