きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2005.5.7 | ||||
「榛名まほろば」にて | ||||
2005.5.7(土)
群馬県榛東村の現代詩資料館『榛名まほろば』で開かれた
<第15回まほろばポエトリーステージ>
佐々木幹郎・講演会「悲歌が生まれるまで」に行ってきました。悲歌≠ニいうのですから、実はあまり期待していなかったんです。私のジャンルじゃない(^^; それよりも久しぶりで店主(スナックも併設しています)の富沢智さんに会いたかったんです。
前半の悲歌≠ノ関する講演は、やっぱり面白くなかったですね。でも、後半から酒の話になって、「酔いどれ詩」というジャンルを開拓したい、と言い出した頃から面白くなりました。私の好みの分野であるということですけどね(^^; でも、ご本人もノッてきたみたいでしたよ。やはり、芸大のセンセイだな。
ちょっとハレーションを起こしていて、すみません。ストロボが強すぎた。左が富沢さん、右が佐々木講師。講演会が終って、購入者の本にサインをして、ホッとしたところを撮らせてもらいました。もちろんHP掲載の了解もとってあります。 このあと懇親会になったんですが、佐々木さんのお話は講演より良かった、なんて言ったら怒られるかな? ザックバランなお人柄で、夜が更けるのも忘れて話をして、呑み続けました。そうそう、ちなみにお酒は新潟の「菊水」。これも旨かったけど、肴のカタクリの葉がGood! おひたしじゃなくて、煮物? よく判りませんが、ともかく好かったです。 久しぶりの「榛名まほろば」、堪能させていただきました。富沢さん、ありがと! |
○詩誌『AUBE』46号 | ||||
2005.4.20 | ||||
東京都武蔵野市 | ||||
鈴木ユリイカ氏 発行 | ||||
600円 | ||||
〈詩〉
編む人 ……………………………………………………… 房内はるみ … 2
君が袖振る ………………………………………………… 大石ともみ … 4
ぼうけん …………………………………………………… 吉本 洋子 … 6
亡き人と同化(伴侶を亡くした人)……………………… 小臣 富子 … 8
秋のジャズは即興のデュオで・・・・−三宅榛名に−… 中島 登 … 10
背 …………………………………………………………… 志村喜代子 … 12
水温 ………………………………………………………… 滝 和子 … 14
ノートの山 ………………………………………………… 月村 香 … 16
ある肖像 …………………………………………………… 佐野 光子 … 18
再会 ………………………………………………………… 寒川 靖子 … 20
山は七月 …………………………………………………… 松越 文雄 … 22
冬の夢 ……………………………………………………… 原田 悠り … 24
クスコの夜に ……………………………………………… 原 利代子 … 26
むこうこちら ……………………………………………… 鈴木ユリイカ… 30
〈童話〉
やせっぽちヨアン ………………………………………… 遠藤めぐみ … 32
〈面白詩(48)〉境界を生きる ……………………………… 鈴木ユリイカ… 40
「あらし」井坂洋子 「夏時刻」水野るり子
〈AUBE面白詩の会 報告〉……………………………… 房内はるみ … 46
〈AUBE面白詩の会会員住所〉………………………………………………… 48
〈お知らせ〉………………………………………………………………………… 50
〈あとがき〉
編む人 房内はるみ
暗い家々のあいだから
蝋のように溶けだした道が 松林のなかへ流れていく
林のまん中には 青く浮かびあがる月の広場があって
編む人がいる
きょうも後姿
丸くなった背は すこし母に似ている
天上には
悲しみや喜びや苦しみを巻き込んだ糸玉があって
風が吹くと糸の端が 星の光のようにおりてくるのだ
編む人は それらを巧みに手繰りよせて
二つの棒針で 編んでいく
ウラ オモテ ウラ オモテ
編んでいる時は 何も考えなくていられるからいいわ
父のいない長い夕暮れのなかで 母はそっとつぶやく
編む人は 編むごとに
思い出を透かして静められていくのだろう るり
ひろい空 深い碧 ざわざわざわ 風の部屋 瑠璃色の庭
サフラン色の道 カーテンの内がわの灯り シュンシュン
と春の朝の沸騰するやかんの音 やわらかな会話 海の匂
いのする雨 ねむい午後 それから、それから 誰かを待っ
ている冬の日の夕暮れ 光の中をさ迷う糸
悲しみの糸と 喜びの糸と
とりもどせない時間の糸と 未来の糸とを
編む人の まっ白い時の野で編みあげたら
どんなアラン模様ができるのかしら
ウラ オモテ ウラ オモテ
歌うようにつぶやきながら 長い時間が過ぎていく
やがて 上絃の月が西へ沈むと
編む人は 透きとおるようにして消えていく
闇に残されたセーターは 沈丁花の香り
イメージ豊かな作品だと思います。「天上には」「糸玉があって」「風が吹くと糸の端が 星の光のようにおりてくる」というイメージには脱帽です。こんなイメージの作品を今まで見たことがありません。「ウラ オモテ ウラ オモテ」というのは編み物なら当然なんですが、これも「悲しみの糸と 喜びの糸」を上手く表現していると思います。「シュンシュンと春の朝の沸騰するやかんの音」というのも具体性があって佳いですね。「闇に残されたセーターは 沈丁花の香り」という最終連のフレーズは想像と具体の見事な組合せと云えましょう。「母」という「編む人」を軸に、空想の部分と具体の部分がうまくマッチした秀作だと思います。
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