きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
     
 
 
 
「モンガラ カワハギ」
新井克彦画
 
 

2004.10.15(金)

 14〜15日、1泊で山形県に出張してきました。業務内容からは日帰りでも可能だったのですが同行者の中に初めて行く社員がいて、難色を示しました。今回は彼が重要な役割をすること、2年ほど前に私が最初に行ったときも前泊にして、慣れた頃から日帰りにしたこともあって、彼の希望を呑みました。

 新庄に18時過ぎに着いて、行き着けの酒屋さん・高橋日東商店に併設されている屋台で呑んで、彼を歓待しました。彼も日本酒好きだと判ったので、二人でいろいろな酒を試してみました。「雪漫々」「初孫」「出羽櫻本生」「阿部亀治」などですが、どれも旨かったです。その中でも私の好みは「出羽櫻本生」でしたね。そうそう、つまみに「もってのほか」という赤い菊の酢のものがあって、これも珍味でした。

041015.JPG    仕事は思った以上に順調に終って、早い時間に帰ることができました。とは云っても帰宅は20時近くでしたから、まあ、遠いことは確かです。
 写真は帰りの山形新幹線から撮ったもので、この沿線では私が最も気に入っている処です。急に視界が開けて、田んぼの真ん中の池(沼?)が印象的な場所です。新幹線の止まらない中川という駅と、新幹線が止まる赤湯駅の間にあります。池は何という名が付いているのでしょうかね? 手持ちの地図には載っていませんでした。










  詩誌『錨地』42号
    byouchi 42.JPG    
 
 
 
 
2004.11.1
北海道苫小牧市
入谷寿一氏方・錨地詩会 発行
500円
 

    忘れることは生きていること    武田なみ子

   おはよう 声をかけてみる
   いつも同じ場所に
   一点を見つめ
   置物のように坐っている
   今日は晴れ?
   それともくもりですか
   ああ・・・
   今日はくもりのようですね
   「あのね
    タイヘンナノ
    サイフがなくなったの」
   どこにおいたのか
   盗まれたのかもしれない
   目はギラギラと訴えてくる
   忘れるってことは生きていることだよね
   きっと、そのうち見つかるよ
   隠しすぎて
   どこに隠したか忘れ
   隠したことさえも忘れ
   盗まれたと訴える義母
   信じられない現実が
   少しずつ
   少しずつ
   体をむしばむようにやってくる
   かみ合わないはぐるまが
   にぶい音を立て
   まわっては止まり
   止まってはまわる
   受け入れなければならない現実が
   すぐそこまできている
   ゆっくり ゆっくり
   しのびこんでくる現実を
   家族全員でスクラムくんで見守るから
   明日は晴れたらいいね
   きっと晴れるよ!

 「忘れることは生きていること」という言葉は名言だと思います。以前から、人間であることの特権に忘れる≠ェあると思っていましたが、それが具現されていて共感を持ちました。もっとも、政治家の忘れた≠ヘ許しませんけどね。
 作者の包容力のある視線にも好感を持っています。「義母」の「受け入れなければならない現実が/すぐそこまできている」けど「家族全員でスクラムくんで見守るから」という姿勢は、なかなか出来ることではないと思います。そんな「義母」を「今日は晴れ?/それともくもりですか」と寛容に見て、「きっと晴れるよ!」と前向きに捉える姿に感動しました。好い作品に出会いました。



  季刊・詩と童謡誌『ぎんなん』50号
    ginnan 50.JPG    
 
 
 
 
2004.10.1
大阪府豊中市
ぎんなんの会・島田陽子氏 発行
400円
 

    冬ってやつは    すぎもとれいこ

   こんにちはと
   明るい春がくる
   ヤッホーと
   元気な夏がきて
   おじゃましますと
   おしゃれな秋がくる

   冬ってやつは
   だまってしのびこんできて
   むだんで部屋にあがってすわっている
   ずうずうしいやつと思うのだが
   すきとおるような目で
   こちらを見るものだから
   出ていってくれともいえずに
   こたつなどあわてて出して
   迎え入れる
   手間のかかるやつである

 「春」「夏」「秋」と、まあ、順当に描かれていて、さて「冬」はどうなるのかと思っていたら、「すきとおるような目」「手間のかかるやつ」となっていました。好い視線だと思います。「こたつなどあわてて出して/迎え入れる」というフレーズに作者の心底からの優しさが見えていると云えるでしょう。この誌は子供向けを意識して創られていますが、この作品は大人にも受け入れられそうです。色紙に書いたり、詩書画展にでも出品したい作品ですね。



  詩はがき『散葉集』9号
    shi hagaki sanyousyu 9.JPG    
 
2004.10.15
広島市佐伯区
楽詩舎・津田てるお氏 発行
非売品
 

    新しいのがお好き    津田てるお

    ダレでも ナニでも
    用済み になる時がくる
    宇宙の法則なんである この度

   わが家のテレビ君が(要めともいうべき顔が)
   ついにダウンしたと
   小一時間の修理人は 汗水ぬぐってムダでしたと
   1991年製ですから 寿命です

   いやまだ 衛星のBSだけ
   だとしも フム となる 奇しくも
   わが輩の詩筆もハタリと止まったまま
   心のアンテナが宇宙を向かなくなったところ
   (しばらく休筆)と葉書したところ

   君 黒くいかついテレビくん
   わが家に座って十数年とはな
    どうぞ ご覧ください
    どうぞ お読みください
   示し合わせたわけではないが
   わが輩も筆をにぎって
   詩らしきもの 発信してたわけだが…

   マいいか 宇宙の法則とあらば
   嘆くことはない いや ヤルだけヤッタか

   (黒いさづち頭)から(白いうすい頭)に
   これからは変わっていくんです…
    大電器店の広大なテレビフロアーで
    ぼくはしきりに後頭部を掻いている

 「わが家のテレビ君」の「ダウン」と「奇しくも/わが輩の詩筆もハタリと止まった」ことを重ね合せた詩ですが、テレビが「要めともいうべき顔」であったり、「(黒いさづち頭)から(白いうすい頭)」という表現があったりで、津田節を堪能させてもらった作品です。特に最終連の「ぼくはしきりに後頭部を掻いている」というフレーズが好いですね。津田てるおという詩人を等身大に見せているフレーズだと思います。「(しばらく休筆)と葉書した」ので心配していましたが、今号では25編ほどの作品が載せられていて安心しました。




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