きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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愛嬢(愛婆?) 百個(モモコ)、
   初体験の朝陽輝く雪原を往く!
2005.2.27
自宅庭にて
 

2005.3.23(水)

 今週は月曜の休日に出勤したせいか妙に働く気持が高じて、毎朝7時半に会社に入っています。トシのせいだと思うのですが早く起きるのが苦になりません(^^; 早く会社に行くと、なぜか早く帰れる。18時半には帰るようにしていますから、いつもより30分早い計算になって、気分的に楽ですね。本当は8時間なら8時間、定時で帰るのが理想ですけど、そんなことをやっていたら仕事がたまる一方ですから、2時間ぐらいは残業しないといけません。早く行っても遅くても2時間は2時間。それなら早く会社に入った方がいいのだとヘンなところで納得しています。




詩誌ERA4号
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2005.3.31
埼玉県入間郡毛呂山町
北岡淳子氏方・ERAの会 発行
500円
 

    白鷺    日原正彦

   ある日わたくしは丘をのぼってゆく
   わたくしをのぼってゆく
   わたくしよりひくいわたくしへ
   わたくしよりひくいわたくしよりひくいわたくしから
   わたくしよりひくいわたくしよりひくいわたくしより…

   わたくしとはなんと遠いのだろう

   大空がわたくしを無視する まっさおに その
   激しい静寂の巨大なたなごころに両耳をぶたれながら
   丘のうえにたどりつく と
   幅三百年ほどはあろうか
   大きなあくびをしている 小さな湖に出た
   それはわたくしの
   昨日今日明日を うすくうすく無限に輪切りにしていくような
   まるで無でもねころべるぐらいの平たさだった
   そのとき

   森の向こうから 大空を抱きかかえるように大きな風がやってきた
   それに誘われるように
   対岸の まっしろい三羽が飛びたった
   大きくのけぞる青空
   湖は喜びのさざなみを走らせながら三羽の飛翔線の三つの影をつつ
   つと銀色に曳いてゆく
   仰げば
   逆光!
   激しく嫉妬する太陽によって真黒に塗り潰されてしまった三羽はそ
   のまま北北東の山の彼方へ消えた

   ある日わたくしは濃い緑淡い緑がそれぞれを洗いあう林の小道を抜
   けて
   ぷらちな色の大きな鉄橋を渡った
   橋の中ほどまで来ると 上流から
   吹いてくる湿った風には古代紫色した蘇苔類の匂いがあった
   ふと 川をのぞき見ると
   浅瀬に 一羽の白鷺が佇んでいた
   それは水にさえも汚されることを拒んだ完全無欠な白だった
   それは白が白をくりかえしくりかえし脱皮しながら浮かびあがって
   くる白
   まっしろな白の 白よりもっとしろい 羽化
   白のその限りない否定としての しろ
   白のなかの白の王 だった
   わたくしは思わず叫んだ

   おお 絶大なる白よ!

   そのときだ
   白鷺が ゆっくりと ふりむいたのだ
   いや ふりむいたのは白鷺だけではなかった
   しゅらしゅらと無数の鱗の幻影を散らしながら流れてゆく川
   それをぎらぎらと跨いでいる橋 その
   たとえば骨と化した虹 のような弧を描く鉄筋の聞から
   みなぎっている 空の青
   何千何万の緑のまぶたを開いては閉じ閉じては開きながらひかりを
   かきまわしつづける樹樹 そして山々 その山気
   風
   風の中にまなざしを濡らして立っているわたくしの
   頬の かすかな痩せ
   こころ
   その心の裏口から今出ていこうとしているたとえば遠い追憶
   それらすべてが
   その一瞬に ふりむいたのだ

   世界の一瞥のなかでわたくしのひとみが光ったのだ

   ある日わたくしは丘を下りてゆく
   わたくしを下りてゆく
   わたくしよりたかいわたくしへ
   わたくしよりたかいわたくしよりたかいわたくしから
   わたくしよりたかいわたくしよりたかいわたくしより…

   わたくしとはなんと浅いのだろう

   野に下り立てば いつしか
   あたりいちめん草たちは数百万年のありとあらゆる緑をさわさわさ
   わさわと唱えつづけている そのとき
   遠く 一本の大樹が
   かすかに震え そしてきらめき
   ぷっと一羽の小鳥を吐き出した
   それはまるで
   この世界の隅々にまで染みわたっているとてつもない無言のおおい
   さに おかしくて
   吹き出してしまったように

