きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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桜(春めき)
2005.3.25
神奈川県南足柄市・春木径にて
 

2005.4.15(金)

 恒例の金曜呑み会では長崎県の焼酎「無一物」を呑みました。初めてでしたがコクがあって美味かったです。色もちょっと黄金色で、見るからに旨そうという感じです。1週間の仕事が終って、旨い酒を呑んで、いい夜だったなあ。今日の仕事? ちゃんとやりましたよ(^^;




詩誌『火皿』107号
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2005.4.1
広島市安佐南区
福谷昭二氏方・火皿詩話会 発行
500円
 

   詩作品
    資料館T……………………………………御庄 博実  2
    蜂の巣の砦…………………………………福谷 昭二  4
    世間話………………………………………松本賀久子  6
    テレビよ今夜も……………………………津田てるお  8
    晴天…………………………………………江戸我美保 10
    リコーダーを吹く…………………………沢見 礼子 12
    天国の母へ……………………………‥…的場いく子 14
    上海…………………………………………的場いく子 15
    箱……………………………………………川本 洋子 16
    兄弟…………………………………………川本 洋子 17
    道は…………………………………………福島 美香 18
    またこんな話を開きました………………長津功三良 20
    バラ…………………………………………松井 博文 22

   井藤綱一追悼
    井藤綱一さん追悼…………………………福谷 昭二 24
    詩集「崖と少女」をめぐって……………福谷 昭二 26
     初期詩篇―青年期の苦渋と抒情―
    井藤綱一さんの詩について………………長津功三良 30

   故ながとかずお記念詩集評
    「へん路みち」を想う……………………御庄 博美 34
    「詩体」ということ………………………津田てるお 37

   エッセイ
    「火皿」詩話会の研究会…………………海老根 勲 39
   記録と報告
    最近の「火皿」詩話会の行事から(2) …福谷 昭二 41
   編集後記


    世間話    松本賀久子

   因果を含めるという奴だ

   尼崎の
   とある駅前にある診療所で
   薬剤師として 初めて働き始めたころ
   父の友人である写真屋のおじさんが
   そっと私を呼んでこう言った

   あの辺りにはな
   いろんな人が住んでいて
   例えばな
   金
(キム)さんとか…

   「あの辺り」の事なら
   少しなら知っていた
   JRのガード下に並んでいる焼肉屋におでん屋
   父と一緒に行ったことのあるすし屋
   薄汚れた建物の小学枚に
   排気ガスでいつも埃っぽい小さな 児童公園

   そこで
   本当にそう思っていたから
   即座に
   「そんなことは何とも思っていません」と答えたら
   説教されたよ
   一時間と少しばかり

   説教の内容は
   私の脳の中では 白紙
   真っ白けで何も思い出せないが
   私はただ微笑みを浮かべて
   それは見事な微笑みを浮かべて
   一時間と少しの間聞いていた
   相手の話を

   おじさんは
   「それじゃ、ええと」と言うと 父のことや
   全くの世間話に話を切り替えてしまったが

   あれも やはり世間話だったと
   そう 受け取らなければいけなかったのだ 私は

   続きの「世間話」が終わっても
   私の顔からその微笑みが
   消えることなど
   なかった

 こういう風にして「あの辺り」のことが伝えられていくのかと、ちょっと戦慄を覚えました。誰でもない、国家でも学校でもなくて「父の友人である写真屋のおじさん」のような人が風潮をつくっているのだと改めて思います。救いは「それは見事な微笑みを浮かべて/一時間と少しの間聞」くことが出来る人が対極にいるということですね。「そんなことは何とも思っていません」と対応できる人が増えることを望むばかりです。



月刊詩誌『柵』220号
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2005.3.20
大阪府箕面市
詩画工房・志賀英夫氏 発行
600円
 

   現代詩展望 詩的言語の真偽     中村不二夫 82
     本当の自分探し=詩の言葉―
   自伝的戦後詩観(4) 定型と、抵抗と  津坂治男 86
   吉本隆明論(2) 出発          森 徳治 90
   流動する世界の中の日本の詩とは (6)芸術としての戦争詩 水崎野里子 94
   「戦後詩誌の系譜」19 昭和39年48誌追補11誌  中村不二夫 志賀英夫 110
   風見鶏・高階杞一 埋田昇二 泰健一郎 木村雅美 佐藤 孝     120

