きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり

       
 
 
 
「モンガラ カワハギ」
新井克彦画
 
 

2004.7.13(火)

 定時後は職場(部単位)懇親会のキックベースボール大会に出ました。昨年初めて出てみましたが一塁も踏めないテイタラクでしたので、今年は応援のまわることにしたのですが選手が足りないから出ろとのことで、しぶしぶ参加したのですけど、今回は二塁打があって、本塁まで帰って来ることが出来ました。野球、ソフトボールはからきし駄目でしたから、本塁まで達したのは多分生れて初めてじゃないかと思います。
 そんなわけで随分と気を良くしたのですが、わがチームは6チーム中5位。まあ、楽しめたからヨシとします。

    040713.JPG

 写真がピンボケになってすみません。私の持っているデジカメは、夜や速い動きには弱いようです。右上のボーッと白いのは夜間照明です。夕暮の感じは出ているかな。でも、まあ、それにしても脚が痛いなぁ。



  門林岩雄氏選詩集『母への手紙』
    haha eno tegami.JPG    
 
 
 
岩礁詩人シリーズ No.9
2004.8.15
静岡県三島市
岩礁の会・栗和 実氏 発行
800円
 

    母への手紙

   波の音を聞きながら お母さん
   僕はこの手紙を書いています
   波はごうごうとうち寄せてきてくだけ
   くだけてはまた うち寄せてきます

   この波の音は
   僕が 子どものころ 赤ん坊のころ
   いや それよりも
   もっともっと以前から
   聞いてきたような気がします
   こうして 波の音を聞いていますと
   なぜかしら 不思議に
   こころが 落ち着いてくるのです

   僕は今
   北風の吹きすさぶ岸辺に腰をおろし
   鉛色の 冬の海を眺めています
   大みそかの北国の海は ひた荒れに荒れて
   立ち上がる波しぶきのために
   遠くの山もかすんで見えます
   波は ごうごうと音を立ててうち寄せ
   白い泡沫
(ほうまつ)となってくだけ散り
   くだけ散ってはまた うち寄せてきて
   くり返し くり返し
   飽きることを知りません
   カモメは 群れをなして舞いながら
   獲物
(えもの)の魚をあさっています
   小型の船が 小気味よいエンジン音をひびかせて
   沖のほうへと 遠ざかって行きました

   いつかお母さん
   僕が謝ったことがありましたね
   「たいした者にもなれず
   たいしたこともできず
   申し訳ありません」
   するとお母さんは
   「いやいや
   それで上出来上出来」
   と 笑っておられましたね
   『生きる』というのは
   僕が若いころ考えていたような
   華やかなものではなくて
   もっともっと地味な
   単調なくり返しなんですね
   波はごうごうとうち寄せてきてくだけ
   くだけてはまた うち寄せてきます
   人の世も
   このようなものなんでしょうね……
   カモメは鳴きながら 飛んで行きました

   波の音を聞きながら お母さん
   僕はこの手紙を書いています
   波はごうごうとうち寄せてきてくだけ
   くだけてはまた うち寄せてくるのです

 著者はこれまでに『亀』『鶴』『湖』『海の琴』『風変わりな船にのって』『島の伝説』『やぶにらみ動物記』『火の鳥』『泉のほとり』という詩集を出してきて、今回はその選詩集ということです。後者4詩集はこのHPでも紹介していますから、HP表紙の「索引」から検索してみてください。
 今回紹介した作品は第2詩集の『鶴』に収められていました。本選詩集のタイトルとなった詩で、著者の中では一番長い作品ではないかと思います。「お母さん」の広い心が伝わってきますね。「たいした者にもなれず/たいしたこともできず/申し訳ありません」とはなかなか言える言葉ではありませんが、それ以上に「いやいや/それで上出来上出来」という返事も出来るものではありません。率直な親子関係に胸を打たれた作品です。



  詩誌『ぼん』40号
    bon 40.JPG    
 
 
 
