きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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桜(春めき)
2005.3.25
神奈川県南足柄市・春木径にて
 

2005.4.28(木)

 4月最後の金曜日。なんとか仕事もこなして明日からのGWを迎えられそうです。5月2日と6日は休暇が取れないので、暦通りの休日になりますが、3連休が2回ですからね、素直に嬉しいです。
 そんな気持の余裕が生れたところでの恒例・金曜呑み会は、行き着けの店で大好きな「獺祭」。これ以上の日本酒は無い!と言い切っちゃいます、、、今のところですが(^^; ま、いずれにしろ、至福の夜でした。




江良亜来子氏詩集『朝に夕に』
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2005.4.7
東京都大田区
鳥影社刊
2000円+税
 

    1 耳      6      27 雨      58
    2 耽溺     8      28 雨      60
    3 桜     10      29 落葉     62
    4 桜     12      30 いちょう   64
    5 霞     14      31 坂道     66
    6 桜     16      32 雨の坂道   68
    7 桜吹雪   18      33 余情     70
    8 葉桜    20      34 黎明     72
    9 遍照    22      35 朝      74
   10 早朝    24      36 名称を超えて 76
   11 簾     26      37 冬のバラ   78
   12 ためいき  28      38 夕空     80
   13 積乱雲   30      39 夕映え    82
   14 炎天下   32      40 夕闇     84
   15 此岸    34      41 幻      86
   16 蝉     36      42 窓辺     88
   17 静寂    38      43 冬晴れ    90
   18 ハミング  40      44 青空     92
   19 感興    42      45 仰角     94
   20 観覧車   44      46 月      96
   21 マスカット 46      47 薄ら日    98
   22 頬杖    48      48 梅      100
   23 暦     50      49 日脚     102
   24 余韻    52      50 春雷     104
   25 時雨    54      51 帽子我が祝祭 106
   26 時雨    56        あとがき   108


    積乱雲

   ああして積乱雲も豪快に嘆いている
   言葉の襞を持て余しては
   漂いながら
   引きずるように
   自ら変形を試み
   天を突く重量となって
   地上を近くする
   言葉を溶かし込んでは
   青空との対比を
   鮮明に鮮明にする
   太陽の前の大胆不敵
   表情のように
   幾層にも重なって
   氷山の動きを
   虚無僧のように動いて行く

 詩集のタイトルはあしたにゆうべに≠ニ読みます。しかし、上の目次を見ていただければ判るように、そのタイトルの作品はありません。「感興」という作品の第1行目に「朝に夕に」と出てきますから、そこから採ったものと思います。粋なタイトルのつけ方ですね。
 紹介した「積乱雲」は佳い言葉が多くて楽しめました。「積乱雲も豪快に嘆いている」「天を突く重量となって」「虚無僧のように動いて行く」などのフレーズに魅かれました。それぞれが1編の詩を創れるほどの力があると思います。肩肘張らず、素直に読める詩集ですが、言葉は鋭いと思いました。



詩誌『青衣』120号
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2005.4.20
東京都練馬区
青衣社・比留間一成氏 発行
非売品
 

    <表紙>………………伊勢山 峻
    「青衣」五十年 ………伊勢山 峻  2
    すゝきと毯……………上平紗恵子  7
    穂波を渉る……………上平紗恵子 10
    そのまま そのまま…表  孝子 12
    忍ぶ灯火………………表  孝子 14
    銀の鈴…………………表  孝子 16
    竹の秋…………………河合智恵子 18
    傷ついた鳥……………比留間一成 21
    女神湖…………………布川  鴇 24
    エッセイ
    「青衣」の五十年 ……伊勢山 峻 26
    「青衣」の中で ………上平紗恵子 26
    「青衣と私」 …………河合智恵子 27
    遥かなる思い…………表  孝子 28
    私と「青衣」…………布川  鴇 28
    かまぼこ枚……………西塚 保遠 30
    「青衣」と私 …………西塚 幸子 30
    私と詩人
     高橋渡との出会い…中山 梶子 31
    西垣脩さんのこと……比留間一成 33
    感泣亭例会について…………………34
    <あとがき>…………………………37


 50周年記念号です。誌名は昔から知っていましたが、初めていただきました。誌名はせいい≠ナはなくひょうえ≠ニ読みます。由来は伊勢山峻氏のエッセイ <「青衣」の五十年> に次のように書かれていました。

    創刊は一九五五(昭和三土年一月二十日である。私の記憶では、この日
   の少し前にできあがったように思える。
    創刊の辞のようなものは、百号で述べられているから省略するが、誌名の
   
「青衣(ひょうえ)」は二月堂修二会の青衣の女人の故事にもとづいている。発行所青衣
   社。発行人糸屋鎌吉、編集人西垣脩、同人秋田大三郎、伊勢山峻、上平紗恵
   子、高橋渡、比留間一成、の七名。後に江良亜来子、河合智恵子、芝高淳、
   西垣直子、表孝子が参加。この間片村至雄、三井葉子、山下千江も同人とし
   て参加。このうち糸屋、西垣脩、秋田、高橋、芝高、片村の六人が故人となった。

