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「モンガラ
カワハギ」 |
新井克彦画 |
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2004.12.13(月)
午後から東京本社の関連部署と打合せをしました。厳密にはこの10月から分社化しましたから別会社になるんですが、まあ、もとは同じ会社ということで、言いたいことをせいせいと言わせてもらいました。もう半年も前から、出向いて説明をするように求めていたものがやっと実現しました。そこは販売部門、私は工場部門ということで意見の食違いがあって、一度きちんとやっておかなければいけないと思っていたのです。
もちろん相手にも言い分はあって、それはそれで聞きましたけど、工場としては出来ることと出来ないことがある、仮に出来ると言った場合には、これだけの研究費・設備費が掛ること、それを無視した販売は当社の信用に関わることを説明しました。判ってくれたのかなと思います。以前にも別件で同じような説明をしたことがあるのですが、その時の相手は若い女性担当者だったので、ちょっと責めが甘かったかな(^^; 今回は同年配の男ばっかり4人ですから、かなり辛く当ったかもしれません。でも、品質の責任者は私ですからね、変なことをやってお客さんから最終的に責められるのは私なんです。場合によっては刑事告発を受けることだって無いとは言えません。いろいろな企業が問題を起こして、社会的な責任を問われている昨今、他人毎とばかりは言えないのです。久しぶりに強い態度をとってしまった会議でした。
○詩誌『青い階段』76号 |
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2004.12.1 |
横浜市西区 |
浅野章子氏 発行 |
500円 |
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放言または訛り 廣野弘子
あァあ・・・。あずましくない。
落着かないし 窮屈だし 居心地悪いし
私の居るところではなさそうだと思いながら
たまに褒められると
もぞっこい。
くすぐったい感覚も悪くはなくて 心に
錠ぴんかって 鍵かけて
こんなもの投げてやれ 捨ててやれと
ごんぼほりたい ぐずりたい本音を隠している
気立てなど 何の役に立ったのだろう
だっちりみたいな だらしない格好して
おんな・子は めんこくなきゃが口ぐせの
働き者で 美人で 身支度のいい人だったけれど
母親の一生は あんばいの悪いことばかり
半可くさい 馬鹿らしい 呪文でも唱えたいのに
いいしょ いいべさ いいんでないかい
褒めてやり ほんの少し主張して
あとは まるごと協調して
ばくってやるかいと今更言われても
母親は墓の下
私には可愛い初孫も生まれて 何事も
取り替えるには おそすぎる
標準語で生きて来たけれど
方言という 訛りという
私の第一言語
それは自在な力で 輝きを放ちながら
野を駆け 草木を嗅ぎ
海に潜りはしなかったか
タイトルの「放言」は「方言」の誤植かと思いましたけど、合っているようですね。作品は「放言」だと自嘲しているようです。作品の中身も面白いけどタイトルも面白いですね。
「第一言語」は確かに「自在な力で 輝きを放ちながら/野を駆け 草木を嗅ぎ/海に潜」っていたと思います。私も小学校3年までは福島県の浜通りや北海道の方言を使っていましたから、この感覚はよく判ります。いつの間にか「標準語で生きて来」てしまって、「輝き」が無くなってしまったのだなと改めて感じさせられた作品です。
○詩とエッセイ誌『沙漠』236号 |
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2004.12.10 |
北九州市小倉北区 |
沙漠詩人集団事務局・餘戸義雄氏
発行 |
300円 |
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救けだされた子犬 河野正彦
排水溝の底から
子犬の鳴き声が聞こえる
早く救け出してやらねば…
人々が集まり 騒ぎはじめる
手を伸ばしても届かない…
腹ばいになった若い男が叫ぶ
役所に連絡しよう…
数人がいっせいに駆け出す
市役所 警察 消防署 テレビ局…
レスキュー隊まで出動し
溜桝が壊され
子犬が姿をあらわした
人々は一斉に拍手を送り続けた
飼主が分からなかったので
子犬は役所が預かることになった
よかった よかった…
満ち足りた思いを抱きながら
人々は散っていった
溜桝はすぐに復旧されたが
数日のち
条令の定めにより
子犬は 薬殺されてしまった
拍手を送り続けた人たちは
誰も そのことを知らなかった
衝撃的な内容の作品だと思います。「条令の定めにより/子犬は 薬殺されてしまった」ことが一番の衝撃なのですが、それ以上に「条令」の前ではどんな状態で「救けだされた子犬」であったかに関りなく「定め」が優先するという事実です。もちろん「条令」ですから、「役所」によって対応が違うのでしょうけど、いかにもありそうな作品だなと思います。
善意と「定め」の壁、「拍手を送り続けた人たちは/誰も そのことを知らなかった」という「役所」の対応、などなど問題をはらんだ作品だと思いました。
○藤森里美氏詩集『さすらいへの夢』 |
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2004.9.26 |
長野県諏訪市 |
ゆすりか社刊 |
1429円+税 |
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漂
泊
これ すみか
是がまあ つひの栖か 雪五尺
もみじにかくれ
鴨は巣立った
あかまんまの花
咲いている
軒に 群がる蜂たちは
せわしなくして まじかそう
泣いて 笑って
季節はめぐり
集団下手な人間が
せかされている
生涯学習時代に
命を学ぶ講座は ないものか
「湖の国から」と副題がついており、全編に一茶の句が添えられた詩集です。信州の自然と一茶の句を一体とさせた詩集と云えましょう。紹介した作品は、まさにそのものズバリの「漂泊」です。「集団下手な人間が/せかされている」と人間世界を見、「命を学ぶ講座は ないものか」と鋭い切り込みを入れているところが見事だと思います。円熟してきた詩人の深みのある詩集だと思いました。
○季刊詩誌『ゆすりか』63号 |
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2005.1 |
長野県諏訪市 |
ゆすりか社 発行 |
1000円+税 |
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なれ初め 木村孝夫
小さな変化だった
できごととはその積み重ねであったとは
振り返ると
たたずむものが影のように交わっている
手を添えるように
言葉を添えると形ができあがった
このようにして
生まれるものを知らなかった
若かったと
笑いあう日が遠くにあるような気がしてくる
順序だてて
その始まりであったと
なれ初めに
まだ頬を染めることができるのだろうか
テーマ詩「馴れ初め」の中の1編です。「馴れ初め」は誰にでもあるのですが、面と向かって書くのは意外に難しいように思います。それは私が「頬を染めることができ」なくなったからでしょうね。それに反して作者は「できごととは」「小さな変化」の「積み重ねであった」、「手を添えるように/言葉を添えると形ができあがった」と書けるのですから、いつまでも初々しさを持った詩人だと云えましょう。詩人として大事なものは何かを教えられた作品です。
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