 
2004.7.30
東京都葛飾区
池澤秀和氏 発行
非売品
 

    こんがらがって    小林徳明

   毛糸の球で
   遊んでいたが
   足に巻きつき
   ほどけない

   もがけば
   もがくほど

   こんがらがって
   こんがらがって
   自暴自棄

   子猫のモクは
   もう
   パニック

   待てよ
   はじめの嘘が
   つぎの嘘
   嘘
   嘘
   嘘
   みんな嘘

   あがけば
   あがくほど

   こんがらがって
   こんがらがって
   支離滅裂

   あの議員さん
   もう
   パニック

   辞任するとか
   しないとか

   子猫の独り相撲なら
   笑い話だが
               
「詩区」 2004・3月号より

 「子猫のモク」と「あの議員さん」をうまく対比させた作品だと思います。「もがけば/もがくほど」「あがけば/あがくほど」「こんがらがって」しまい「自暴自棄」になったり「支離滅裂」になったりするのは、前者は「遊んでいた」だけだから「笑い話」だけど、後者は「嘘」が元になっているから罪は深いとする見方が痛烈ですね。いや、ことによったら「あの議員さん」も「遊んでいた」だけのことだったのかな(^^; そんなことを感じさせた作品です。



  詩誌『地平線』36号
    chiheisen 36.JPG    
 
 
 
 
2004.5.15
東京都足立区
銀嶺舎・丸山勝久氏 発行
600円
 

    有翼    秋元 炯

   手を後ろに回して 背中の羽をていねいに折
   り畳む ワイシャツを看て ネクタイを締め
   黒い背広姿の僕になる 足元がふわふわして
   躰が浮きあがりそうだ まだ 信じる気にな
   れない あなたを送る会というものに 出よ
   うとしている 地下鉄に乗り 階段を上がり
   エスカレーターを逆さにかけ降り 街全体を
   斜めに横切って どこへ行こうとしているの
   か 自分でも 分からなくなってきている
   結局は 道に迷ったり 遅刻することなど
   ないのだろうという自信も すこし傾きかけ
   てくる いきなり そば屋に入る なぜこん
   な時に そば屋に入らなければならないのか
   そば屋で中華そばを注文する なぜ そば屋
   で しかも中華そばなのか  しかし  それ
   がまた やけに旨いのである コリコリした
   モヤシがたっぷり入っている モヤシのお代
   わりもしてしまう そば屋の肥ったオヤジは
   とてもうれしそうだ モヤシを誉められたか
   らに違いない モヤシの来歴を すこし照れ
   ながら話し始める 僕は モヤシを 草食獣
   のように口一杯に頬張っている 突然 涙が
   湧いてくる モヤシのパリパリを 噛み砕き
   ながら 窓の外の雨 あなたを送る会に 僕
   は けっして 間に合うことはないだろう
   あなたの青ざめた顔を 最後に見ることもな
   いだろう 吐き気がしてくる 申し訳ない
   泣きながら 七八〇円をテーブルに叩きつけ
   て 外に出る 雨が 激しくなっている 水
   びたしの街 そば屋のわきの路地に入りこん
   で 上着とワイシャツを脱ぎ 真っ白い羽を
   ひろげた

 「僕」は天使≠ネのではないかと思って拝読しました。しかも「あなた」と近しい関係の天使。だから「いきなり そば屋に入」って、「あなたを送る会に」「けっして 間に合うことはない」ことになっても良いのだろうと思います。でも天使としての義務は果たさなければいけない。「そば屋のわきの路地に入りこん/で 上着とワイシャツを脱ぎ 真っ白い羽を/ひろげ」る必要はあります。
 都市に住む人間の「どこへ行こうとしているの/か 自分でも 分からなくなってきている」不安、しかし「結局は 道に迷ったり 遅刻することなど/ないのだろうという自信」が背景にあって、現代だな、と感じさせます。作者の一番いい面が表現された作品だと思いました。




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