きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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「モンガラ カワハギ」 |
新井克彦画 |
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2004.7.25(日)
午前中にクルマで20分ほどの実家に帰って、元プロの親父に髪を刈ってもらいました。前回刈ってもらったのは3ヵ月ほど前でしょうか、いささかウザッタクなって決意したものです。1ヵ月ほど前から髪を刈りたいと思っていましたけど、なかなか機会がなくて今日まで延ばしていましたから、ホント、気持ち良かったですね。気持ちもスッキリしたところでいただいた本を拝読した日曜日です。
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2004.9.1 |
東京都新宿区 |
土曜美術社出版販売刊 |
2000円+税 |
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人よ 人
覚束ないルートをたどり また会いに来た
もどかしい言葉 つながらない意思
疲れ果て駅前広場に座り込む
歴史と共に
変化し続ける街が
モノクロームに暮れていく
ゆっくりと通り過ぎる人
石の冷たいベンチで新聞を広げる人
皆 黙りこんだまま
青年がギターを掻き鳴らす
貧しい人に灯すカンパを求めて
夕暮れを歩く人は誰も耳を傾けない
他国者の私がせめてその音色だけでも味わってあげようか
郷愁にまかせて
今日の時間はまだあるのだから
突然 地下からあふれ出た人 人 人
しかし 聞こえない足音
着膨れた子供が父親と手をつないで行き過ぎる
フードの中の頬が赤い
音の消えた街
いつもは笑ってばかりの女子高生たちも
マフラーに顔を埋めて言葉一つない
見続けたロードムービー
あるいはひと時の夢だったのか
読み捨てられた新聞が音を立てて舞い上がり
舞い落ちる
大粒のハングルを撒き散らして知らせる
遠い国のテロと貧困
体が冷えてきた
戻ろうか
独り泊まる部屋へ
来たときの道をたどって
詩集のタイトルポエムです。「ハングル」とありますから韓国を旅行中のことと思われます。「歴史と共に/変化し続ける街が/モノクロームに暮れていく」というフレーズに風情があっていいですね。それ以上にすごいと思ったのが「他国者の私がせめてその音色だけでも味わってあげようか」というフレーズです。韓国の「夕暮れを歩く人は誰も耳を傾けない」けど、「他国者の私がせめてその音色だけでも」と思うところにこの詩人の人柄を感じます。それは「郷愁にまかせて」のことだったり「今日の時間はまだある」からかもしれないけど、本質的に持っている他人への接し方が表出したのではないかと思います。まさに「人よ 人」でありましょう。なべくら詩の世界を堪能した詩集です。
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2004.7.15 |
東京都豊島区 |
東京文芸館刊 |
2000円+税 |
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豚声人語
生まれてから
たった一ケ月で五倍
三ケ月で二十倍
半年で八十倍になる豚の体重
中には百倍になる奴までいる
少ない餌で短期間に育つのは人間にとっては
金になる優良な豚と言えるだろう
ところが人間に抵抗するかのように
食わせても食わせてもなかなか太らぬ奴がいる
いわゆる大めし食いだ
痩せの大食いは人間だけの話ではない
すこぶる元気で特別病気というわけでもない
そいつにしたら早く太る奴が異常だというかも知れない
まるで生き物の生長には種属ごとの
適度なスピードが必要なんだと言ってるようだ
しかし人間はそいつらをあまり歓迎しない
そいつらが多いと儲けが減るから
発育が悪いそいつらは淘汰の対象となり
そいつらの子孫は残さないと決めている
豚はそんな人間の思惑などまるで知らず
今日も餌をくれとぶひゃーぶひゃー泣いている
明日の命を知らずにぶひゃーぶひゃー泣いている
著者略歴によりますと千葉県畜産総合研究センター主席研究員とあり、作品中には獣医という言葉も出てきます。詩人には珍しい獣医師です。このHPでも毎号紹介していますが「むくげ通信」という個人誌で韓国の詩人・作品を紹介している詩人でもあります。
紹介した作品は詩集のタイトルポエムです。天声人語≠ヘ朝日新聞の有名なコラムですが、それをもじった「豚声人声」は、ヒトの高みからではなく豚の視線で人間の世を見ているところにユニークさがあり、辛辣さもあると云えましょう。「生き物の生長には種属ごとの/適度なスピードが必要なんだ」という詩句はそのまま人間に向けたい言葉です。
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2004.7.20 |
栃木県下都賀郡壬生町 |
森田海径子氏方「衣」の会・山本十四尾氏
発行 |
700円 |
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やまい病 仙波 枕
散らかっているから
片付けなくてはならない
捨てる物ならいらないが
捨てられるのなら私でも嬉しい
十月の夏は中途半端に過ぎ
おとといより早く戻ってきた
売れそうもない本を作る老人と私では
どちらが頭が固いのだろうか
文字をいっせのせで食べる
私だけがつわりのように吐いた
そう 昼間には昼間やる事があるの
シュークリームは夜には
しぼんでしまうから
腐っても考え事はしたい
でも時々私は死んだふりをする
力をぬくと穴から言葉がこぼれ落ち
少しだけ
私は世界のごみとなる
新しい詩誌です。発行人の山本十四尾氏は後記で次のように書いています。
同人は下野新聞社のしもつけ文芸で活動してきた詩人、今
も活動している詩人。それに宇都宮の「詩の佳話会」で、
全国から自前できてくれているゲスト詩人のスピーチを、
自分の地殻の重層化とするために参加している活力に満ち
た詩人たちである。そんな「衣」から新鮮な息差がどう大
気に揮発していくか。読者のこころにどう色彩を投じてく
れるか。今から楽しみにしている。(山本)
その前には22歳の女性から71歳の男性まで約半世紀に渡る年齢の人が同人であるとも書かれていました。幅広い詩人たちの幅広い作品に圧倒された詩誌です。
紹介した作品は、まずタイトルがおもしろいと思いました。「売れそうもない本を作る老人と私では/どちらが頭が固いのだろうか」、「力をぬくと穴から言葉がこぼれ落ち/少しだけ/私は世界のごみとなる」などのフレーズにも魅了されています。『衣』の幅広さを象徴するような作品と感じた次第です。今後のご発展をお祈りしています。
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