きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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「モンガラ カワハギ」
新井克彦画
 
 

2004.12.30(木)

 年末の貴重な時間は、終日書斎に籠って読書です。何とか年内にいただいた本を読み終わりたいと思っているのですが、まあ、無理でしょうね。好意で贈呈してくれたくれた方には誠に申し訳ありませんが、礼状はもう少しお待ちください。1週間遅れになっています。でも、充実しています。いろいろな見方・考え方を教えてもらえますからね。
 それを優先していますので、まだ年賀状は書いていません(^^; 例年通り元旦に書こうと思っています。こちらもゴメンナサイです。



隔月刊詩誌サロン・デ・ポエート253号
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2004.12.25
名古屋市名東区
中部詩人サロン・滝澤和枝氏 発行
300円
 

    懐かしのオールディーズ    阿部堅磐

   小雨降る遊園地の売店で オールディーズの
   コンパクト・ディスクを買い求めた 家へ帰っ
   て早速プレーヤーにかけた 私の高校生活を
   彩ってくれた様々な曲が流れた

   ポール・アンカの「マイホーム・タウン」を
   聞く  <懐かし故郷の お寺の鐘の音よ・・
   ・・> と歌われたその曲を バイト先の自動
   車修理工場で良く聞いた キャディラックの
   ワックスがけをしながら ラジオから流れる
   メロディーに合わせて 小さな声でハミング
   した そして故郷の山や川を思い描くと 竹
   馬の友の顔が浮かんでは消えた

   デル・シャノンの「悲しき街角」を聞く 下
   宿の仲間のA君が 駅前のレコード屋さんか
   らこの曲のレコードを買ってきたというので
   友人を二人 三人呼んでポピュラー・ソング
   のレコード鑑賞をやった 私たちは意味もわ
   からず 片言の英語の歌詞を真似て歌い合っ
   た A君はレコード鑑賞が大好きでクラシッ
   クから ポピュラー・ソングに至るまで 幅
   広かった A君は高校を終えると新宿にある
   有名なKという書店に勤めた そこでもA君
   はそのビルの二階にある喫茶店を夕方から借
   り切って 社員同志のレコード鑑賞会を開い
   ていた

   ジョン・レイトンの「霧の中のジョニー」を
   聞く クラスメイトのH君が高一の春のバス
   旅行でこの曲を歌っていた (ジョニー・リ
   メンバミー・・・)と女性のコーラスが入る
   この曲を 文化放送の電話リクエストで私も
   よく聞いたものである 朝 学校へ着くとH
   君に 昨日 ラジオ聞いた あの曲 電話リ
   クエストで第二位だったよ と話し合った
   H君はレコードのジャケットを私に見せて
   流麗な調べでその曲を歌った 彼はクラス一
   番英語が堪能だった

   胸震わせた青春のメロディー
と遠く去っていっ
   た若さの時代が心をよぎる

 私にも「懐かし」い曲ばっかりですね。作者は「高校生活」を送っていたようですが、私は中学生でした。「ポール・アンカ」や「デル・シャノン」はビートルズが出現する前の歌手です。「文化放送の電話リクエスト」もよく聞いたものです。その他に9500万人のポピュラーリクエスト≠ニいうラジオ番組もあって、当時の日本の人口が9500万人だったことに由来しています。40年も前の話です。「胸震わせた青春のメロディー」を思い出した作品です。



詩誌『やまどり』33号
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2004.12.4
神奈川県伊勢原市
丹沢大山詩の会 発行
非売品
 

    紙粘土    ゆき

   おひるねの大輝を創る
   まあるい ひとりっこ育ちの栗のような頭
   「ばあばあ」とやっといえる口は半開らき
   黄色いTシャツから伸びた手は
   豆腐をグニュグニュと潰し
   牛乳をひっくり返し
   「ダイダイ」と自らの鼻を突っつく事も忘れ
   結びをゆるく解いている

   お腹のふくらんだロンパンスから
   ツルツルの布目のない脚が投げ出されて
   焼き立てのクリームパンのような甲から
   まだみんなおんなじ長さで
   一本一本がまるでイソギンチャクのように
   思い思いに動くコロッとした不思議な指
   こればっかりは
   こしらえるのがむづかしい