 50年前と言ったら、私はまだ5歳。そんな時代から営々と活動の積み重ねがあることに敬意を表します。故・高橋渡さんは元日本詩人クラブ会長。私が初めて理事になったときの会長でした。現職の会長として亡くなっています。
 詩作品を紹介しましょう。


    銀の鈴    表 孝子

   ひと差し指を かたく握りしめる
   生後四ケ月の曽孫 わたしを
   瞳の中に入れ
   じっと 視つめたまま そのまま
   小さな手の背を
   米つぶのような爪を
   いい子 良い子と
   さする 撫ぜる
   目なざしは はやての キラキラ
   銀の鈴

   通りすぎると 音もなく
   そぞろ満ちてくる
   この永遠

 「米つぶのような爪」、「目なざしは」「銀の鈴」という詩句に「曽孫」への愛情が感じられます。「この永遠」という最終連のフレーズには、血を繋げた安堵感が現れているように思いました。私も子を得て、少しは判るようになった気がしています。孫、曾孫が出来たらもっと違う感覚になるんでしょうね。そんなことを思った作品です。



詩誌19号
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2005.4.15
埼玉県所沢市
書肆芳芬舎・中原道夫氏 発行
700円
 

   詩作品
   須走富士・須走猿・片泊り泊………………… 忍城 春宣  2
   広場……………………………………………… 小島 禄琅  8
   時間・吸いすぎた煙草の吸い殻・じゃが芋… 北野 明治 10
   駅………………………………………………… 中原 道夫 12
   はなし…………………………………………… 江口あけみ 14
   繭………………………………………………… 青野 三男 16
   道・冬・リズム………………………………… 門林 岩雄 18
   ニート…………………………………………… 平野 秀哉 20
   祈り……………………………………………… 吉見 みち 28
   眠り姫(11)……………………………………… 斎藤 幸雄 30
   秋彼岸…………………………………………… 浅井たけの 32
   夜討ち…………………………………………… 竹下 義雄 34
   刺激……………………………………………… 肌勢とみ子 36
   樹の残像………………………………………… 香野 広一 38
   東京環状山の手線……………………………… みせ けい 40
   雷鳴……………………………………………… 浅野  浩 42
   時の浜辺………………………………………… 北村 朱美 44
   時の破片………………………………………… 小野 正和 46
   おおつごもり二〇〇四………………………… 月谷小夜子 48
   希求……………………………………………… 二瓶  徹 50
   エッセイ
   再び「詩とは何か」について………………… 中原 道夫 22
   偉大なるユーコンに寄せて…………………… 倉本侑末子 24
   「女に酔わず酒に酔え」を読んで …………… 北村 朱美 26
   新たな年に……………………………………… 香野 広一 28
   年賀状…………………………………………… 月谷小夜子 30
   フェミニスト…………………………………… 小野 正和 32
   喜怒子さん その五…………………………… 吉見 みち 34
   波光の煌き――あさみちゆきの世界………… 浅野  浩 36
   あとのまつり…………………………………… 北村 朱美 38
   災害に備える…………………………………… 二瓶  徹 40
   近況報告………………………………………… 肌勢とみ子 42
   抒情と抒事……………………………………… 斎藤 幸雄 44
   「ことば」をつむぐ営み ……………………… みせ けい 46
   旅情……………………………………………… 竹下 義雄 48
   ふるさとの海…………………………………… 浅井たけの 50
   綺の本棚(書評)……………………………… 平野 秀哉 52
   混沌とした世相が投影している(詩誌評)… 香野 広一 54
   綺の窓                        56


    須走富士    忍城春宣

   菰袋
(こもぶくろ)の縫い目のような
   ジグザグの 爪痕は
   登山道

   宝永山噴火口が
   口を閉じたままの
   須走富士は
   どこから見たって
   不恰好だ

   ふだんあまり
   写真機
(カメラ)を向けたがらないが
   夏の登山道に 明りが灯ると
   ねじ花の螺旋道に
   だれもが写真機を向けたがる

   一ど 撮ったら病み付きになる
   一ど このまちに住んだら
   須走富士は
   見飽きぬ顔になる

 「忍城春宣作品集」として3編が載せられていました。紹介した詩はそのうちの巻頭作品です。ご存知の方も多いと思いますが「須走」は静岡県小山町の一地区で、富士山の麓にあります。私にとっては馴染み深い土地です。小学校5年から高校卒業まで同じ小山町で過し、現在も実家があります。ですから「夏の登山道に 明りが灯る」風景は毎夏親しみました。たしかに「ねじ花の螺旋道に/だれもが写真機を向けたがる」気になりますね。
 最終連は、他所から移住した作者の実感でしょう。小さな街ですけど住みやすい土地のようです。刻々と変化する「須走富士」もたしかに「見飽きぬ顔」です。第1連の「菰袋の縫い目のような/ジグザグの 爪痕」というフレーズも佳いですね。静かな登山口の街を見事にうたいあげた作品だと思います。



季刊詩誌『詩と創造』51号
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2005.4.25
東京都東村山市
書肆青樹社・丸地 守氏 発行
750円
 

