きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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桜(春めき)
2005.3.25
神奈川県南足柄市・春木径にて
 

2005.4.19(火)

 小集団活動の発表会が近づいていて、課内で選考されたチームが遅くまで練習していました。私が直接関与するグループではありませんが、上位者としてコメントを求められていますので、後半つき合いました。模擬発表を聞いて、気になったところをコメントする程度ですけど、少しは役立ったかな? 終ったのは20時。彼らはそのあとも残って練習していましたから21時、22時になっただろうと思います。少しでも上位に食い込んでくれればいいんですが…。

 小集団活動は定着していますのでご存知の方、体験された方も多いと思います。製造部門の現場には有効な手法だと思っています。もちろん成果も大いに上がっています。そんな底辺からの支えが今の日本の製造業の強みと云えましょう。若い人が真剣に課題に取り組んでいる姿は頼もしいものです。私にとっては、人間の可能性を信じられる光景ですね。




詩誌『きょうは詩人』創刊号
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2005.4.15
東京都世田谷区
アトリエ夢人館 発行
700円
 

   ●詩
   新聞紙            長嶋 南子  2
   雪の下            伊藤 啓子  4
   あさ、あさ、明るいあさ    森 やすこ  8
   川面             赤地ヒロ子 10
   冬そこを通ると        吉井  淑 12
   宴席             鈴木 芳子 14
   雪の果て           鈴木 芳子 16
   母              小柳 玲子 18
   父              小柳 玲子 19

   ●エッセイ
   とりどし・とりの詩            20
   女の詩・男の詩
   花はちるモノ人は死ぬモノ
    ――しっかり長女 石垣りん 長嶋 南子 26
   石原書郎……いまになれば   小柳 玲子 29

   ノート                  32


    新聞紙    長嶋南子

   いちにちを引き裂く
   細長い短冊になって
   新聞紙がひと山
   猫がきて用をたす
   戦争が株式市況が星取表が
   ごちゃごちゃにまじりあって
   におってくる

   この夏は女友だちとでかける
   のんきにしやべりあって
   カルタゴの遺跡 ローマの水道橋
   サハラ砂漠で夫の骨を少しまいて
   わたしの夏は終わる

   それでも爆弾が破裂して
   あらたに遺跡がつくられている
   つぎに株価が乱高下して
   友だちの顔を赤くしたり青くしたり
   あいかわらず相撲がはじまり

   誰もいないわたしの夜は
   新聞紙を引き裂くこと
   猫は用をたすこと
   おやすみ おやすみ

 『きょうは詩人』という詩誌はすでに存在していて、今回また1号ということでしたから、あれ?とおもったのですが、今までの詩誌は終刊で、新たな出発だそうです。誌名は気に入っているので踏襲したとあとがき(ノート)にありました。

 紹介した作品は、第1連の「ごちゃごちゃにまじりあって/におってくる」というフレーズを見たとき、いつもの長嶋ワールドを感じましたけど、それだけではありませんでした。最終連がよく効いている作品だと思います。「誰もいないわたしの夜」が生きていて、「おやすみ おやすみ」という繰返しが「サハラ砂漠で夫の骨を少しまい」た「わたし」の心境を表出させています。「わたしの夏は終わる」というフレーズも奏功していると云えるでしょう。『きょうは詩人』とともに今後の新たな展開を予感させる作品です。



詩誌『左庭』4号
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2005.3.31
京都市右京区
山口賀代子氏方・さてい 発行
500円
 

   詩
    母のライバル              山口賀代子… 2
    現(うつつ)              山口賀代子… 4
    イノセンス               堀江沙オリ… 8
    聖家族                 堀江沙オリ…10
   俳句
    西条八十、あるいは鳴りやまぬオルゴール 江里 昭彦…14
   散文
    昭彦の旅日記一雪の蘆溝橋        江里 昭彦…16
  【さていのうと】
    ・首相よ、金子みすゞを知っていますか? 掘江沙オリ…20
    ・パンの耳               江里 昭彦…22
    ・うしなわれた時間           山口賀代子…23
   あとがき                 ………………24


    母のライバル    山口賀代子

   テレビを眺めていると
   「このひとをみると嫌になる」と母がいうので画面をみると
   あでやかにわらう森光子さんの顔があった
   「わたしと同い年なのにいつまでも若くて綺麗」と嘆く母の髪は
   真白
(ましろ)である
   大病で入院した病室で看護婦からおばあちゃんと呼びかけられて
   いた母は六十歳だったが
   森さんはどうみても四十代である
   それからテレビで森さんをみるたび
   ほらほらお母ちゃんと同い年の人といいながらみていた

   ある年
   森光子さんが国から褒賞されることになり年齢と生年が公表され
   母が同じ年の生まれとおもっていた森さんは一歳年長だった
   それ以後母の関心は森さんから遠のいたが
   ときどきおもいだしたように
   森光子さんは私より年上なのにいつまでも若いなどといっている

 男にもあるのかもしれませんが、こういう感覚というのは女性特有なのでしょうか。「いつまでも若くて綺麗」というのは羨望と同時に「嫌になる」という対象なんですね。私は髪の毛が「真白」なんですけど、同年配の男では黒く染めている人も多いようです。もっとも若者は茶髪なんでしょうが…。いずれにしろ「同じ年の生まれ」というのは「ライバル」意識を持つようです。そんな意識が希薄な私には理解できないことですけど、そういうもんなんだなと妙に納得した作品です。



詩誌『野ばら』36号
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2005.3.15
埼玉県上尾市
須之内節子氏方 <野ばらの会> 発行
500円
 

