きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
桜(春めき) | ||||
2005.3.25 | ||||
神奈川県南足柄市・春木径にて | ||||
2005.4.29(金)
神奈川県秦野市の紙芝居カフェ「アリキアの街」が移転することになりました。今までは小田急線東海大学前駅から徒歩10分の処にありましたが、徒歩1分と近くなりました。5月5日から営業再開ですけど、今日はプレオープン・パーテイーがあるから来いと誘われて、行ってきました。駅に近くなって、店も広がって、なかなか好い雰囲気でした。
スタッフも増強されて、写真はスタッフの紹介場面です。今までが3人だと思いますが、今度は6人になりました。それ以外にもサポータがいますから、それだけで店はいっぱい(^^;
50人ほど集まったでしょうか、秦野の地酒「ささらつづみ」も供されて、賑やかなオープンでした。私は今年初めて行ったことになって、ちょっと反省。暇を見つけては行きたいものです。 HPは、 http://www16.ocn.ne.jp/~arichire/ お近くの人はぜひ訪れてみてください。 |
○個人誌『水の呪文』40号 | ||||
2005.4.15 | ||||
群馬県北群馬郡榛東村 | ||||
富沢 智氏 発行 | ||||
400円 | ||||
詩作品
沼にて 富沢 智 2
のんのん 富沢 智 4
もうひとつの街から 富沢 智 6
憑き物 富沢 智 9
あとがき「独酒」 12
憑き物
そんなことがあるわけはないが
その男が目の前に座ったとぎから
だんだん
おれは腹の具合が悪くなってきて
早く帰ってくれと
真剣に願ったものだ
何か連れてきやがったな
妖気漂う男の頭文字はM
おれが初めて出会った生き霊も
そうだったな
客商売だけど
調子の悪い日もある
たまたまそれが今日だっただけで
こいつのせいなんかじゃない
そう思おうとした
粘着質の
彼の後ろの気味の悪い何かが
はらわたに話しかけてくるようで
反吐吐く前触れの苦い水が
顎のどこかから湧いてきた
ああそのとき
常連の奥様が二人
妖しい気配を断ち切るように
来てくれたのだった
大急ぎでおれはトイレに逃げ込んだ
だが
吐こうとしても下そうとしても
すっかり取り憑かれたか
その場の時間内では回復しそうになかった
おれは
青ざめた顔で厨房に戻るしかなかった
どうしたのマスター
かくなるうえはやむなし
わが常連のいつもの時間にすがるのみ
今おれはヘンなんだよ
身もこころもちょっとヘン
もとより
その男のせいではなかったはず
どうその場が収斂したのであったか
ともかくその後
幸いなことに
生き霊様はおいでにならない
「M」は村山≠ゥもしれません(^^;;; ま、冗談ですけど、「妖気漂う男」というのはいるんでしょうね。私には体験がありません、、、って、「妖気漂う」自分にはわからない?(^^;
作者の敏感さを感じます。詩人には霊気を感じるある種の能力があるとされていますが、確かに作者にはそんな力がありそうです。ご本人からこれは作り物だと言われそうですが、ヘンに納得してしまう作品なんです。今は「幸いなことに/生き霊様はおいでにならない」のはご同慶の至りです。でも、こんな作品もおもしろいなぁ。
○佐藤勝太氏詩集『掌の記憶』 | ||||
2005.4.23 | ||||
大阪府箕面市 | ||||
詩画工房刊 | ||||
2000円+税 | ||||
T
性のめざめ 1O
男のしるし 12
愛の光 14
母 子 16
ドリョクすれば 18
幼い友人 20
小さな掌 22
一人っ子 24
夜 伽 26
村祭り 28
少年の倦怠 30
軽薄短小 32
U
自由青年 36
青年の朝 39
あいさつする青年 41
散 歩 43
母の笑み 45
夫 婦 47
掌の記憶 49
父の残した荒れ地 51
V
少年の掌 56
仏の微笑み 58
八月十五日 60
