きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
「モンガラ カワハギ」 | ||||
新井克彦画 | ||||
2004.10.16(土)
群馬県榛東村の現代詩資料館「榛名まほろば」に行ってきました。第14回まほろばポエトリーステージ「白石かずこ・昼下がりライヴ」があったからです。
写真は館長の富沢智さんと白石さん。白石さんは自作詩をたくさん朗読してくれましたが、交遊のあった詩人たちを詠んだ作品が圧巻でした。アレン・ギンズバーグを始めとした米国の路上派の詩人たち、日本の詩人もたくさん出てきましたが、なかでも西脇順三郎のエピソードが面白かったです。西脇さんは小千谷の富豪の生まれですから、小学生の頃、学校から帰宅すると使用人たちが20人ほど勢揃いして「順さまのお帰り〜!」と出迎えられたそうです。それが英国に留学して「Hey,JUN!」と呼び捨てにされたことでショックもあった代りに自由も得たのではないか、という下りは書物では得られない話でした。 古稀を過ぎてもお元気な白石さんに圧倒されたライヴでした。 |
ライヴがハネた後はお決りの懇親会。もちろん参加させてもらいました。地元のワインも日本酒も、阿蘇豊さんの差し入れ・16年もののウィスキーも旨かったです。 会が始まってしばらくすると、外は見事な夕焼け。中座して写真を撮ってきました。紹介するのはそのうちの一枚で、「榛名まほろば」を包む夕焼け雲です。暗雲ではありませんから念のため(^^; |
○隔月刊誌『原詩人通信』117号 | ||||
2004.10 | ||||
東京都品川区 | ||||
井之川巨氏編集・原詩人社 発行 | ||||
200円 | ||||
ヘンプブーム 埼玉 山田塊也
信州安曇野は「美麻」という名の村で
戦後アメリカ占領軍につぶされた
伝統の地場産業を復活せんものと
「道の駅」を会場に商工会が主催する
輸入ヘンプの茎と実による産業見本市
内外のヘンプ業者が持ち寄ったのは
ヘンプ繊維 ヘンプパルプ ヘンプ建材
ヘンプオイル ヘンプ食品 ヘンププラスチック
ヘンプビール ヘンプアート ヘンプ文献
そして地元特産のヘンプミュージック
道の駅に立ち寄ったドライバーたちが尋ねる
「ここに集まっているのはどういう人たちですか?」
「なんだか特殊な人種みたいですね」
ヘンプクッキー売りの若者が答える
「いいえ麻を愛するフツーの人たちですよ」
「美麻フェスティバル」の翌日 別会場で
ヘンプの葉と花への差別に反対する
親THC派の麻の民が
安曇野の栽培家を奪還すべく
反弾圧マリファナ会議を開いた
不勉強で恥ずかしいのですが「ヘンプ」とは麻のことだと広辞苑で知りました。その麻が「マリファナ」との関連で「戦後アメリカ占領軍につぶされた/伝統の地場産業」だったのでしょう。これも知らないことでした。麻を麻薬目的で自家栽培して逮捕されたというのは時々目にする記事ですが、そういえば麻の着物などもあったはずで、「ヘンプの葉と花への差別」が今でも続いているのだなと思います。「反弾圧マリファナ会議」の意図は、この作品から少し窺えますけど、コメントできるほどの知識を持ち合わせません。ただ、作品を通して私たちの知らないところで進んできたことがあったのだと認識できました。そういう大事なことを考えさせてくれた作品です。
○詩誌『蛙』9号 | ||||
2004.9.25 | ||||
東京都中野区 | ||||
菊田 守氏 発行 | ||||
280円 | ||||
世界の半分は 菊田 守
蝉しぐれの中を歩いていると
とんできた油蝉が
ズボンの裾(すそ)に
縋(すが)りつくようにとまった
手に取ると鳴かない蝉
鳴く蝉がいる分だけ
鳴かない蝉がいる
笑うひとがいる分だけ
泣くひともいる
世界の半分はいつも
油蝉の声がいっそう
強く激しく聞こえてくる
鳴けない蝉がだまって
聞いている
「世界の半分はいつも」「笑うひとがいる分だけ/泣くひともいる」という指摘にハッとさせられました。「鳴く蝉がいる分だけ/鳴かない蝉がいる」というのも忘れていたことだったのですが、それを「世界」に結びつけたのは見事だと思います。「だまって/聞いている」「鳴けない蝉」の立場に立った、菊田詩らしい展開に感服しています。
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