   石垣りんさんへ            高田 喜佐  4
   笑顔を                有馬 三郎  6
   いもきり               丹羽きよみ  8
   同窓会                南園由紀子 10
   わたしの髪              横堀 佳子 12
   雪稜                 架田 仁緒 14
   父に似た人              梨 原  薫 16
   左腕の猫               橋本 京子 18
   心細い年齢              青 山  功 20
   秋の朝                須之内節子 22
   スタート・ボタン           志賀アヤノ 24
   銀杏               むらかみみちこ 26
   風景の島               犬童架津代 28
   海色のガラス玉            峯尾 玲子 30
   鏡の中                太田美智代 32
   訪問日誌               笠木 幸子 34
   特急列車の止まらない駅        紺野あずさ 36

   峯尾玲子詩集『水切森』        宮城 昭子 38
    あたたかい思いやりと刃物への思い
   木かげ                      40
   編集後記                     48


    笑顔を    有馬三郎

   東京の通勤電車
   押されても押し返しても
   足を踏んでも無口
   人は通勤貨物

   この無表情は何
   この無関心な顔は何
   この気難しい目と口元
   この孤高な表情は何

   南の国の朝
   道路は人にあふれ
   ほほえみにあふれ
   明るい声
   笑顔の代償でお金
   笑顔が先払だけど
   笑顔でみんな明るくなる

   東京の顔
   収入を確信した顔
   自信に満ちた顔
   笑顔は契約外
   でも
   笑顔や明るい表情
   周囲の反射で
   あなたにも灯りがともる

 「通勤貨物」とは巧いことを謂ったものだと思います。私は会社までクルマで15分ほどの通勤なので、ほとんど体験していないのですが、それでもたまに出張などで遭遇するときがあります。まさに貨物≠ナすね。
 「笑顔は契約外」というフレーズもおもしろいです。確かに、ちょっとした「笑顔や明るい表情」で環境が変ると思います。精神的なゆとりの大事さを伝えている作品だと思いました。



詩誌『青い階段』77号
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2005.4.30
横浜市西区
浅野章子氏 発行
500円
 

   木よ         荒船 健次  2
   冬の午後       野村 玉江  6
   真夜中の子守歌    浅野 幸子  8
   内向するもの     八潮  煉 10
   短詩 四月     鈴木どるかす 12
   こでまり       森口 祥子 14
   そこ         坂多 瑩子 16
   ハーメルンの町で   福井すみ代 18
   メダカ        小沢 千恵 20
   スマイル       廣野 弘子 22

   ピロティ
    福井すみ代・八潮煉・野村玉江
    編集後記


    真夜中の子守歌  浅野章子

   「パリは小雨になりそうです」
   テレビの世界の天気予報は
   甘い恋の香りを運んでくる
   灯りを消して 目を閉じる
   コートの襟を立てた恋人たちの
   シルエットが
   無機質な画面の裏に写ってくる

   「モスクワは雪になるでしょう」
   古びた蓄音機のラッパの耳で
   聞いている
   眠れぬ大地に雪が積もってゆく
   雪の重さがかさなり
   遥かな木々を揺さぶる風の歌が
   眠れぬ夜の風景に響いてくる

   「ロンドンは霧が深いでしょう」
   箱型の黒いセダンのヘッドライトが
   まつげを濡らして通り過ぎてゆく

   突然 耳をきる車のきしむ音
   カーテンを少し開けて
   桜川新道をのぞく
   フルスピードで車が行き来している
   私の眠りはどこに行ってしまったのか

   雨の舗道
   雪の森
   霧の街のガス灯
   世界の天気予報は今夜の夢の子守歌
   低い音をオフタイマーにゆだねると
   ようやくわたしが沈んでゆく
   暗い闇のなかに

 確かに「世界の天気予報」というものは「子守歌」のようなものかもしれませんね。「パリ」「モスクワ」「ロンドン」、そのほか世界中の都市の天気予報をやっている時間は深夜ですし、行ったことのない都市をあれこれ想像しながら天気予報を聞いていると、いつしか眠気に襲われて…。そういえば私も何度か経験していることを思い出しました。日常のささいなことを見事に切り取った佳品だと思います。



山口敦子氏詩・絵本『ばあばとあそぼう』
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高橋宏幸氏絵
2005.3.26
東京都中央区
銀の鈴社刊
1500円+税
 

   にじのドーナツ――4
   ゆうやけのさんぽ――6
   るすばん――8
   あっ くだものがない――10
   セーラームーンになりたいな――12
   しりとりゲーム――14
   ねんねの一
(いち)――16
   おつきさまとおさんぽ――18
   ポッキーのシャボンだま――20
   おつきさまはあかしんごう――22
   さんかくのゆき――24
   おてがみのかくれんぼ――26
   どうぶつえんになったペーパーたち――28
   セミのきゅうきゅうしゃ――32
   あのほしをとって――34
   あじさいのかみ――36
   ぞうさんがわらった――38
   はなびになりたいな――40
   おつきさまにはおくちがない――42
   オナラ プー――44
   あとがき――46


    ゆうやけのさんぽ

   たくみくんとさんぽした
   ゆうやけが あかあかとかがやいていた

   ばあば あのね
   あのゆうやけね
   さっき ほいくえんのにわにもいたんだよ
   くびをかしげて
   ポツンといった

   そうね ゆうやけさんもきっと
   おさんぽがすきなんだね

   「ゆうやけこやけ」を
   ふたりでうたった
   ゆうやけさんに とどけとばかりに

 子供の発想というものは、ときにハッとさせられるものですが、この作品もそうですね。「さっき ほいくえんのにわにもいたんだよ」という、何にも囚われない視線に驚きます。それにも増して、そんな発想を作品化した作者にも敬服しています。
 絵本とは謂え、詩人の言葉で書かれたものですから大人が読んでも楽しめます。お薦めします。




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