きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
「モンガラ カワハギ」 | ||||
新井克彦画 | ||||
2004.11.24(水)
東京・大森の関連会社に出張してきました。天気も良く、こういう日の出張というのは楽ですね。
写真左の二つの建物はNiftyの本社ビル・大森ベルポートです。近くの児童公園のトーテムポールを前景に入れてみました。鳩も群がって、のどかな風景です。 仕事のほうはのどか≠ニはいかなくて、15時から始まった会議は19時まで、4時間も掛ってしまいました。でも、まあ、前進はあったと思います。 懇親会は近くの居酒屋へ。日本酒は「一の蔵」ぐらいしか無かったけど、焼酎は珍しいものがありました。鹿児島の「へんこつや」と言います。ロックで呑んで旨かったですね。そうそう、相手の社員で山口の銘酒「獺祭」を知っている人がいて、大いに盛り上りました。案の定、他に誰も知りませんでしたね。当然、鼻をヒクヒクさせて、得意になって解説しましたよ。会議では大人しいけど、懇親会では実力を発揮します(^^; |
○ささきひろし氏詩集『カムイエト岬』 | ||||
2004.11.25 | ||||
さいたま市見沼区 | ||||
柳桃社刊 | ||||
1905円+税 | ||||
駅
木枯らしの吹く横浜駅ホームに立ち
埼玉までの通勤電車を待つ間
鈍く光るレールの先をたどる
青函トンネルをくぐり
石狩平野を抜け
鉛色の日本海にでると
白波立つ海岸線がつづく
彼方にかすむ岬に向かって走ると
留萌本線終着駅 増毛(ましけ)
そこが私のふるさとの駅だ
かつて鰊漁で栄えた駅
ヤン衆や行商人で賑わい
鰊を運ぶ蒸気機関車が力強く
白い煙をたなびかせていた
いつしか幻の魚と共に煙も消える
三十数年前の私の始発駅
磯の香りを胸いっぱいに吸い込み
見送りの父母の姿を心に刻むと
飛び交うカモメの鳴き声が
学生服姿の私の出立を急きたてた
−身体に気をつけ
しっかり勉強するんだよ
今でも時間のレールの彼方から
心に響いてくる亡き母の声
こみ上げるふるさとへの思いを
胸に押し込め すべり込んで釆た
重苦しい満員電車に
ひとり 身を細める
著者の第2詩集です。第1詩集から3年、次々と作品を発表し、詩に賭ける著者の思いが伝わってくるような詩集です。
紹介した作品は埼玉新聞社制定の「彩の国・埼玉りそな銀行第35回埼玉文学賞」の受賞作でもあります。「鈍く光るレールの先をたどる」と「留萌本線終着駅 増毛」に至るという、いわば壮大な発想に惹きつけられますね。そして「三十数年前の私の始発駅」という回想から一転して「ひとり 身を細める」現実。距離と時間の処理に優れているばかりでなく、人間の根源までも表出させた秀作だと思います。
他に「北の地図」「カムイエト岬」「漁師」「引越し」「取り壊し」「白い杖」「口移し」「爪きり」などの作品にも魅了されました。飯島正治氏が「真っすぐで虚飾のない詩である。だから詩の骨格は太い。船は真っすぐ進むと早いが、小回りがきかない。バックも苦手だ。北の海で育ったささきさんの性格でもある」と巧い解説を書いていますが、まさにその通りの詩集です。ご一読をお薦めします。
○季刊詩誌『火山彈』67号 | ||||
2004.10.30 | ||||
岩手県盛岡市 | ||||
内川吉男氏方「火山彈」の会 発行 | ||||
700円 | ||||
冬至の神様 内川吉男
神様が
車椅子を押してくれているのだが
顔は見えない
車椅子を後ろ向きに
エレベーターに引き込みながら
「金曜日は混みますね」と
言葉まで世間に合わせて話をする
神様の役割が
気の毒で仕方がない
きょうの病院の外気には
三階には三階の
六階には六階の高さに
日溜りがあってそれぞれに
ふわりと車椅子が浮いている
当然のように押し手もおらず
いかにも軽そうに浮いている
神様はまどろんでいるらしい
穏やかな冬至の日溜まりを
見上げる人の目には
車椅子が見えているだろうか
「ほら坊や!
あれが寄生木よ」 と
声がする
植物の寄生のそれのように
椅子にしがみついている
萎びたいのちが
見えたのだろうか
棚引いている煙が
何処へ消えていくんだろう
少々肌寒くなってきた
六階の空では
軽く取っ手を握り直しながら
神様がつぶやいた
「自分で動いてみませんか
どっちみちこの先は
自分で行くしかないのですから」
「車椅子を押してくれている」「神様」を「世間」では看護師というのですが、それをあえて「神様」と謂うところにこの作品の良さ、作者の敬虔さを感じます。「ふわりと車椅子が浮いている」情景も「椅子にしがみついている/萎びたいのち」という詩句も好いですね。最終連の「神様がつぶやいた」内容も考えさせられます。「どっちみちこの先は/自分で行くしかない」というのは、死を必ず迎える私たちへの心構えを説いたものとも受け止めました。
今号では前号への礼状の拙文まで載せていただきました。お礼申し上げます。
(11月の部屋へ戻る)