きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
     
 
 
 
「モンガラ カワハギ」
新井克彦画
 
 

2004.11.16(火)

 関連会社と打合せがあって、本来なら私が出向かなければいけないのですが、出張している暇がないので弊社に来てもらいました。そう決めたのが昨日のことで、あわてて会議室を予約したのですけど、全部満室。さて、困った。
 で、思いついたのが生協運営の喫茶室です。午前中ならほとんど利用する人もいないし、コーヒーは飲めるし煙草も吸える(^^; 集まった3人がうまい具合に全員喫煙者。喜んでもらえましたね。会議? もちろん大成功ですよ(^^;



赤地ヒロ子氏詩集『水路』
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2004.11.20
福岡市中央区
石風社刊
1500円+税
 

    季節

   それまで合っていた視線が
   目をふせることで
   ずるずると落ちていく

   それがはじまりだ

   あとはもう後姿だ

   遠ざかりながら
   なんどもなんども振り向く

   まぶしいくらいに光る夏の空の下を
   ひまわりや白い爽竹桃の咲く道を

   もうたどれない時間のむこうに

 著者の第一詩集です。ご出版おめでとうございます。
 紹介した作品は巻頭作です。人間の別れの心境を見事に表現していると思います。「それがはじまりだ//あとはもう後姿だ」という1行1連がよく効いていて、力量の深さを感じます。「季節」というタイトルも巧いですね。巻頭にふさわしい作品だと思いました。
 収穫の多い詩集で、「夢」「バラ」「未来」「海辺で」「白い鳩」などの作品にも惹かれました。これからのご活躍を祈念しています。



詩と散文・エッセイ誌『吠』27号
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2004.11.15
千葉県香取郡東庄町
「吠」の会・山口惣司氏 発行
700円
 

    よえん    山口惣司

   退職金の半分は
   家のローンの一括払いで消えたが
   残りの半分は積み立てておいた
   十年ほど先には元金を取り崩さずに
   利息だけでも
   小遣い程度にはなると思っていた

   義父の墓を建てたり
   孫の祝いだ 海外旅行だのと
   やたら身銭を切ることが多く
   いつの間にか
   元金も無くなっていた

   金利は限りなくゼロに近い
   それを見透かしてか
   信金系の行員がやってきて
   「六十五歳以上は一口に限り
    百万円で年一万円の利息」
   と 恩着せがましく言う
   ついほだされて いや欲が出て
   幾つかの通帳から寄せ集め
   「虎の子」の百万円を積んだ

   その百万円も
   ちょうど半年で下ろす羽目になった
   「解約ですか
    もったいないですねエー」
   と 渡された袋から
   ころころと一円玉が何個か転がり出た

   一円玉は四個であった
   ははアん何千円と………
   いや何百円と四円かナ
   袋を逆さにしたが
   四円以上は出てこなかった
   行員たちは誰ひとり知らん顔でいる

   家に帰って明細を見た
   が 確かに百万四円であった
   解約した以上普通預金並になるのは
   百も承知だ
   でもなぜ一万円がたったの四円なのか
   僕には見当もつかなかった
   利息のからくりを解明する気もないが
   ただ呆然とした

   その夜一升瓶を提げて友人が来た
   「百万円積んで年一万円の利息が
    半年で解約したら幾らになる?」
   と クイズまがいに聞いた
   「千円ぐらい? それとも五、六百円?」

   「四円だよ………」
   黙って 呆れて また飲んで 呆れた
   「よえんなア」
   「うん よえんねエー」
   半ばヤケ気味に
   半ば自嘲気味に
   「よえんか」「よえんよネエー」を
   繰り返しながら飲んだ

   杯を酌み交わし
あお
   もちろん相当に呷ったが
   その夜は一向に「酔えん」かった

 まさに「酔えん」話ですね。銀行間の送金にはたった数万円でも何百円も取るのに、この国の金融政策はどうなっているのかと思います。ま、そういう政府を作った私たちの責任ですからしょうがないですけど…。
 山口惣司さんの作品は読ませる力があると思います。よく出来た小説のようにスラスラと読んでいけて、最後に考え込んでしまう。そんな持ち味を今号でも堪能させていただきました。



隔月刊詩誌RIVIERE77号
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2004.11.15
大阪府堺市
横田英子氏 発行
500円
 

    蟻    横田英子

   白いタイルの上を
   蟻が歩いている
   見つけては潰している
   潰されるために毎日
   蟻がやってくる

   まいにち潰しながら
   蟻の情報網がどうなっているのか
   首をかしげている

   蟻はなおもやってくる
   今頃 蟻を見ると
   私は逃げだしたくなる

 横田英子さんにしては珍しい作品だと思います。「見つけては潰している」というようなナマな表現も、そんな所作を感じさせる表現も今までに見た記憶がありません。ひとつの転機が訪れているのかなと愚考しています。
 作品は文句なしに面白い。「蟻の情報網がどうなっているのか」という発想もユニークですし、最終連の「私は逃げだしたくなる」というフレーズも好いですね。このフレーズで読者は救われました。こんな詩を今後も拝見したいと思った作品です。




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