 優れた比喩の多い作品だと思います。第3連の「幅三百年ほどはあろうか」「まるで無でもねころべるぐらいの平たさだった」、第4連「の向こうから 大空を抱きかかえるように大きな風がやってきた」、第5連の「濃い緑淡い緑がそれぞれを洗いあう林の小道」なんてフレーズも佳いですね。同じ5連の「水にさえも汚されることを拒んだ完全無欠な白」、「白が白をくりかえしくりかえし脱皮しながら浮かびあがって/くる白」も具体性があっておもしろいと思います。そして、何と言っても最終連の小鳥の飛び立つさまを「遠く 一本の大樹が/かすかに震え そしてきらめき/ぷっと一羽の小鳥を吐き出した」と表現したフレーズに魅了されました。詩の持つ魅力を余すことなく表出させた作品と云えましょう。



詩誌『潮流詩派』201号
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2005.4.1
東京都中野区
潮流詩派の会・村田正夫氏 発行
525円
 

    道    勝嶋啓太

   俺の家の前に出来た <みち> が
   どうにも不愉快な奴で 困る
    <みち> は <みち> でも
   例えば 「路」とか 「径」とかならば
   こちらだって 我慢の仕様もあるが
   よりによって
   「道」だ なんて名乗りやがる
   テメエは
   ただ地面に無造作に引かれた
   一本の線に過ぎないくせに
   ヒトの生き死にについて
   やたらとワケ知り顔で 説教しやがる
   俺は ただ駅に行きたいだけなのに
   希望 とか 将来 とか 夢 とか
   わけのわからねェ言葉並べて 語りかけて
   俺を駅に行かせなかったり
   俺の背後で
   スゲエ偽善的な微笑を浮かべながら
   気色悪い猫撫で声で呼びかけて
   俺を家に閉じ込めたり
   挙げ句の果てに 最近では
   三丁目の「道」と結託して
   これからは <どう> と呼べ などと
   とんでもない要求を突きつけてきて
   もう 殺すしかない!

 特集「道」のなかの作品です。他の人の詩はどちらかと言うと道に好意的な感情を持った作品が多いのですが、この作者はまったく逆で、そこがおもしろいと思いました。「路」や「径」なら許せるが「道」と名乗り、「挙げ句の果てに」は「これからは <どう> と呼べ などと」言われたのでは「もう 殺すしかない!」と思うところなど、最高ですね。「希望 とか 将来 とか 夢 とか」の「道」への反発が根底にあると読み取れますから、それに基づいた作品でしょうけど、なかなか書けるものではないと思います。



詩誌『流』22号
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2005.3.3
川崎市宮前区
宮前詩の会 発行
非売品
 

    花嫁と銀杏    中田紀子

   花嫁さんだよ見にいこう
   和子ちゃんの声
   素足にサンダルをつっかけて
   おもての通りへはしる

   銀杏が黄色い葉を なみなみとゆらし
   道路は まだらに色づいて
   ところどころ 束になった山が
   かさかさと足もとの邪魔をした

   白い布が髪や額を囲い
   半分見えない顔が気になって
   下からのぞきこんだわたしは
   あっと目眩がした

   白く塗られた肌
   にせもののような唇
   哀しみをつまらせた息が
   白い手や 大きな扇子にかかり

   銀杏の葉が黒い襟もとに一枚
   金色の帯に一枚
   長い袖の模様にも一枚
   意味もなく降りかかり

   そこに佇むほかなかった
   輝いた顔を見るつもりでいたから
   おさまりきらない量の鼓動が
   からだじゅうに降りしきった

   金襴緞子の帯しめながら花嫁ごりょうは
   という歌を知ったのはそれからずっと後だった
   結婚にときめきを覚えなくなったのは
   深層部にいまも落葉が積もっているからだろうか

 今の花嫁さんと違って、昔は「哀しみをつまらせた」ものがあったのかもしれません。「輝いた顔を見るつもりでいた」のに、現実は「目眩」を覚えるものだったというショックが良く出ていると思います。それが「結婚にときめきを覚えなくなった」原因だと結ばれていますが、そんなものかもしれませんね。「わたし」の「深層部」を描いた作品として、作者にはいつまでも残る詩だと思います。




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