桜の記憶 62
掌のない屍 66
手 袋 68
淡墨桜 70
同行三人 73
東京湾 75
神の棲む村 78
草の臭い 80
ブラジル点景 82
握 手 84
W
失 投 88
古い掌 90
金の卵 93
こだま 95
赤いジャガーのあった家 98
峠の家 1Ol
再 会 104
帰 郷 106
恋ごころ 109
初恋の胸 111
手 相 113
待 つ 115
老いは痒い 117
老残夢 120
戯れ言 122
男の残滓 125
歩 く 127
夢 130
夕映え 132
アルバムの顔 135
追悼譜 137
危ない 140
交差点の花束 142
きょうの始まり 145
あとがき 148
手相
大阪南の戎橋のたもとで
あんたはん 肉親に縁薄うおますなあ
いまは焦らんこっちゃ
大器晩成型のおひとや
明かりの見えない道を歩いていて
酔狂にもローソクの火影に
掌を突き出して
一度だけ試した
大道易者の前
忘れたと思っていたのに
三十数年たって
あれもこれも大方は当たっていたが
良いことは当たらなかった
はてさて 晩年だというのに
もう 先は短いというのに
晩成は何時のこと
皺ふかい掌を眺めている
失礼ながら、自虐の中にも己をいとおしむ姿が見えて、思わず微笑んでしまいました。私は手相なんて見てもらったことはありませんが、意外と「あれもこれも大方は当た」るもののようです。おそらく確率論だろうと思います。それにしても関西弁って、好いですね。「いまは焦らんこっちゃ/大器晩成型のおひとや」なんて柔らかく言われると信じてしまいたくなります。
目次でもお判りの通り、150頁57編の大冊です。しかし素直に読める作品ばかりで、楽しみました。「ドリョクすれば」「失投」「老いは痒い」なども面白い視点で魅了されました。「もう 先は短いというのに」などとおっしゃらず、ますます面白い作品を拝見させてください。
○長谷川昭子氏詩集『呼ばれて』 | ||||
2005.5.1 | ||||
東京都新宿区 | ||||
土曜美術社出版販売刊 | ||||
2000円+税 | ||||
T
呼ばれて 8
雀の子 12
白い蝶の人よ 16
青梅 20
風返し峠 24
たけのこの頃 28
五月 32
U
狐の婚礼 36
蝉の声 40
素足の少年 44
蝉に 48
鬼百合 52
風の盆 56
V
消えた町 60
月について 64
ホテル・ゆうすげ 68
どんぐり山 72
祭り日和 76
鳥が啼いたら 80
虫の声 84
竹林 88
W
あかがね街道 92
蟇の安さん 96
ある在日の記 100
別れ 104
富士 108
如月 112
問う 116
あとがき 120
呼ばれて
無人の駅で降り
流れの浅い川辺を辿る
畑の野菜は地面にへばりつき
風を避けていた
春にはまだ早い
淡い褐色の雑木林
落葉がかすかな音をたて
足もとにやわらかく沈む
枝先の新芽も身をひそめ
人影も鳥影もない
誰かに呼ばれて
わたしは来た
ひたすら歩く
指示された道のように
小さな祠があった
かつて この石段に膝まずき
手を合わせた人たち
旅の無事を祈り 痛む足をなだめ
峠を越えてきた者
行かねばならぬ者
見知らぬ同志がいっとき
言葉を交わし
別れた
道しるべに西という文字が読める
はるかにつづく道のりの片すみに
朽ちながら今も在り
刻まれているのは
風の言葉
呼ぶ者は
そちらからであったか
著者の第一詩集です。ご出版おめでとうございます。
ここでは巻頭作品でもありタイトルポエムでもある「呼ばれて」を紹介してみました。静かな透明感のある作品だと思います。最終連の「呼ぶ者は/そちらからであったか」というフレーズが佳く効いています。長い歴史の中に置かれた人間の位置までも感じとることができます。第1連の「畑の野菜は地面にへばりつき/風を避けていた」という具象も効果的と云えましょう。
「白い蝶の人よ」「蟇の安さん」「問う」なども秀作です。今後のご活躍を祈念しております。
(4月の部屋へ戻る)