    欲望

   大人の靴を買うため入った店で
   戯れに履かせたサンダル
   抱かれながらその足で
   脱いだ古靴 そっと遠くへ押しやる
   えりな

 同じ作者により3編の詩が載せられていましたが、ここでは2編を紹介してみました。最初の詩は「大輝」君の寝姿を「紙粘土」で創ろうというものです。「まだみんなおんなじ長さで/一本一本がまるでイソギンチャクのように/思い思いに動くコロッとした不思議な指」は「こしらえるのがむづかしい」と、幼児の特徴とその神聖さを巧く表現していると思います。
 「欲望」は「えりな」ちゃんの行動を捉えた作品で、まだ1〜2歳なのでしょうか、すでに目覚めた「欲望」を見事に表現していると思います。思わず微笑んでしまいましたが、人間の本性はここから出発しているんでしょうね。少し、ドキリとさせられた作品です。



季刊詩誌『竜骨』55号
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2004.12.25
さいたま市桜区
高橋次夫氏方・竜骨の会 発行
600円
 

    記録    庭野富吉

      l
   十月二十三日午後五時五十八分
   揺れは波の動きではない直進してきた
   重戦車が地中を走る音もした
   持ち上げられ落ちる前に横に揺れ出した
   揺れは激しくなり目の前が曇ってきた
   机に向っていた私は尻を着いたまま後ずさりし
   書架が倒れるのを避け
   襖につかまって立ち上がった
   天井から吊るした蛍光灯の傘が
   天井板を叩きつけている
   普段見えない所の埃が舞っで曇ったのだ
   台所の妻に大丈夫かと声を掛ける
   ハーイという返事が返ってきた
   三分間揺れていただろうか
   電気は消えた
   家は持ちこたえた
   寒い風が入ってくるので窓を調べる
   サッシの窓は鍵がはずれ真ん中により両側が開いていた
   外に出て家の周りを見て回る
   柿の木に立て掛けた丸太が一本倒れていた

      2
   午後六時十二分
   茶の間で妻とラジオを聴いていた
   さっきと全く同じ揺れだ
   妻と二人柱につかまって動かないでいた
   これは余震だと少し落ち着いていた
   揺れが収まって電池で照らして
   家の中を見回った
   倒れた家具もなかった
   電気が点きそうもないので蝋燭を探した
   子供達が小さい頃
   クリスマスに灯した赤い蝋燭が残っていた

      3
   午後六時三十四分
   地鳴りが襲ってきた
   グツンと家が持ち上がり揺れ出した
   轟音を立てて家が揺れる
   余震ではない 柱につかまりながら思った
   表に逃げ出すなど考えつかなかった
   柱のほぞが抜けたら潰れると思った
   ほぞは抜けず家は倒れずに済んだ
   壁も崩れなかった
   激しい音は家が揺れる音
   家具が倒れる音 砕ける音だった
   玄関の壁に掛けた大きな絵が弾き飛ばされていた
   外に出てみると立て掛けておいた
   アルミ製の脚立 亡き父ゆかりのえごの木の太い丸太が
   吹っ飛んでいた
   どの部屋もひっくり返って足の踏み場もない
   暗くて何がどうなっているのか分からない
   台所は皿やコップの破片でうかつに入れない
   水が出ない ガスが点かない
   ラジオが被害の情報を伝え出した
   市内で若い男が外壁落下の直撃で死亡のニュースが流れる

      4
   お昼に炊いたご飯が残っていた
   ポットにはお湯が入っていた
   八時過ぎ夕食を食べた
   妻の開けた缶詰は鮭の骨だけの缶詰
   カルシュームが摂れていいと妻は言う
   私は骨より身が食べたいと言う
   近所の人は車を路上に停め
   そこで寝るらしくぼそぼそ物音がする
   わが家は茶の間を片付けて寝ることにする
   時折 余震が来る
   妻と顔を見合わせ立ち上がりもしなくなった
   蝋燭の灯を見ながら焼酎のお湯割を飲む
   飲み忘れた薬を酒で飲みこむ
   建前の後 左官屋が入る前に
   土台のコンクリートの上の柱のボルトを
   よく閉めるように兄に言われた
   その兄の遺影も茶箪笥の上からふっ飛んだ
   その夜は柱のほぞが抜ける夢を
   家が潰れる夢を繰り返し見た
   家はゆっくり ゆっくり崩れた

 作者は新潟県川口町にお住まいのようです。新潟中越地震の震源地ですね。今回の地震で新潟の詩人たちにも被害があったのではないかと思いますが、当事者の作品としては初めて拝見しました。まさに「記録」としての価値がある作品だと思い、全行を紹介させていただました。
 詩句としても「重戦車が地中を走る音」「天井から吊るした蛍光灯の傘が/天井板を叩きつけている」「家はゆっくり ゆっくり崩れた」などは単なる記録を越えた詩人の言葉だと思います。再建までにはまだまだ時間も掛かって大変だろうと想像します。1日も早い復旧を願っています。




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