きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
     
 
 
 
「モンガラ カワハギ」
新井克彦画
 
 

2004.10.3(日)

 宇都宮の2日目。朝10時、ホテルに綾部健二さんが迎えに来てくれて、続いて神山暁美さんが車で乗り付けてくれました。当初、行動を共にするはずだった水島美津江さんは、別の旅行に出かけることになって、9時にはホテルを出たはず。対面の部屋を取っていた水島さんを叩き起して、すっぴんを拝顔するなんてことはしなかったので、いつ出たのかは不明ですけどね。

 午後3時から「詩を読んで楽しむ会」というのがあるそうで、それに参加してから帰ることにしました。それまでの時間は宇都宮の名所・旧跡を案内してもらうことになりました。一度は行ってみたいと思っていた「大谷資料館」にまず連れて行ってもらいました。資料館に入る前から巨岩が見えて、感激しましたね。一枚岩が10m近い高さで聳えています。それだけでも充分なほどでしたが、坑内に入るともっとスゴイ。大谷石を切り出した跡はライヴなどの会場としても利用されていますが、地下の静寂と人工的な直線の切り出し跡が不思議な空間を創っています。詩の朗読もやってみたい場所です。

 続いて近くの「大谷寺」行きましたが、ここは宝物館にある国内最古の人骨が有名です。現物が展示されていますが、何と1万1000年前のもので、縄文時代の20歳ぐらいの男性だそうです。復元した顔もありましたけど、結構いい男でした。
 昼食はその名もズバリ「石の蔵」。50年ほど前に建てられた大谷石造りの倉庫を改造した和食の店です。宇都宮に行ったら寄りたい店ですけど、予約しないと無理でしょうね。弊社の営業にも教えて、大事なお客さまとの食事会にも使ってもらいたい店です。

 食後は宇都宮市長岡町にある「長岡百穴古墳」へ。国道のすぐ傍にあり、神山さんは車で通るたびに「何だろう?」と思っていたそうで、今回が初めての訪れだそうです。大人が屈んで入れるほどの穴が丘の斜面に無数に開いていて、中には石仏が掘られていました。市のパンフレットによると、7世紀頃のものではないかということです。それにしても神山さん、永年の疑問が解けて良かったね(^^;

041003.JPG   午後3時からは「詩を読んで楽しむ会」に参加させてもらいました。特に出欠もとらず気が向いたら参加するという会だそうで、飛び入り参加でも歓迎してくれました。
ここはおもしろい会で、自作はもちろん他の詩人の作品も持ち寄って自由に討論していました。あなたの知らないところで、あなたの作品の文学性が問われていますぞ、全国の詩人諸兄姉!
写真は左上から湯沢和民氏、高田太郎氏、綾部健二氏、
村山精二、神山暁美氏、相馬梅子氏。
今回はデジカメが壊れて、急遽レンズ付きカメラを買って間に合わせたのですが、やはりイマイチです。弊社の商品が無く、某社のものを使ったからかな(^^;

会がハネたあとは、近くの「和民」で二次会。そこで気付いたのですが、湯沢和民さんとは関係のない店だそうです。
それにしても真面目に詩を論じたあと、ちゃんと呑み会をやるのは、全国どこへ行っても変りませんね。エライ! 安心した(^^;

19時過ぎに散開。宇都宮の皆さん、ありがとうございました!




  詩誌『燦α』27号
    san alpha 27.JPG    
 
 
 
 
2004.6.16
埼玉県さいたま市
燦 詩文会・二瓶 徹氏 発行
非売品
 

    花見・花吹雪    二瓶 徹

   かって蓮田の元荒川の岸辺近くに
   尾久の精機会社に勤めていた頃の
   上司が住んでいた
   その家の前で花見を開いたことがあった
   同僚や家族が二〇人ほど集まり
   夕方近くまで宴は続いた
   会社も景気の良い頃だったので
   皆の顔も晴れやかであった

   そして

   川沿いの桜並木の色合いと
   花びらを浮かべて
   ゆるやかに流れて行く
   川の面とが 今 持って
   印象深く脳裏に残っている

   その会社を辞めて五年も経った桜の季節
   音信不通となった上司の家を訪ねてみると
   そこには 幾軒かの家と共に更地となっており
   たくさんの皐月躑躅の鉢植えがあったはずの
   その家も 庭もなかった

   どのような訳で
   このようになってしまったのかという
   思いを 抱いたものの
   辺りの桜だけが
   あの時と同じように咲いていた

   あの時と同じように…………
   水の面に花びらを浮かべながら
   川は流れて行くのを
   ひととき 岸辺に立って私は眺めていた

   川沿いの桜並木

   自転車に乗った背後で
   車の警笛
   道の端に寄る
   チョコレート色のシビック

   親父の車であった

   「おう どうした こんなところで
    お前が ここにいたから 驚いたよ!」
   「親父は?」
   「この近くで 仕事だ
    しかし 気を付けて帰って来いよ!」

