きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
「モンガラ カワハギ」 | ||||
新井克彦画 | ||||
2004.11.26(金)
久しぶりに日本ペンクラブの「ペンの日」懇親会に出席してきました。毎度のことですが東京・丸の内の東京會舘は500名の会員やゲストで大盛況でした。最初に佐藤陽子さんのバイオリン演奏があって、これは聴き応えがありましたね。
会場で社民党党首の福島みずほさんにバッタリ出会って、紹介してもらいました。昨年だったかな? ペンの会員になったのは知っていましたけど、まさかお話できるとは思っていませんでしたから、ラッキー!と単純に喜びましたね。いたって気さくなオバサマでした(失礼!)。 同じく昨年入会のニュースキャスター利根川裕さんとは同じテーブルだったこともあって、いつの間にか会話していました。 有名人と会うことが目的ではないんですけど、そんなこともペンの楽しみのひとつです。もちろん帰宅して家族に自慢しましたよ(^^; |
こちらは会場の様子です。会も押し迫って福引をやっているところです。今年も当りましたけど、いつも当らないという人に差し上げてしまいました。モノが欲しいわけではなくて、当ったという事実が欲しいだけ。でも、ヘンに射幸心を煽るようなイベントで、あまり感心しませんね。射幸心から離れたところで書いているのがモノ書きだろうと思うのですが、そうとも言えないかな。みんなベストセラーを目指しているからなぁ。 二次会は近くのカラオケへ。50代の連中だけ5人で行きました。歳が近いというのはそれだけで安心感があります。年配者への気兼ねや若い人への配慮なんか必要ありませんからね。呑むときは何の気遣いもなく呑みたいもの。いい夜でした。 |
○望月苑巳氏詩集『鳥肌のたつ場所』 | ||||
21世紀詩人叢書・第U期3 | ||||
2004.11.30 | ||||
東京都新宿区 | ||||
土曜美術社出版販売刊 | ||||
2000円+税 | ||||
美しい人は
美しい人は
骨になっても美しい。
月の光を手のひらに広げて思う
初夏は、まだ匂いだけだが
ゴチックふうの不粋な光が、
ヒマラヤ杉の棘を揺らして吹いてくる晩であった。
頬を、肩口を、耳架を刺している
中央線・歴史の駅前
夜がみるみるふくれあがって
学生らのさんざめきがふくれあがって
巻き戻しのきかない生を鼓動させている。
かつてインターナショナルの列が
ワルシャワ労働歌の列が
行進していった生の
連続の一瞬に変わりはない。
あの初夏はひときわ輝いていたが
それは紅いダリアの蕾から始まったのだ。
サウスカロライナの風に吹かれて
さわやかな恋を知りました。
そんな柔らかな手紙が届いたのは
組んでいた腕をほどいて四半世紀の初夏
月に人が降りたつ時代に生きて
月の光の意味を考えるとは
徒労のような。
墓標のような。
石を学生のさんざめきに投げてみる
さんざめきが裂ける
中央線・歴史の駅前
匂う初夏がうれるのはいつだろう
手紙の印影を重くひきずって、夜が明けてゆく
紅いダリアの中に
あなたの名前を閉じ込めて
美しい人は
灰になっても美しい
と思う。
詩集の最後に置かれた作品ですが、「美しい人は/骨になっても美しい」「美しい人は/灰になっても美しい」という詩句に魅了されました。このままでも後世に遺るようなフレーズだと思います。「美しい人」の喩は何かと考えると、それはそのまま「人」としても良いけど、私には芸術一般と受け止められます。真の芸術は「骨になっても」「灰になっても」美しい。
「月に人が降りたつ時代に生きて/月の光の意味を考えるとは/徒労のような」というフレーズも衝撃的ですね。科学がいろいろなものの姿を暴いていく現代、そこでどうやって新しい詩を発見するか、書いていくか、その具体を示した詩集だと思います。
○季刊詩誌『裸人』21号 | ||||
2004.10.10 | ||||
千葉県佐原市 | ||||
五喜田正巳氏方・裸人の会 発行 | ||||
500円 | ||||
高尾まで 五喜田正巳
電車の中は暖かく
窓は乳白色にくもっている
指でなぞると
今朝がた降った雪の香りが
武蔵野に広がっていた
時計を見ると九時少し過ぎていた
仏壇の横の
毀れた柱時計を思い出した
母親の看取りで疲れたひとと
古い家のに疲れたひとと
雪の朝の電車に寄り添っている
解けはじめた雪のまだら
鳶のように気持良さそうに
鴉が舞っている
季節は少しずつ傾き
野山に春が匂いはじめる
電車の中は暖かく
くもった窓がうすれてゆく
高尾に着く頃は雪も解けるだろう
静かな詩ですが、よく読むと「母親の看取り」という劇的なことがあったと判ります。「高尾」に行く理由は分りませんが、そのことと関係があるのかもしれません。大変な時期が過ぎて「雪の朝の電車に寄り添っている」二人。人生の中で起きる様々なことを真摯に対処している夫婦の姿を思い浮かべました。しみじみとしたものを感じます。
画像で貼り付けた「」はしがらみ≠ニ読みます。私のパソコンでは表現できませんので、ちょっと見難いのですが画像としました。ご了承ください。
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