   詩作品
    進  一男  美しい人 4
    川内 久栄  うら枯れゆく村 天空の一軒 6
    小島 禄琅  助六ずしと水平線 8
    なたとしこ  もがり笛など 10
    宗   昇  折り返し点 12
    山南 律子  二羽の小鳥 14
    中原 道夫  ペット 16
    肌勢とみ子  葬る 18
    佐藤 勝太  失投 20
    名古きよえ  朝食会 22
    小城江壮智  春日 24
    松田 悦子  暮れの一日 26
    山崎  森  二〇〇五年トルソオ 28
    伍東 ちか  蜘蛛の糸に… 30
    南  邦和   <薔薇屋> にて 32
    小沢 千恵  赤い壁掛け布 34
    大貫 裕司  黒の儀式 36
    上野  潤  和蘭物語14 38
    安森ソノ子  アポリネールの墓 40
    檜山 三郎  「タマ」絶命にまつわること 42
    織田美沙子  飼う 44
    高橋サブロー チロリアンハットの街道 47
    木村 利行  片曽根山に寄せて 50
    小野  肇  消えた鉱山町 52
    今泉 協子  電話の声 54
    岩本  健  卵 ほか 56
    川端 律子  待針 58
    門林 岩雄  冬 他 60
    山尾 管恵  運命 62
    奥田 博之  火 64
    北村 愛子  母の顔 66
    清水 一郎  糸をたぐれば 68
    鈴木 一成  耄老妄言 70
    水崎野里子  天平の甍 72
    立原 昌保  (やがて夜も明ける頃だ)と 74
    野老比左子  炎の天馬 76
    若狭 雅裕  春日 78
    前田 孝一  冬の蝶 80

   続・遠い歌 47 マイノリティの詩学 石原 武  98
      アメリカのイラク狂想曲
   「青い空の下で 13 チベットの詩人の自伝 ホートサング・ジグメ 102
      北京への留学              水崎野里子・訳
   コクトオ覚書195コクトオ自画像[知られざる男]15   三木英治 106
   東日本・三冊の詩集 菊池敏子『ポキ ポキ』      中原道夫 122
      金田久璋『言問いとことほぎ』 和田文雄『毛野けぬ』
   西日本・三冊の詩集 井口幻太郎『旧街道の通過する町』 佐藤勝太 127
      今井文世『睡蓮空間』 津坂治男『天命』
   受贈図書 132  受贈詩誌 133  柵通信 130  身辺雑記 134


    助六ずしと水平線    小島禄琅

   牛どんを食べたことがあったかなかったか
   定かでない
   こどもの頃 父に連れられて行った港の町で
   助六ずしを食べた記憶は鮮明だ
   ――えらくうまかった
   突堤に横づけの白い船体が
   とほうもなく大きく
   噛みしめた物の味を心にこびりつかせた
   たしかカモメが舞っていた

   海は視野いっぱいに広がり
   沖に水平線が気持ちよく引かれていた
   少年のぼくは
   助六ずしと水平線を
   胸に刻みつけて成長した
   素朴で広大な潮路と
   光り耀やく果てしもない水平線が
   ぼくの原風景となったのはまぎれもない
   そんて そのとき
   口の中で噛み砕かれた助六ずしが
   母親の乳ぶさめいた
   懐しさと親しみを拡げながら
   胃の腑に落ちていったのも忘れられない現実だ

   ぼくはそんな夢と現実を胸に織り込みながら
   長い坂道を登り降りするのが生きるということであることなど
   知るよしもなく 知ろうともしなかった

 最終連がよく効いている作品だと思います。「こどもの頃」は「知るよしもなく 知ろうともしなかった」ことはいっぱいありましたけど、何といっても「長い坂道を登り降りするのが生きるということである」ということを知らなかったのが最大だったかもしれませんね。歳を経なければ判らないことはたくさんありますけど、それがようやく判り始めたという実感があります。そんなことを考えさせられた作品です。



詩誌『鳥』44号
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2005.4.10
京都市右京区
洛西書院・土田英雄氏 発行
500円
 

   詩作品
    中東ゆうき  鷲羽山の猫  2
    岩田福次郎  紙挟み  5
           寝椅子  6
    鎌たけひと  赤紙  8
           バスストップ 10
    植木容子   電話 12

   エッセイ
    詩の持つ豊かな「リズム」や「音」で遊ぶ 内部恵子 15
    破題 岩田福次郎 18

   詩作品
    なす・こういち 今日もゆく 20
           仕業 22
    土田英雄   神に 25
    元原孝司   散髪 28
           パチンコ 29
           父の形見 31
    佐倉義信   こどもの詩は人類の世界遺産だ 33
            −川崎洋さん追悼
    阪本英子   朴子渓哀歌 38
            −「台湾のいもっこ」蔡徳文氏に捧ぐ

   【特別寄稿】神保町裏 新井正一郎 42
   証言と警告の書『タルタロスの人々』 土田英雄 46
   嵯峨野散策 続 阪本英子 49
   鳥語妄言 51
   あとがき 52


    散髪    元原孝司

   数えきれない小さなしがらみを
   少しだけ残して
   シャキシャキと切り落とし
   こびりついた後悔は
   シャンプーで洗い流し
   自分と世間の境界で
   わけてもらう

   顔にへばりついたお世辞や嘘は
   石鹸を泡立てて
   きれいさっぱり剃り落とし
   仕上げに
   にぶった頭と鈍感な心に
   ポンポンと
   合図をおくる

   メガネをかけて
   見えてきたのは
   想像以上の
   老いた
   自分

 「散髪」は気持の良いものですが、この作品はその気持良さと裏腹の本音・本質を笑いの要素を加えて、巧く表現していると思います。「数えきれない小さなしがらみ」「こびりついた後悔」「顔にへばりついたお世辞や嘘」「にぶった頭と鈍感な心」など、それこそ「ポンポンと」出てきて痛快です。最終連がまた佳いですね。自分を狂言回しにしているから成功した作品だと思いました。




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