   折からの風に煽られて花吹雪が舞う
   花びらの舞う中
   川沿いの道をシビックは右折して行く

   思えば 親父とお袋とで
   花見らしい花見をしたことはなかった

   僅かな時間ではあったが
   あの時が親父との
   最初で最後の花見であったと思う

   あれから二○年
   今は 親父も お袋も いない

   ただ 川沿いの桜だけが
   今年も変わらずに咲いている

   そして 花吹雪

 「僅かな時間ではあったが/あの時が親父との/最初で最後の花見であったと思う」というフレーズが強く印象に残る作品です。「二○年」も前の話で「今は 親父も お袋も いない」状態ですから、なおさら読者に印象深く迫るのだと思います。「思えば 親父とお袋とで/花見らしい花見をしたことはなかった」家族の、一瞬の「花見」。「景気の良い頃」の「夕方近くまで宴は続い」て「皆の顔も晴れやかであった」頃が底流にありますから、余計に対比される作品だと思います。「変わらずに咲いている」のは「川沿いの桜だけ」。時の流れを感じさせられました。



  詩誌『燦α』28号
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2004.8.16
埼玉県さいたま市
燦 詩文会・二瓶 徹氏 発行
非売品

    赤い自転車    金子万里子

   無くなってしまった
   私の赤い自転車
   もとの値段より修理代のほうが
   高くなってしまった
   私のボロボロの自転車

   一五年乗せてくれたのだ と思うと
   どんなにボロくなっても捨てられなかった
   不思議なことに どこで無くしても
   かならず見つかった
   あの赤い自転車

   でも今回はきっと もう出てこない
   鍵が掛かっているのに無くなってしまった
   名字も住所もかすれて もう読みとれない

   動物は死の前には群れから外れ
   たった一匹で死んで行くという
   自転車は無機質の機械だけれど
   きっとなんにでも寿命はあるのだろう

   もう出てこない そんな気がして
   新しい自転車を買った
   驚くほどハンドルが軽い
   弾むような乗り心地

   でも あの 赤い自転車
   一万円の物を分割でしか買えなかった
   貧しかったとき
   寂しかったとき共に過した時間
   バイトの行き帰りにチリチリと鳴ったベル
   夏の日にキラリと光った車輪
   ご苦労様 そして 有り難う

 「自転車は無機質の機械だけれど」「死の前には群れから外れ/たった一匹で死んで行く」のだ、と「無くなってしまった/私の赤い自転車」への思いが伝わってくる作品です。「一万円の物を分割でしか買えなかった/貧しかったとき」の自転車ですから、作者の愛着も強いだろうなと想像できます。その自転車に「ご苦労様 そして 有り難う」と素直に感謝する作者に好感を持った作品です。



  詩誌『燦α』詞華集 VOL.4
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2004.10.1
埼玉県さいたま市
燦 詩文会・二瓶 徹氏 発行
500円
 

    ひとりぼっち    堀田郁子

   「おかあさん つまんない。」
   こどもが庭先から入って来る
   逆光をうけて
   薄いワンピースから足が透けて見える

   友だちがみんなどこかへ出かけてしまったらしい
   膝に座ってきた子は
   太陽と汗の甘ずっぱいにおい

   プールへ行きたいと言う子に
   今日はこれで我慢して と
   小さなビニール・プールに空気を入れる

   ひとりでは水遊びも飽きてしまう子に
   言葉だけで相手をしながら
   内職の続きをする
   夜おそくまで座っていても
   いくらにもならない仕事に
   少しいらだちながら

   明るい太陽の下でひとりぼっちのこどもと
   暗い部屋の中でひとりぼっちのおとな

 母と子のそれぞれの「ひとりぼっち」がうまく描けている作品です。特に最終連の「明るい太陽の下でひとりぼっちのこどもと/暗い部屋の中でひとりぼっちのおとな」という対比が印象的ですね。母親だから当然かもしれませんが「逆光をうけて/薄いワンピースから足が透けて見える」「太陽と汗の甘ずっぱいにおい」というフレーズも良く子を見ていて、絵のように情景が浮かび上がってきます。「内職の続きをする」というフレーズも詩にアクセントを与えて、作品を印象深くする効果が大きいと思います。



  総合文芸誌『中央文學』465号
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2004.10.1
東京都品川区
日本中央文学会・鳥居 章氏 発行
600円
 

    旧正月    金沢 忍

   旧正月の中華街 華やかな獅子舞
   こどものころ 頭をかみかみしてもらった
   唐草模様の布を着たお獅子とは違って
   長いモールをまとった かわいいつぶらな瞳

   ゆるやかに起ち上り 身をくねらせ
   舞い上り 舞いおさめて
   やさしくまた横たわる

   爆竹 花火
   黄の皇帝や妃の衣装に着飾った人々
   こどものように 愉しみながら
   あとをついて行こう

 「唐草模様の布を着たお獅子」は見たことがありますが、私は「長いモールをまとった かわいいつぶらな瞳」の「旧正月の中華街 華やかな獅子舞」を見たことがありません。横浜か神戸の「中華街」なんでしょうか。「こどものように 愉しみながら/あとをついて行こう」という最終連のフレーズに作者のお人柄が現れている作品だと思いました。




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