     巻頭言 [疑心と詩心] 辻井 喬 4
      詩篇 ドラマ 片岡文雄 6
         人格症候群(ペルソナ・シンドローム)−秋霖記 内海康也 8
         この古びてちいさな菜種油ランプで照らすべき闇の 原子 修 10
         剃毛記 嶋岡 晨 14
         なきがら 山本沖子 16
         ハンカチの木/逆光 久宗睦子 18
         月霊 尾花仙朔 20
         魂の巻尺 笹原常与 23
         一つの石になって 清水 茂 26
         引き潮と上げ潮 メイ・サートン『82歳の日記』を読みながら 中上哲夫 28
         寓話 納富教雄 30
         舌あそび 北川朱実 32
         切り通し 竹内美智代 36
         終りのない旅・出発 長尾 軫 38
         バッタに会う日 池谷敦子 42
         騙し雪 山本十四尾 50
         ひも 八木幹夫 52
         かくれんぼ 丸地 守 55

   現代詩時評 詩界全体を、その周辺域も含めて俯瞰すること 古賀博文 58
    エッセイ 屹立する精神 シェイマス・ヒーニー (訳)水崎野里子 64
         交響詩的壁画『ゲルニカ』について 丸地 守 
         Aροτησ(アロテース)―詩人であるということ 森田 薫 73
         感想的エセー「海の風景」1 岡本勝人 78
     詩集評 詩界曼荼羅を夢想する――抒情回復の場を求めて 溝口 章 80

    海外の詩 『最後のゼウクシスの葡萄』 イヴ・ボヌフォワ 清水茂訳 84
         詩集『カラス』より テッド・ヒューズ 野仲美弥子訳 92
         サールナートの思い出 キャスリン・レイン 佐藤健治訳 95
         『エミリイ・ディキンスン詩集』より(八) 岡隆夫訳 98
         詩集『民族のための詩』(一九六人)より ペドロ・シモセ 細野豊訳 102
         詩集『日常生活の興奮』(第二章)より ドニーズ・ジャレ 鈴木孝訳 108
         鯨のために/絶壁に関するいくつかの忠告他 チョン・ホスン(鄭浩承)韓成禮訳 119

    推薦作品 「詩と創造」2005春季号推薦優秀作品
         詩 三篇 坂東里美 122
         ライチの歯触り 藤井優子 126
         韓国新進詩人 推薦優秀作品
         けやき/無花果の実に他 イ・ジンシム(李真心) 韓成禮訳 129

   研究会作品 遺棄 葛原りょう/モグラ追いの夕暮れ 清水弘子/鳥声 高橋玖未子 134
         二倍の自分で 一潟千里/風物X 冬の痛覚 岡山晴彦/ビーズ 四宮弘子
         アルバム 石田由美子/うたた寝 豊福みどり/ピエタ 弘津亨/風 金屋敷文代
         窓 寒川靖子/心影 竹田朔歩
         選・評 今辻和典・山本十四尾

 書肆青樹社の本 井上馨治詩集『炎天の記憶』/喜多美子詩集『風は語る』 148
      書評 岩井礼子詩集『果樹園の夕暮れ』/岡隆夫詩集『ぶどう園崩落』/奥重機詩集『囁く鯨』
         いしいさちこ詩集『山』/評文集『韓国のユリシーズ金光林<キム・クヮンリム>への詩人論・作品論』
         評 こたきこなみ
 全国同人詩誌評 評 山本十四尾 152


    剃毛記    嶋岡 晨

   懐かしい剃刀の音 手術の前の
   「テイモウ しましょ」
   遊び仲間がさそうように 呼びかけた
   搗きたての餅みたいだった 婦長さん

   日日のいのちの
   変りはてた原料の 出口
   その周りをていねいに剃ってくれた 人よ
   いま老いて白髪を染め 楽しく
   テイモウしていますか B病棟で
   鬼女どもの 萎びた生産口の 周りまで

   おお 棺のふたをする前
   すべての沈黙の入口
   冷たい饒舌器の周りを きれいに
   剃ってくれるのは だれ(これも一種のテイモウだ)
   乳のしたたる葬儀屋の女房か
   かわいい獄門の天使か

   どこもかもつるつるにし送り出してくれ
   穢土のかなた 手術室のかなたへ
   ストレッチャーで運ぶように

   南無あみだぶつ 南無みょうほうれんげきょう
   南無イエスさまマリアさま
   にんげんよ 剃刀よ

   最後の手術だ
   世界ぜんたいの 出口即入口の 周りを
   さあ 青あおと剃ってください。

 人間の部位の喩がおもしろい作品だと思いました。「日日のいのちの/変りはてた原料の 出口」「萎びた生産口」「すべての沈黙の入口/冷たい饒舌器」などは即物的なようで、そうでもないと感じられます。作品全体を見ると、根底のところで人間に対する優しさがあると思うからでしょう。
 最終連はスケールも大きいけど、辛辣な見方だとも思います。「さあ 青あおと剃ってください」と、言葉は優しいのですが、相手は「世界ぜんたい」ですから、作者の寄って立つ位置が少しは判った気でいます。おもしろい作品です。




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